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5章

書庫

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トリスタン君に書庫まで案内して貰って別れる。

書庫に入ると見渡す限りの本!
中へ進むと部屋の真ん中には本を読むためのテーブルとデスクライトの魔道具が置いてあった。
テーブルの周りは本棚。
壁一面にも本。
5卓のテーブルと椅子以外は全部本。

「控えめに言っても最高だね!」
誰もいない事をいい事に普通の音量で話す。

『主様は本当に本が好きね』

「うん。面白いじゃん!知らない事が分かるってワクワクしない?」

『ふふっ。主様が楽しそうだからいいわ』

「みんなはどうする?コテージ行ってる?」

『一緒にいるわ』

「いいの?」

『当たり前じゃない!ワタシ達も本を読むわ』

「ありがとう!自由にしてていいからね?さて面白い本はあるかなぁ?」

サーチを使って珍しい本を探してみる。

サーチで光った本を手に取る。
“薬草大辞典”
パパ達からもらった本と同じだった。
他にも光った本を見ていくが、パパ達からもらった本と同じか劣化版。

(んー。サーチの内容を変えるか。読んだ事のない面白い本にしよう!)

サーチをかけ直すと一気に光が減った。

(面白い本なんてアバウトでも検索出来るのね)

光っている本を取るために壁の本棚に付いているハシゴを登る。

(ファンタジーの映画みたい)

光っている本を取り題名を見ると“エルフの森”。
面白いかもしれないと本を持って部屋の真ん中のテーブルへ。


エルフの森は通称迷いの森。
招かるざる者には幻惑をかけ、エルフの里に近付かせない。
妖精や精霊が多く住み、イタズラを仕掛けられる事もある。
イタズラは様々で靴紐が結ばれる等の些細なものから、転移させられたりする大きなイタズラまである。
イタズラをされるかどうかは運次第である。
ただイタズラならばまだマシだ。

エルフの森には会ってはいけないモノがいる。
それがレッドキャプスである。
やつらは獲物を求めて常に森の中を彷徨っている。

獲物を見つけると愛用の斧で問答無用に襲いかかってくるのだ。
そして気が済むまで痛め付けると次の獲物を探しに行く。
亡骸なきがらの一部を食べたりするとも言われているが会えば殺されるため詳細は分からない。
レッドキャプスに殺されたとされる亡骸なきがらが稀に見つかっている。


「へぇー。昔話的なやつかな?なんかの教訓とか?まだまだ続きはあるけどもういいかな。次のを探そう」

“エルフの森”を元の位置に戻してサーチをかけ直す。

次の本は“世界グルメ日誌”。
もの凄く分厚い本。
15センチ以上の厚さで重い。
まさか本で身体強化を使うハメになるとは。
何が載っているのかとうぴうぴしながらテーブルへ。

最初の方は色んな国や街での塩スープが載っていた。
もっといい物が載っていないのかとページをめくり続ける。

「ん!?これは…」

喉が焼けるほどの酒。
透明な液体で少しとろみがある。
火酒かしゅと呼ばれている。

ウォッカ?テキーラ?
場所は…東の果ての島!?
めちゃくちゃ遠いじゃんか!
そのうち行きたいな…
(美味しいお酒を飲みながらツマミを食べる…)
おぉう。口の中にヨダレが。
これはぜひ覚えておこう。


次に目に付いたのは…

干からびた黒い果実。
この実はつるに出来るが出来た時から干からびている。
とても酸っぱい。
食べるとじっとりと汗をかくほど酸っぱく、口の中は唾液が止まらなくなる。
この地では気付けの実と呼ばれていた。

これ梅干しじゃない!?
これの場所は…
おぉ!この大陸の北の国!
ぜひ行こう!


どんどんと読み進める。
白えびやカボチャ、トウモロコシにダチョウ、ワニと色々載っている。
グレンが狩ってきたホットホークスや、今では普通に売っているトマトもあった。

ふむふむと見続けているとクラオルから夜ご飯のお呼び出しがかかった。

「もうそんな時間?まだ2冊目の途中なのに」

『んもう主様ったら。さ、部屋に戻ってちゃんと食べないと』

「はーい」

みんなで部屋に戻る。違う曲がり角を曲がろうとして怒られた。

「今日は何にしようかな?」
コテージのキッチンで考える。

お昼がオニギリだったから、中華か洋食系が良い。

パスタが食べたい。
が、今は無いのでうどんカルボナーラにしよう!
薄めのコンソメスープも作る。

ダイニングに集まったみんなに渡していく。

〈肉じゃないのか…〉

『主様これうどんよね?卵が乗ってるわ』

「そうだよー。これはうどんカルボナーラ。本当はパスタで作るんだけど、パスタがないからうどん。生クリームがないからさっぱりめの味になってるよ。
上の卵を割って麺に絡めて食べてね」

『また新しい料理ね!』

みんなでいただきますをして食べ始める。
ポラルは少し食べにくそうだと思ってたら1本ずつ食べている。
頭がいい子!
好みの味なのかお尻をフリフリ。
辛いものだけが好きなわけじゃないみたい。

〈ん!?美味いな!〉

ベーコンが入っているのに肉じゃないと不満そう言っていたけど、パクパク食べ進めているグレンに笑う。

うん。コショウが効いていて美味しい。
久しぶりに食べると美味しいわー!
生クリームが手に入ったらぜひまた作りたい。

ご馳走様をしたらお風呂でゆっくり。
グレンも上がったらみんなでお城の部屋に戻る。

みんなが期待の眼差しで見てくるのでリバーシを出してあげる。
順番をあらかじめ決めていたらしく、すんなりスタートした。


みんなを見守りながら考えるのはさっき読んでた本。
パーティーは3日後。
明日はグレンの服をチェックしに服屋さんに行かなきゃいけない。
あと2日で読み終わるだろうか?
午前中も読めたら読み終わるかもしれないけど、トリスタン君を休ませてあげたい。
私のせいで休めてはいないかもしれないけど、雑用でこき使われるよりはマシだと思いたい。

明日のお昼ご飯はどうしようか?
明日の朝作ろう。


寝る時間になったので盛り上がりまくりのみんなに念話で教えてリバーシを回収する。
クラオルとグレウスの興奮が落ち着く様にゆっくりめに撫で続けて私も眠りに落ちる。


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