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5章

王族side

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セナ達が部屋から退出すると執務室は静寂に包まれた。

「父上。放心する前にあの愚兄と義母を捕らえなくて良いのですか?」

「そうだ!近衛騎士を呼べ!」

ドアの前に控えていた近衛兵が魔道具を使い招集をかける。

集まった近衛兵達に宰相が説明をして国王が命令を下す。
「あの2人を隔離塔へ連れて行け!逃げられない様にしろ!」

「「「「「「ハッ!」」」」」」
近衛兵達は敬礼した後走り去って行く。




「はぁ…セナ殿は痛い所を突いてくるな」
ソファに座り国王がため息をつきながら言う。

「最もな意見だったと思いますよ?」
宰相が紅茶を準備しながら答える。

「しかし惜しい人材ですね。あの鑑定が本当であればとても有利に事が進められますし、ムレナバイパーサーペントを倒すちからがあれば国の安全が保証出来る」
王太子がセナが座っていたソファに座り発言する。

「そうですね。それにあの交渉力は素晴らしいですしね。我が国に欲しい人材です」
宰相が紅茶をテーブルの上に置き言う。

「確かにブランから聞いてはいたが、あの歳であれだけ頭が良いとは思わなかなったな。だが、カリダの街の民を敵に回す訳にはいかない。あの戦神もいるしな」

「ふふっ。それだけじゃないでしょう?父上はブランがお好きだ」
王太子が国王をからかう様に言う。

「そうだな…あいつの忘れ形見だ。色々苦労させてしまったがな。まさか継承権を放棄したいと思っているとは…」

「そこはある程度予想していましたけどね。ブランが騎士団に入り王都から出て行き、距離を取ろうとした辺りから。まさか今回あんなに嫌がっていた王家のちからを使った事の方が予想外です」
王太子が紅茶を飲んでから言う。

「そうだな…王家のちからもそうだが、ブランがあんな風に笑う所を見たのはあいつが生きていた幼い頃以来だ。物心付いた時には既に表情が変わらない子供になっていた。微笑み、声をあげて笑うなどもう見られないかと思っていた。セナ殿のおかげなんだろうな…」
国王が寂しそうに言う。

「そうですね。久しぶりに見ました。前はもっと人間に興味が無さそうでしたもんね。父上が原因ですがね。ブランと一緒にいた第2騎士団の副隊長と暗部の者も雰囲気が変わりましたね。ブランはセナ殿を妻にしたいと思っているんですかね?」

「いえ。報告ではセナ様のご両親は既に亡くなられていて違う人物に育てられた様です。その方に魔法を教わったらしいのですが、料理はいつもやっていたと仰っていたらしいのでおそらくですが、セナ様のあの頭の良さは相当苦労した事の結果だと思います。
色々と考え無ければ生きて来れなかったのでしょう。
ですので配偶者と言うよりは自分の子供として安全に暮らさせたいのではないでしょうか?
臣籍降下しんせきこうかをしてもブラン様は公爵となります。
何よりセナ様はあの可憐さがありますので貴族には目を付けられやすいでしょうが、守りやすい身分です」
宰相が報告を混ぜながら予想する。

「そうか…あの歳で料理も出来るのか…今まで狙われていたのなら貴族嫌いも納得だな…」

「そうですね。セナ殿がちょうど良い妙齢であれば妻にしたいくらい可愛らしい子でしたね」

「はぁ…古代龍エンシェントドラゴンにも嫌われた様だし、完全に失敗だったな…」

「セナ様の強さを読み間違えましたね」
宰相が冷静に発言する。

「あぁ…あの愚息…息子じゃないか。あの馬鹿に困らされている所に颯爽と登場していい印象を持たせたかったんだが、最初からバレていたとはな…ブランが言った様に完敗だ」

「そうですね。に会わせた事がまず失敗でしたね。その後父上がふざけたおかげで更に失敗ですね。いつセナ殿が爆発するかとヒヤヒヤしていましたよ」

「うっ…もうこれ以上の失態は許されない。古代龍エンシェントドラゴンにかかれば我が国はすぐに終わる」

「嫌われたのは父上のせいですけどね。セナ殿がマザーデススパイダーとムレナバイパーサーペントを1人で倒し、古代龍エンシェントドラゴンを従魔にしたという事実をもっと重く受け止めるべきですね。
むしろセナ殿が頭が良いから助かったようなものでしょう。
父上は死に急いでいる様にしか思えませんでしたね」

「うぅ…お前は相変わらず容赦がないな…」

「ブランのように思っていても口にしないよりはいいと思いますよ?ブランはずっと聞きたかったはずですからね。母親の死について」

「…そうだな…お前も大概ブランが好きだな」

「えぇ。唯一の可愛い弟ですからね。他の兄弟はあなたが乳母や家庭教師に丸投げしてまともに教育しなかったせいでひどいですからね。世界中の人に言ってやりたいですね。賢王なんかではないと」

「うぅ…」

「まぁセナ殿は賢王等とは思っていないと思いますのでご安心を」

「っ安心出来るか!」

「とりあえずセナ殿の信用を取り戻…取り戻すも何も最初からありませんでしたね。信用を得られる様にした方が良いと思いますよ?」

「くっ…分かっている。とりあえずダンジョンの許可は貰わなくては…」

「あのちからが全てと言う隣国にどうやって許可を貰うのですか?」

「それは…」

「まさかちからを見せろなんて言いませんよね?」

「ダメか?」

「はぁ…こういう時は本当に使えなくなりますね。いいですか?パーティーで強さを見せたら目立つでしょう?セナ殿は目立ちたくないと言っていました。ちゃんと覚えていますか?目立ちたくないと言っているのに目立つ事をやりたがる訳ないでしょう!
勝手に約束したんですから父上の交渉で許可を得るんですよ。貴族相手なら無駄に回るその頭と口を使って」

「お前実の父に向かって辛辣過ぎないか?そこまで耄碌もうろくしていないぞ」

「事実しか言ってませんよ?報告にあったのにセナ殿の嫌がる事をやり続ける父上に言われても説得力がありませんね。セナ殿にも何回も言われていたじゃないですか。“人の話聞いてます?”って。
約束を守れなければ国が滅ぶ覚悟でいるべきでしょう」

「う…」

「あとはご自身でお考え下さい。こちらはブランの調査の手伝いに向かいます。可愛い弟が微笑んでくれるかもしれないなぁー」

「くっ!」

「ご自身で言った事ならそれくらい守れますよね?国王様?」
王太子がセナが言った言葉を真似しながら部屋から出て行く。


「まぁ、事実ですね」
宰相が国王に追い討ちをかける。

「お前まで…」

「仕方ありません。一緒に考えて差し上げますから。早く寵姫の件も調べたいでしょうし」

「おぉ!助かる!」

それから国王と宰相の隣国の王にダンジョンの許可を貰うための作戦会議が始まった。




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