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5章

萌えと付き人

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充分癒された所でお城の部屋をちゃんと見ていない事に気が付きお城の部屋に戻る。

リビングダイニングとベッドルーム2つ、洗面所とトイレがあった。
シャワーが無いだけでほとんど宿と同じだった。


「グレンの服のデザイン考えようと思うんだけど、みんなはどうする?コテージに行ってる?」

『ワタシとグレウスは一緒にいるわ』
われもここにいる〉
《私たちは姿を隠してお城探検してくるわ!》
〔マワリ…グッテ…マス〕

(ポラルは“周り探って来ます”かな?)

「3人とも気を付けてね?」
3人が移動するとの事なので、3人は自由に出入り出来る様に結界に張り替える。

《はーい!》
プルトンは元気よく返事をして、エルミスは頷き、2人してどこかへ行った。
ポラルはスチャッと手を上げてから天井の板を外して天井裏へ。

(え!?いつの間にそんな所見つけてたの!?マジなアサシンなの!?)

「そういえばポラル出たままだったけど、ブラン団長に何も言われなかったね」

『団長は多分気付いてないわ』

「そうなの?まぁ、気付かれたら従魔ですって言えばいいよね。さてグレンのデザイン考えよ!みんなは部屋で自由にしてていいからね」

ベッドルームの机に向かい、紙とペンを出してデザインを考える。

日本人がよく着ているノーマルなスーツから洋画や海外ドラマで見た俳優さんが着ていた自分好みのスーツと思い付くままに描いていく。
描けば描くほど警察官の制服、海軍の制服、海外の軍服、アニメやマンガで見た服とどんどんスーツから外れていく。
最早ただ着て欲しいコスプレの図案になってしまった。

「絵心皆無だったはずなんだけどな…絵を描くスキルなんかあったっけ?」

最初の方は酷いのに段々とマシになっている。
まだ伝わりそうに描けているのがコスプレのデザイン。


『主様ー!そろそろご飯よ!』
デザイン画を見ながら首を傾げているとクラオルに呼ばれた。

「やばっ!夜ご飯作ってない…前に作っておいたやつでいいかな?」
豚丼も残ってるはずだし、煮込みハンバーグも残っている。

〈前に作ったやつとはブタドンか?〉
リビングに移動するとグレンが目をキラキラさせながら聞いてくる。

「豚丼もあるし、煮込みハンバーグもあるよ。エルミス達は戻って来てないね」

『さっき呼んだからすぐに戻って来ると思うわ』

《ただいまー!》
《戻った》

ちょうど話をしていたら精霊達が戻って来た。
「おかえり」

〔モド…マシ…〕
出て行った天井とは違う場所の板が開いてポラルも戻って来る。
器用に外した板を戻している。

「おかえり」

(そこも開くの!?もしかして天井全部板が外せるの!?)

われは食べた事のないやつを食べてみたい〉
グレンが話を戻す。

「じゃあ煮込みハンバーグだね」

みんなが席に着いたらビーフシチューで煮込んだ方の煮込みハンバーグを出していく。
ちゃんとご飯も一緒に。

『あら?これ前に食べたやつと匂いが違うわ』

「さすがクラオル!前に食べたやつのお肉がハンバーグバージョンだよ」

〈肉が違うのか?〉

「そう。そんな感じ」

みんなでいただきますをして食べる。

んん!前回食べたビーフシチューよりお肉の出汁が出ててコクがある。
上手くアレンジ出来たみたい。

みんなも気に入ってくれたらしくパクパクと食べている。

〈美味い!〉
1番に食べ終わったグレンが言う。

「気に入ってもらえて良かったよ。アレンジは成功だね」


みんなが食べ終わったら片付けをしてデザイン画を見てもらう。

「この中でパーティに着ても大丈夫そうなのってある?」

『どれもグレンには似合いそうね。これ全部主様が描いたの?』

「うん。描いてるうちに楽しくなってきちゃって…今の貴族の流行りとか分からないし、パーティのドレスコードの細かいやつとかも分からないんだよね」

『この国にわざわざ合わせなくてもいいんじゃない?呼ばれた側だもの』

「そっか!それもそうだね!グレンはどれがいい?」

われはセナが描いたやつなら何でもいいが…コレ以外がいい〉

グレンが嫌がったのは日本で良く着られていたスーツ。
おそらく1番最初に描いたやつで私の絵心のなさが溢れているからだろう。

《これがいいんじゃない?》

「おぉ!それは私もぜひ着て欲しい!」

『これもいいと思うわ』

「それもいいよねー!」

プルトンとクラオルが選んだのはコスプレ軍服タイプ。
プルトンは詰襟のナポレオンコートタイプ。
クラオルのはネクタイが見えるタイプ。

わしはこれがいいと思うぞ》
エルミスが選んだのは詰襟の海軍の軍服。

みんなコスプレ軍服推し。

『これなら主様の護衛みたいだわ!』

(なるほど。そういう理由か)


「私的にはこれ全部着て欲しいくらいなんだけど、どれか1着だから悩むねぇ。グレンはこの中でどれがいい?」

《セナちゃん!団長が来るわよー。知らない人も一緒にいるわ》

「プルトンありがとう」

話を切り上げてテーブルに広げていたデザイン画を集める。

―――トントントン

「はーい」

「…ブランだ」

―――ガチャッ

グレンがドアを開けるとブラン団長が一瞬ビックリしていた。

「どーぞ」

「…邪魔する」

ブラン団長は知らない小学校高学年くらい男の子を連れて部屋に入って来た。
男の子はサービスワゴンにティーポットとティーカップを3つ乗せている。

「…先に紹介する。セナが城にいる間の付き人となったトリスタンだ」

「付き人?」

「…部屋の掃除やこういう紅茶等を用意してくれる」
(なるほど。雑用担当って事かな?)

「トリスタンです。何でもお申し付け下さい」
男の子は無表情でキッチリと頭を下げる。

黒色の髪の毛は胸くらいまであり左耳の下で一つに結ばれていて、瞳はヴァーダイトみたいな濃い緑色で、耳はハーフだったフォスターさんより長くとんがっている。
(エルフかな?)
将来が楽しみなイケメン君だけど、人形みたいに表情が変わらない子だった。
温かい雰囲気も冷たい雰囲気もオーラも何もなく、人なのは分かるけど本当に人工生命体アンドロイドみたい。


「セナです。よろしくね」

「よろしくお願い致します」
再度頭を下げるトリスタン君。


「とりあえず座ろ?」
私が言うとブラン団長はソファに座るけど、トリスタン君は紅茶の準備を始める。

「…トリスタンは魔法省のトップのひ孫だ。魔法が使えるためセナの護衛も兼ねている。年が近い方が話しやすいだろうと抜擢された」

「ふーん……そっかぁ。トリスタン君は貧乏くじ引いちゃったんだね。ごめんね?」

「いえ。セナ様をお護りする様に言われております」
またキッチリと頭を下げてから紅茶をセットしてくれるが立ったまま。

「座らないの?」

「いえ。自分は付き人 兼 護衛ですので」

「真面目だねー。もっと肩のチカラ抜いていいのに」
私が言っても座らない。

「…セナ。真面目だから気にしないでやってくれ。これがトリスタンを呼ぶベルだ」
ブラン団長にベルを渡された。

「…これを鳴らせばトリスタンが来る。来たら要件を言ってくれ」

「はーい」
ベルを受け取ってからトリスタン君がいれてくれた紅茶の毒の有無を念の為確認してから口をつける。

「んん!美味しい!トリスタン君紅茶淹れるの上手なんだね!」

「あ…ありがとうございます」
私がニコニコと言うと戸惑った様に返してくれた。
感情の起伏があるのか心配していたけど大丈夫だったみたいで安心する。

「本当に美味しいよー!そうそう。ブラン団長に聞きたい事があったんだ。パーティっていつなの?」

「…伝えてなかったな。7日後だ」

「そっか。分かったー」
(よっしゃ!グレンの服作って貰えるじゃん!)

「…どうかしたのか?」

「ふふふっ。お楽しみだよ!」

「…そうか。楽しそうだからいい。とりあえずセナ達は自由に城に出入り出来る様に警備に伝えているが、何かあったら俺を呼んでくれ。トリスタンでもいい」

「はーい。ありがとう!」

「…では俺達はそろそろ戻ろう。夜に邪魔して悪かった」

「ううん。大丈夫だよ。ありがとう。おやすみなさい」

「…おやすみ」
「おやすみなさいませ」

トリスタン君はお辞儀をして、ブラン団長は私の頭を撫でてから出て行った。


「今日は疲れたからゆっくりお風呂に入って寝よ!」

みんなに声をかけてコテージのお風呂に入り、お城の部屋に戻って眠りについた。



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