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5章

謁見【2】

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とびらから入って来たのは、口髭の生えたイケおじと、髪の毛をオールバック撫で付けている神経質そうな男性、顔がイケおじに似ている男性、そして騎士だった。
4人とも顔色が悪い。


「バレていたのか…入るタイミングが無くてな。済まない」
口髭イケおじが言う。

「申し訳ありませんが、殺気を止めて頂けませんか?」

神経質そうな人が汗を滲ませながら言うのでグレンに言って威圧を止めてもらった。

貴族はみんな膝から崩れ落ちて床に座り込み、おばさんは倒れていてボクちんはギリギリ気を失わず体裁ていさいを保っている感じだ。
汗が滝の様に流れているけど。


「ちっ、父上!いつ帰って来られたのですか?」
ボクちんが焦りながら聞く。

「昨日の夜だな。変わろう」
口髭イケおじが答えて玉座からどく様に言う。おばさんは運ばれて行った。

口髭イケおじが玉座に座り、私から見て右側にオールバックの人、左側に若い男性、その隣りに偉そうにボクちん、1歩引いて騎士がポジションに着く。

おそらく口髭イケおじが王様。
オールバックが宰相。
若い男性が王太子。
騎士が近衛騎士ってところだろう。

王太子と思われる人はブラン団長より年上そうだからお兄さんかな?


「先程までの無礼大変申し訳ない」
王様が頭を下げると入ってきた他3人も頭を下げる。

起きている貴族がザワザワと喋り出す。
ボクちんは驚愕の表情で王様を見つめている。

(頭下げられても許せないし、好きになれそうもないな。顔はイケおじだけど)


「そなたがセナ殿だな。招集に応えてくれてありがたく思う。此度こたびのカリダの街の危機を救ってくれた事に感謝して褒賞ほうしょうを与えたいと思うが何か希望はあるかね?」

「爵位以外で」

「爵位は嫌かね?」

「自由が好きなので」

「なるほど。我が王家に仕える気はないかね?」

「ありません。誰にも仕える気はありません。さっきの王様の代理人がいる城に仕えるなんて御免こうむります」

「なっ!」
「そうか…そうだな。本当に申し訳ない。ならばこの国で自由に過ごせる様に王家が後見人となろう」
ボクちんは王様が話し出した事で喋れず、こちらを睨んでいる。
睨まれた所で怖くもないし、痛くも痒くもない。

「いや。お断りします」

「後見人もか?」

「後見人になっているんだからとか恩着せがましく言われたくないので。国の移動も自由が良いですし」

「さっきから聞いていれば不敬だぞ!」
1人の貴族が大声を上げると周りの貴族とボクちんも便乗してそうだ!そうだ!と騒ぎ始める。

「静まれ!」
王様が声を張ると貴族とボクちんは黙った。

「ですが!この様な平民の小娘に何故そこまでするのですか!?」
1人の貴族が静かな中で大声で問うとボクちんは激しく頷いている。


「セナ殿が新しくスライムの核を発見してくれた。世界中で初の発見だ!それだけではない!1人で天災級のムレナバイパーサーペントを退治してくれたのだ」


「「「「「「!」」」」」」
貴族達は驚きで一瞬静まり返った後再びザワザワし始める。
ボクちんは理解出来ないらしく首を傾げている。

「そんな事…このような小娘が退治した等とは到底信じられません!」
先程の貴族が尚も食い下がり大声を上げる。


「そうだな…見せて貰えないか?」
王様が目に楽しさを滲ませながら聞いてくる。

「…陛下!」
ブラン団長が焦ったように国王を呼ぶ。

「…」
(マジックバッグも無限収納インベントリに入れちゃってるんだけど…って言うか入り口で荷物預けてるのに普通出せる訳無くない?それともスキル使えって事?)

王様の真意が分からずジーッと見つめる。
「セナさん。はい!こんな事もあろうかと返してもらったんだ」
パブロさんがショルダー型のバッグを私に渡しながらパチンとウィンクする。

「ありがとう!」
意図を理解してパブロさんにお礼を言う。


「その前に、ここの何かが壊れても誰かが怪我をしてもの責任にはならないと断言出来ますか?」
王様に確認をする。

「分かった。セナ殿達が何か壊しても怪我をさせても責任はない!」

言質げんちを取ったので、ブラン団長達の服を引っ張りとびらから廊下にでる。
王様がなんか言ってるけど放置。
自分が見たいって言ったんだから責任取ってもらいましょう。

「じゃあ、出しますねー」

声をかけてからマジックバッグに見せたショルダーバッグから出している振りをして無限収納インベントリから謁見の間にウツボの頭を出す。

「ひぃぃぃぃぃ!」
「うわぁぁぁ!」
貴族の叫び声が聞こえる。


「すごいですね。出ていて正解でしたね。ありがとうございます」 
ニッコリとフレディ副隊長が頭を撫でてくれる。


「セナ殿!…セナ殿!しまってくれ!」
小さく王様の声が聞こえたので無限収納インベントリにしまい、みんなで謁見の間に戻る。

「これで満足しました?」
先程大声を出していた貴族の前に行き聞くとコクコクと頷かれた。

ボクちんは腰を抜かしパクパクと口を開け閉めしている。
パンツの一部分の色が濃くなっている気がする。
(まさか…)


「…これで全員信じられただろう。褒賞の続きだが、我が国を守ってくれた恩人である。爵位はいらないとの事ならば王家からメダルを渡そう。これは持っていれば王家から身元保証されている事にもなり、貴族専門の店はもちろん王家専門の店も見せれば利用出来る。
爵位が無くてもこの国では王家に次ぐ身分の扱いとなる。もちろん恩着せがましくしたりはせん。恩人であるセナ殿には我が国では快適に暮らせる様に取り計らう。王家と対等な友人の様な立場だと思ってくれて構わない」
入って来た時と同じくらいの顔色の悪さで王様が話す。

ですか…」
(それはそれでなんか裏がありそうなんだよね…確認しないとね)

ウツボを見て言葉を失っていたが、王家のメダルと聞いて貴族達はザワザワし始める。

「私達を利用したり、私の大切な存在を利用したりしようとしたら怒っても良いと言う事ですかね?ちなみに、その際の命の保証は出来ません。
仮に王家からのをされてもギルドを通して依頼としてきちんと報酬が出て、なおかつ嫌だったら拒否しても構わないって事ですかね?まさか友人としてタダ働きしろなんて冒険者に言いませんよね?私はここ王都になんの思い入れもないですし。
そして私にも都合がありますし、色々な国を旅したいのでこちらへ来られない事もあります」

「ふむ……………そうだな…」
何か考え込む様に呟く。

(結構間があったぞ。こいつ何かさせようとしてたな。狸め)

「それは私の発言に対しての了承の言葉ですか?」

「…………分かった。そうしよう…」
長考してから残念そうに国王が答える。

「分かりました。私達や私の大切な存在を利用しようとしたら怒っても良い事と、私に何か頼む際はギルドからの正式な依頼として報酬が出る事、なおかつその依頼は拒否も可能。
この国では快適に暮らせる様に取り計らって貰えると。
そして有事の際も戻って来られない可能性の事も全て含めて了承いただけたと言う事ですね?」

「…そうだ。恩人であるからな。皆の者!そう心得よ!
そしてカリダの街の領主は公費虚偽申告の罪と、冒険者ギルドへの領主としての立場を利用し私的介入の罪に問われている。冒険者ギルドは全世界共通だ。これは外交問題になりかねない由々しき事態だ。
よって、カリダの街の冒険者ギルドのギルドマスターのピニグヤー、第1騎士団隊長のスヴィスニ、領主アヴァール・グリーディ辺境侯爵の一族と関係者全ての者を身分剥奪及び犯罪奴隷とする!」

王様が宣言すると貴族は更にザワザワと話始める。

「セナ殿には核の報酬とムレナバイパーサーペントの報酬を渡すのに、この後執務室に来てもらいたい。では、これにて終了とする。下がって良い」

(あの知らないオーク似の人はやっぱりギルマスだったのか…ジョバンニさん大変だったんだろうな…最後に貴族がザワザワとしてたのが気になるけど…何かあったら責任取ってもらおう。王様が言ってたしね)

王様から言われたので謁見の間を出て執務室に向かって歩く。




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