上 下
61 / 64
連載

第96話

しおりを挟む
◆巨大ロボットだぁああああ!!
◆うおおおおおおお!!!
◆おい、あんまワクワクさせんなよ
◆魔王vs勇者じゃなくて魔王vs勇者!?ww
◆ルハ、出撃するぞッ!
◆情報が完結しない……!?
◆どんな思考回路してたら城をロボットに改造しようと思いつくねんw
◆まさかそうくるとは思わなんだ
◆怪獣には巨大ロボをぶつける。古事記に俺がそう書き換えておいたのさっ!
◆↑お前だったのか……GJ

 巨大なお城のロボット、もといお城ボがヤドカリを殴り飛ばしたことにより、体力バーが目に見えて削られたのが確認できた。

「ルハすごーーい! どうやってこれやったの!?」
『とりあえずこの城の管理者を脅……じゃなくて、してお金で買収した。そのあとは一回バラバラにして、【ワイヤー術】でなんとかしたらできた』
「す、すごいじゃないの! あれ、けどワタシより悪役適性が高い気が……!?」

 お城ボはしゃがみ、お腹あたりにある城扉をパカっと開けて僕たちを迎え入れる。
 冷や汗のようなものを垂らしながらブツブツと何かを唱える彩芭さんを引っ張り、僕らはお城ボの中へと入った。

 すると、僕たちが立っている床が勝手に動き始め、どこかに連れ去られる。着いた先は、外で怒っているヤドカリが見える観戦席のような場所であった。

『二人とも到着した?』
『ひぇええん! ここどこなのよーーっ!!』
「到着したよー」
『パイロットが二人増えたし、これで技も増えた』
「技? おー、なんかいっぱいあるね!」

 プレートを確認してみると、そこには色々な技が表示される。


  △  △  △

 ◾︎超越号キングブレイヴ

 【ギガブレイクスマッシャー】
 (※二ターン後に使用可)
 【高出力ロケットパンチΣシグマ
 【超変形メタルもちりん釘バット】
 【絶対防壁メタルもちりんシールド】
 【セイントリペア】
 【セイントレイ】

  ▽  ▽  ▽


 おそらくさっきヤドカリを殴り飛ばしたのは一番上のものだろう。
 けど、一度使うと数ターン休ませないといけないらしいし、考えて使う必要がありそうだなぁ。ってかこの機体の名前カッコいい!

『ギィィィ……!!』

 ヤドカリは怒り心頭と言ったところで、体の色が赤く変色するほどの熱を放出していた。
 そして、再び城についている大砲から発射しようとし、紫色の光が漏れ始める。

「ルハ! うまくいけばカウンター出来るかもしれない! 上から三番目のやつ使おう!!」
『……! うん、わかった。【超変形メタルもちりん釘バット】!!』

 この観戦席にはこの機体を外から見ている三人称視点のモニターがついており、どんな動きをしているかを確認できた。
 キングブレイヴの手からはメタルもちりんがモコモコと現れ、釘バットの形となる。そして、そのバッドを構えて撃ち出されるのを待つ。

『ギシャアァァ!!!』

 とうとう紫色に輝く弾が放出され、一直線にこちらに向かってくる。響き渡るは機体に直撃する鈍い音……ではなく、爽快感のあるものだった。

 ――ガキイィィィンッ!!!

 弾はバッドで打ち返され、ヤドカリに直撃する。

◆ホームラーーン!!
◆↑ピッチャー返しだろがい
◆「地味な絵面になるな」とか言ったやつ息してる?w
◆巨大化バトルはテンションが上がるな~
◆なんで高速の球を打ち返せんだ……?
◆凄みがスゴイな(小並感)

 ヤドカリの攻撃は終わったのだが、移動を始めて崖の上まで逃げてしまう。
 ハサミで毛繕いのようなことを行なっており、体力がじわじわと回復し始めていた。

『ねぇ二人とも? あの崖、なんだか脆そうじゃないかしら?』
「言われてみれば確かに……グラグラしてますね」
『……あー、フィールドもうまく使えってことか。なら――【高出力ロケットパンチΣシグマ】!!』

 ――ドゴォオオオオン!!!

 キングブレイヴの左拳が発射され、崖に着弾して崩壊し始める。崖だかでなくヤドカリの体勢も崩れ、岩の下敷きとなって身動きが取れなくなっていた。

『あら? またワタシたちのターンなのね!』
『なら高火力っぽい技を……【セイントレイ】!』

 光線が発射されるのかと思われたが、その前に彩芭さんがいる観戦室が映し出される。

『え!? なんかワタシ、ハムスター用の回し車みたいなやつでチャージしろとか言われてるんだけど!?』
「走ってチャージしなきゃいけないってことなんじゃないですか?」
『なんでワタシだけこんな肉体労働させられるのよーーっ!!』
「彩芭さん頑張ってーー!!」

 そう言いつつも、回し車で全力疾走をし始める彩芭さん。
 エネルギーはみるみるチャージされてゆき、キングブレイヴがガチャガチャと音を立てながら変形する音が聞こえてくる。

◆とっとと~走れよラプソディ~♪
◆惨めに~走るよラプソディ~♪
◆やっぱり不憫枠じゃねぇか!
◆まさかの人力チャージww
◆彩芭の全力疾走を見ながら食う白米うま!
◆必死乙というやつか?
◆このコメ欄鬼畜なやつしかいねぇなw
◆所詮は視聴者全員犯罪者だから仕方ないね

 いつのまにかキングブレイヴは戦車のような形となっており、金色の光が砲口から漏れ出始めた。
 そして、いよいよ臨界点へと到達する。

『ぜぇ……ぜぇ……ルハ! フルチャージよ!!』
『うん、ナイスラプソディー。【セイントレイ】、発射っ!!』

 失明するのではないかと思うほど眩い光が放出され、無防備なヤドカリに直撃して大ダメージを与える。
 残り四分の一ぐらいといったところだろうか。

『ギ、ギギィ……ギャァァアアーーッッ!!』

 ヤドカリが叫ぶと同時に体を殻(城)に引っ込め、紫色の光を放出しながら回転し始めた。
 その光が推進力となっているらしく、回転のスピードはみるみる上ってゆく。

◆その動きは……が、ガ○ラッ!
◆クソ早ぇな
◆避けろお城ボォーー!!
◆しかも戦車モードだからまずくね?
◆機動力がゼロに等しいじゃん

 コメントの言う通り、【セイントレイ】を撃った直後で機動力がゼロだ。
 そのことを伝えようとしたのだが、それを上回るスピードだヤドカリが攻撃を仕掛けてきた。

 ――ガキンガキンガキンッ!!

 超高速回転をしながら機体に突撃してきており、キングブレイヴの耐久度がみるみる削られる。

『いやぁあああ! 回し車の次は壁に叩きつけられ――ぐぇっ!!』
「うぐ……る、ルハ! シールド展開しよ!!」
『う、うん! 【絶対防壁メタルもちりんシールド】!』

 全身からメタルもちりんがわらわらと溢れ出し、球体の形となってヤドカリの攻撃を防ぎ始めた。
 この機体は攻撃力は高い代わりに耐久力が少ないらしく、先の攻撃だけで半分以下まで削られてしまっている。

『機体の腕も取れかけてるし……仕方ない。ラプソディー、【セイントリペア】するよ』
『するよって何かしら……? えっ、なんかワタシの部屋に地下労働の時に回る棒みたいなやつが現れたんだけど!? ……も~~!!!』
「トラペトゥムかピストリヌゥムだっけ? とにかく彩芭さんフレー! フレー!」

 ヒーヒー言いながらその棒を回し始めた。
 ただ、ヤドカリの攻撃力が高すぎて修復し終わるまでに耐えてくれるかどうかが心配だ。あと一撃でも食らったら壊れてしまうだろうし。

『ミー!』
『ミィミィ!』
「メタルもちりんたちがもう限界に近いって言ってるよ!?」
『ふんぬぅぅ!! これ以上のスピードは上げられないわよぉぉ……!!』
『……いや、二人とも大丈夫。機体は半壊してるけど、右腕さえあれば……!!』

 パリーンと音を立ててシールドが破壊され、目の前にヤドカリが迫ってきている。
 キングブレイヴは人型に戻っているが、もう壊れかけだ。だが、中腰状態で右拳を強く握りしめていた。

再度使用可能時間リキャストタイムは終わってる……。これで、終わらせる……!!』
『ギシャアアアアアーーッッ!!!!』

 機体が崩壊しかけているが、そんなの御構い無しと言わんばかりに右拳が力が込められる。
 そしてとうとう、決着を決める一撃が放たれた。

『【ギガブレイクスマッシャー】!!!!』

 攻撃は高速回転するヤドカリに当たり、拳がギャリギャリと削られる音が聞こえる。しかし、その回転力を超える攻撃力を発揮し、ヤドカリを吹っ飛ばした。

 ――ドッッゴォォオオオオオンッッ!!!!

 直後、ヤドカリが地面に衝突する音とキングブレイヴが崩れる音が混ざり合う。
 僕の近くにいたメタルもちりんたちのおかげで、下敷きにならずに済んだ。そして、こんなアナウンスが聞こえてくる。

〈【特別クエスト】隠しボス:シロウバイから街を救え! クエスト達成!〉

◆決めたァーーッ!?
◆よっしゃぁああああああ!!!
◆拳 こ そ が 正 義
◆うおーーーー!!
◆流石に熱すぎww
◆GG
◆超越号キングブレイヴに敬礼を……
◆俺の中の少年が息を吹き返して雄叫びを上げ始めたよ
◆普通に応援しちゃって悔しい……!

 こうして、唐突に始まった隠しボスとの戦闘は終わりを告げた。
しおりを挟む
感想 134

あなたにおすすめの小説

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜

むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。 そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。 それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……? のんびりほのぼのとした現代スローライフです。 他サイトにも掲載中。

【短編】追放した仲間が行方不明!?

mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。 ※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

元探索者のおじいちゃん〜孫にせがまれてダンジョン配信を始めたんじゃが、軟弱な若造を叱りつけたらバズりおったわい〜

伊藤ほほほ
ファンタジー
夏休み。それは、最愛の孫『麻奈』がやって来る至福の期間。 麻奈は小学二年生。ダンジョン配信なるものがクラスで流行っているらしい。 探索者がモンスターを倒す様子を見て盛り上がるのだとか。 「おじいちゃん、元探索者なんでしょ? ダンジョン配信してよ!」 孫にせがまれては断れない。元探索者の『工藤源二』は、三十年ぶりにダンジョンへと向かう。 「これがスライムの倒し方じゃ!」 現在の常識とは異なる源二のダンジョン攻略が、探索者業界に革命を巻き起こす。 たまたま出会った迷惑系配信者への説教が注目を集め、 インターネット掲示板が源二の話題で持ちきりになる。 自由奔放なおじいちゃんらしい人柄もあってか、様々な要因が積み重なり、チャンネル登録者数が初日で七万人を超えるほどの人気配信者となってしまう。 世間を騒がせるほどにバズってしまうのだった。 今日も源二は愛車の軽トラックを走らせ、ダンジョンへと向かう。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。