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第87話
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「……ん? お~、入れた!」
ジジジという音を立て、足元から自分の体が形成されて電脳世界に入ることができた。
どうやらとある街の中で生まれたらしいが、日本ではなく西洋っぽい街並みをしている。時間帯は夜で、街灯の光が眩しい。
「来たか……」
「あ、駆動さん! あれ、黒狐はどこですか?」
すでにやってきていた駆動さんはベンチでだらけていた。どこを見渡しても黒狐が見当たらないので質問してみる。
「あいつはスポーン地点がズレてクソほど遠い場所にいるとのことだ……。クソだりぃし、放っておいても大丈夫だろ」
「えぇ……」
この世界での僕の肉体は忠実に再現しており、体質もちゃんとあるし〝鍵〟も使えるらしいから、あとで呼び出そう。
僕は配信を再開するべく、目の前に現れた半透明のプレートと睨めっこ中で忙しいから黒狐は後回しだ。
そして、AIによるサポートもあり、なんとか配信を再び開始させることができた。
:おっ?
:再開キターー!!
:待ってたぜぇ、この瞬間をよォ!
:グラフィックすげぇ……
:初めまして。Xランク探索者になるための配信って本当ですか?
:噂のサクたんさんってまだXランクじゃないの!?
WDO Official:我々WDOは彼を応援しています(英語)
:これは世紀の大配信だ……(英語)
:こんな子供がXランクとか嘘だろ?(英語)
:↑言葉を慎め。そしてバナナを献上しろ(英語)
「ど、同接数380万人!? あばばばばばばば!!!!」
いつも以上に流れるスピードが速いコメント欄に疑問が生まれたので同接数を見てみたのだが、そこにはとんでもない数字が表示されていた。
この前の大氾濫よりも人が多い……!
「すげぇな……。まぁとりあえず早く終わらせてぇから話進めんぞ」
「こ、この状態で!? ま、まぁ……わかりました……」
動揺でガクガクと震えているのだが、駆動さんの説明がスタートしてしまった。
「このワールドはXランク探索者試験専用に作られた世界だ。そして、お前の肉体や幻獣など、可能な限り全てをプログラミングして存在してる……」
「確かにウオカゲとかハナちゃんもいますね」
僕の影で泳ぐ潜影鮫や、胸ポケットで寝ている。サクラジトカゲモドキのハナちゃん。
うなぴは……どうやら現実世界からここに来ているっぽい。
「お前なぁ……事前に飼ってる幻獣教えろっつったが、あまりに多すぎてプログラミング班泣いてたぞ……」
「あはは……す、すみません」
飼育してる幻獣や魔物の情報を教えておいて欲しいと言われたので伝えたのだが、数が多すぎたらしい。
駆動さんはやれやれと言わんばりの溜息を吐いた後、この場所の詳細を話し始めた。
「ここは大陸で、いろんな国が隣接している。そんでまぁ……夜明けまでにこの大陸の国を全て機能停止にすりゃ合格だ。海の向こうにも国はあるが、そっちはいい」
「わかりました。いやぁ、いくら仮想現実と言ってもやっぱり罪悪感がありますね……」
「そう思ってだな、そっちも対策済みだ」
駆動さんがそう言うと、少し歩いて奥から誰かを連れてくる。
それはこの街の住民らしき人だったのだが、顔が明らかに違かった。心から嫌悪感が込み上げてくる見た目をしている。
『こんばんはピマ! 旅人さんピマ?』
「うっ……わぁ……」
:ピーマン人だ!!ww
:ピーマン人とは……
:顔がピーマンになってて目鼻口があるw
:ムキムキピーマンとは違うな
:なんか憎たらしい顔してる……
:やっぱりムキピーしか勝たん♡
:くっそ嫌そうな顔で草
:サクたんの蔑んだ目、正直興奮する
:わかるマン。悔いなく逝けるッ!!
:↑逝くな、そなたは汚らわしい
全力を出せるようにとデザインされた住民らしい。
うん……これならなんの罪悪感もなく国々を滅ぼせる気がする。全力を尽くすしかない。というか全力で滅ぼしたい。
「ちなみになんですけど、リョーガはどうやってクリアしたんですか?」
「アイツは……手当たり次第ぶん殴ってぶっ殺してを繰り返して終わらせたな」
「リョーガらしい……」
産業が盛んな国や魔道具が豊富な国、他にも武装が強固な国や地下の国があるらしい。涼牙みたいになんでも拳で解決ってわけにはいかなさそうだし、考えて魔物や幻獣を呼び出す必要がありそうだ。
「んじゃ、この街の鐘が鳴ったらスタートの合図だ。ふわぁあ……先にログアウトしてサボ……見極めるわ」
「サボったらダメですよ?」
「…………。あぁ」
「むぅ……」
:ゼロはもっと働け
:「あぁ(曇りなき眼)」
:頬を膨らませたサクたんかわゆす
:絶対にサボるという黄金の意志を感じる
:↑どちらかというと漆黒では?
:駆動くんはさぁ……
:もっかいTSさせんぞゴラ
駆動さんはそう言い残し、この世界から立ち去る。僕はとりあえず鐘が鳴り始める前に移動をし始めることにした。
階段を上がり、街を見下ろせるくらい建物の屋上に到着する。理想的な声が通りやすい場所だ。
この国はどうやら、ダンジョンが沢山ある国らしい。ならば、簡単に滅ぼすことができるだろう。
――ゴーン! ゴーン! ゴーン!
鐘が鳴り始めたので、僕はすぅっと大きく息を吸う。なるべくみんなに届くようにと思い込め、思い切り叫んだ。
「すぅぅっ……みんなぁーー!! スタンピードの時間だよ~~っ!!!!」
――ゴゴゴゴ……ドドドドドドドド!!
すると、ダンジョンの入り口らしき穴からナニカが溢れ出てくる。巣を刺激された蜂のように、栓が壊れた蛇口のように……。
一つだけではない。五つ、六つ? いいや……確認できるだけでも数十箇所で大氾濫が引き起こされる。
さぁ、世界の終わりの始まりだ。
ジジジという音を立て、足元から自分の体が形成されて電脳世界に入ることができた。
どうやらとある街の中で生まれたらしいが、日本ではなく西洋っぽい街並みをしている。時間帯は夜で、街灯の光が眩しい。
「来たか……」
「あ、駆動さん! あれ、黒狐はどこですか?」
すでにやってきていた駆動さんはベンチでだらけていた。どこを見渡しても黒狐が見当たらないので質問してみる。
「あいつはスポーン地点がズレてクソほど遠い場所にいるとのことだ……。クソだりぃし、放っておいても大丈夫だろ」
「えぇ……」
この世界での僕の肉体は忠実に再現しており、体質もちゃんとあるし〝鍵〟も使えるらしいから、あとで呼び出そう。
僕は配信を再開するべく、目の前に現れた半透明のプレートと睨めっこ中で忙しいから黒狐は後回しだ。
そして、AIによるサポートもあり、なんとか配信を再び開始させることができた。
:おっ?
:再開キターー!!
:待ってたぜぇ、この瞬間をよォ!
:グラフィックすげぇ……
:初めまして。Xランク探索者になるための配信って本当ですか?
:噂のサクたんさんってまだXランクじゃないの!?
WDO Official:我々WDOは彼を応援しています(英語)
:これは世紀の大配信だ……(英語)
:こんな子供がXランクとか嘘だろ?(英語)
:↑言葉を慎め。そしてバナナを献上しろ(英語)
「ど、同接数380万人!? あばばばばばばば!!!!」
いつも以上に流れるスピードが速いコメント欄に疑問が生まれたので同接数を見てみたのだが、そこにはとんでもない数字が表示されていた。
この前の大氾濫よりも人が多い……!
「すげぇな……。まぁとりあえず早く終わらせてぇから話進めんぞ」
「こ、この状態で!? ま、まぁ……わかりました……」
動揺でガクガクと震えているのだが、駆動さんの説明がスタートしてしまった。
「このワールドはXランク探索者試験専用に作られた世界だ。そして、お前の肉体や幻獣など、可能な限り全てをプログラミングして存在してる……」
「確かにウオカゲとかハナちゃんもいますね」
僕の影で泳ぐ潜影鮫や、胸ポケットで寝ている。サクラジトカゲモドキのハナちゃん。
うなぴは……どうやら現実世界からここに来ているっぽい。
「お前なぁ……事前に飼ってる幻獣教えろっつったが、あまりに多すぎてプログラミング班泣いてたぞ……」
「あはは……す、すみません」
飼育してる幻獣や魔物の情報を教えておいて欲しいと言われたので伝えたのだが、数が多すぎたらしい。
駆動さんはやれやれと言わんばりの溜息を吐いた後、この場所の詳細を話し始めた。
「ここは大陸で、いろんな国が隣接している。そんでまぁ……夜明けまでにこの大陸の国を全て機能停止にすりゃ合格だ。海の向こうにも国はあるが、そっちはいい」
「わかりました。いやぁ、いくら仮想現実と言ってもやっぱり罪悪感がありますね……」
「そう思ってだな、そっちも対策済みだ」
駆動さんがそう言うと、少し歩いて奥から誰かを連れてくる。
それはこの街の住民らしき人だったのだが、顔が明らかに違かった。心から嫌悪感が込み上げてくる見た目をしている。
『こんばんはピマ! 旅人さんピマ?』
「うっ……わぁ……」
:ピーマン人だ!!ww
:ピーマン人とは……
:顔がピーマンになってて目鼻口があるw
:ムキムキピーマンとは違うな
:なんか憎たらしい顔してる……
:やっぱりムキピーしか勝たん♡
:くっそ嫌そうな顔で草
:サクたんの蔑んだ目、正直興奮する
:わかるマン。悔いなく逝けるッ!!
:↑逝くな、そなたは汚らわしい
全力を出せるようにとデザインされた住民らしい。
うん……これならなんの罪悪感もなく国々を滅ぼせる気がする。全力を尽くすしかない。というか全力で滅ぼしたい。
「ちなみになんですけど、リョーガはどうやってクリアしたんですか?」
「アイツは……手当たり次第ぶん殴ってぶっ殺してを繰り返して終わらせたな」
「リョーガらしい……」
産業が盛んな国や魔道具が豊富な国、他にも武装が強固な国や地下の国があるらしい。涼牙みたいになんでも拳で解決ってわけにはいかなさそうだし、考えて魔物や幻獣を呼び出す必要がありそうだ。
「んじゃ、この街の鐘が鳴ったらスタートの合図だ。ふわぁあ……先にログアウトしてサボ……見極めるわ」
「サボったらダメですよ?」
「…………。あぁ」
「むぅ……」
:ゼロはもっと働け
:「あぁ(曇りなき眼)」
:頬を膨らませたサクたんかわゆす
:絶対にサボるという黄金の意志を感じる
:↑どちらかというと漆黒では?
:駆動くんはさぁ……
:もっかいTSさせんぞゴラ
駆動さんはそう言い残し、この世界から立ち去る。僕はとりあえず鐘が鳴り始める前に移動をし始めることにした。
階段を上がり、街を見下ろせるくらい建物の屋上に到着する。理想的な声が通りやすい場所だ。
この国はどうやら、ダンジョンが沢山ある国らしい。ならば、簡単に滅ぼすことができるだろう。
――ゴーン! ゴーン! ゴーン!
鐘が鳴り始めたので、僕はすぅっと大きく息を吸う。なるべくみんなに届くようにと思い込め、思い切り叫んだ。
「すぅぅっ……みんなぁーー!! スタンピードの時間だよ~~っ!!!!」
――ゴゴゴゴ……ドドドドドドドド!!
すると、ダンジョンの入り口らしき穴からナニカが溢れ出てくる。巣を刺激された蜂のように、栓が壊れた蛇口のように……。
一つだけではない。五つ、六つ? いいや……確認できるだけでも数十箇所で大氾濫が引き起こされる。
さぁ、世界の終わりの始まりだ。
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