動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ

文字の大きさ
上 下
46 / 67
連載

第81話

しおりを挟む
「変身」

 僕がその言葉を発した瞬間、影と雲が僕を包んでロボットの拳を防ぐ。

『チィッ!! しゃらくせェ!!』

 ロボットは腕に装着している機関銃で発砲してくるが、雲から発せられる空気の流れで滑って直撃しない。
 銃やロケットが通用しないと判断したロボットは腕のパーツを変形させ、レーザーの剣を取り出す。背中についているジェットエンジンで高速移動し、剣で斬りつけてきた。

 ――ズバッ!!

 影と雲の繭は真っ二つに切り離され、サラサラと塵となって消え失せる。しかし、

『なッ……!? どこ行きやがった!!』

 そこに死体などはない。
 はとうに、このロボットの背後へと移動していたのだ。

「……肉体の主導権譲渡を確認。これより咲太マスターに代わり、このワタシ――が戦闘を行います」
『テンメェ……んだよその姿はァ!!』

 影が服に染み込んで真っ黒な姿となっていたり、マントは二股に分かれて肥大化し、槍のように鋭い爪がある拳のようになっていた。
 さらに、白い雲がマフラーのように口元を隠して巻きついており、時折稲妻が走ることで不気味な笑みを浮かべているように見える。

◆え
◆はい?
◆変身したァアア!?!?
◆かっけeeeee!!
◆すげぇすごい(語彙力)
◆今日って日曜の朝だっけww
◆やめてくれサクたん。変身モノはオレに効く
◆男児の憧れだしなぁ……
◆幻 獣 ラ イ ダ ー サ ク た ん
◆悔しいけどカッケェな

「マスターが喜びそうな名称を検索中……検索完了」

 うなぴは少し思考を巡らせ、この状態の名称を思いついたようだ。

多幻獣繋纏アーマード・キメラ――形態フォルム・〝天喰ソラハミ〟」

 お父さんが昔から世界を飛び回って人を助けるヒーロー的なお仕事をしていて、僕はそれに憧れていた。しかし、どれだけ筋トレしても筋肉がつかないし、全く強くなれる気がしなかった。
 そんな時、「周りにいる強い幻獣の力を借りればできるのでは?」と思い、やってみたらできたという代物だ。

 だが、これはうなぴが僕の中に入って操るだけでなく、他の幻獣と神経を接続して行う危険な形態だ。
 制限時間もあるし、過ぎれば戻れなくなるかもしれないというリスクもある故に、妹とお母さんには怒られた。

 本来なら神経接続など体が崩壊しかねないだろうが、昔から幻獣たちの魔力を浴びている僕だからできる芸当だと思っている。

《うなぴ頑張れー! 内側から見てるけどカッコいいよ~~!!》
「はい、我が最愛のマスター。ご期待に添えられるよう善処致します」

 今の僕はというと、VRで映像を見ているかのような感覚だ。
 うなぴは僕の体だけでなく、ウオカゲやマシュ丸の能力をも操作している。とても高度な技術だ。

『変身したぐらいでこのオレに勝てると思うんじゃねぇぞォ!! ここがテメェの墓場だァア!!!』
「180秒の制限時間タイムリミット内にて決着をつけます。只今より……戦闘モードへ移行します」

 ――ガキィィィイイインッ!!!!

 ロボットはジェットブーストを搭載した拳で殴りかかってくるが、こちらはマントが変形した拳で対抗し、それを受け止める。
 数秒拮抗した後、ロボットはミサイルを発射し始めるが、雲を纏ってそれを受け流す。

『面倒だなァクソが……!! オラァ!!』

 再びレーザーの剣で斬りつけようとするが、うなぴはドプンッと音を立ててその場から姿を消す。

◆躱した!?
◆どこいった
◆潜影鮫の力で影に潜ってるね
◆雲でミサイル受け流すわ影に潜るわww
◆なんか、ワイ犯罪者してて恥ずかしくなってきたよ
◆サクたんは人間をやめていた……?
◆元から人間か怪しくなってきたか?w

 背後に回り、マントの拳をさらに肥大化させ、ロボットの両腕を掴んで床に叩けつけた。
 反撃を避けるために雲で目くらましをし、稲妻を纏った雲で蹴りを決め込み、片腕を吹き飛ばす。

『ッ……!! こんのォ……幻獣の力借りてるだけの野郎がァァ!!!!』
「っ!!」

 身体中からレーザービームを発射し始め、頰に掠って血が吹き出る。

「出血を確認。トロンボポエチン産出量増加により、血小板の数を増やしま――」
『遅ェ!!!』

 その一瞬の隙を見逃さず、ロボットは無くなっていない方の片腕に装着した武器でレーザービームを放ってきた。
 間一髪で巨大な雲を生成して直撃は避けられたが、内側から見ている僕にまで腕がジンジンとする感覚が伝わってくる。

《うなぴ大丈夫!?》
「……申し訳ございません、マスター。頰に傷ができてしまいました」
《それくらい大丈夫だよ! うぅ……僕にも何か手伝えればいいけど……》
「そう、ですね……。っ! いえ、マスターの手伝いが必要かもしれません。お手を煩わせてしまいますが、よろしいでしょうか」
《もちろんだよ!》

 残りの制限時間は約60秒。倒せるためならなんでもやろう。

◆さぁさぁラストスパートだ!
◆どっちも頑張れ~い
◆力量は五分五分っぽい?
◆どっちもカッケェなぁ……
◆ほほほ、照れますな☆
◆↑テメェに言ってねぇ。去ね
◆つーかこの配信カメラも高性能やなw

『短期決戦でケリつけるぞォォ!! 死にやがれぇええええ!!!!』

 再びレーザービームを乱射し始める。
 だが、今回は当たらない。雲による浮遊やマントの拳を使って立体機動し、レーザーの雨をくぐり抜けた。

「影を……全開放します!」

 ――ドバァッ!!

 全方位に影が飛び散ったと思えば、ロボットの腕や足にも付着し、一時的だが行動を制限する。

 ――残り15秒。

『こんなもんすぐに……』
「一撃必殺……出力最大の拳を展開……!!」

 服に染み込んでいた影も、雲のマフラーも消えた。しかし、右腕に全ての影と雲を収束させ、さらに力を溜め込む。

 ――残り10秒。

(あれを喰らえば流石にこの機体もヤベェ……。だがなァ、シールドの機能は死んでねぇんだよ!! この勝負勝った!!!)

 ――残り5秒。

 僕の拳にバチバチと稲妻が走り出し、そろそろ臨界点を迎えそうだった。
 腕が弾け飛びそうになるが、なんとか堪える。

 ――残り3秒。

『シールド展開だァ!! もう制限時間が来るよなァ!!』
「っ!」

 半透明のシールドがロボットに展開された。
 そして、シールドが展開されて2秒……1秒と時間が経過し、右腕に収束していた影と雲が霧散し始める。

『勝っ――』

 ――パリーーンッ!!

『なッ!?!?』

 シールドは何もせずとも壊れ、崩れ落ちた。
 ボスさんの顔は見えないが、ひどく瞠目している顔が見える気がする。僕はニヤリと笑い、こう叫んだ。

「戻っておいで! うなぴ!!!」

 そう叫ぶと、ロボットからバチッと稲妻が飛び出し、一直線に僕に向かう。
 その稲妻が僕に触れた途端、霧散しかけていた影と雲は再び再形成され、さらに肥大化する。

「戦闘モード、再起動完了」

◆どうなってんだ!?
◆時間過ぎてない……?
◆300秒はブラフだったってこと!?
◆あー、わかった
◆誰か氏ー! 解説プリーズ!
◆残り3秒くらいで電子鰻がサクたんから離れて機体にハッキング。それでシールド破壊したあとに戻ってきたんや
◆すげぇええええ!!
◆え、じゃあこれ……
◆サクたんの勝ちだな

『や、やめ――』
「これがワタシの……いえ、ワタシたちの最高火力です。――【晴空深淵カラクロ】」

 ――ドッッゴォオオオオオンッッ!!!!

 無防備なロボットに、超巨大な拳がクリーンヒットした。機体はバラバラに砕け散り、地面に衝突する。
 どうやら一番下まで到着したようだ。

「ふー……危なかったぁ……。うなぴありがと~~!」
『ガァァ……』
『がぅ~……』
「二人もありがとね。お疲れ様」

◆GG!
◆まじで勝ちやがったwww
◆サクたんに手を出すのはダメ、ゼッタイ
◆俺、足洗います
◆バナナ農家に転職すっかー……
◆こんなん見せられたらもうやっていける気がせん……
◆あかん、顎ががががが
◆顎の買い溜め必須じゃな
◆チクショー、ファンになっちゃうよー!!

 相当無茶な戦いだったけれど、なんとか勝利を収めることができた。
 うなぴ、ウオカゲ、マシュ丸には感謝しかない。あとでご褒美たくさんあげないとな~。

 ――こうして、僕とシャドウファングとの間で起こっていた水面下の戦いに終止符が打たれるのであった。
しおりを挟む
感想 140

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。