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第81話
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「変身」
僕がその言葉を発した瞬間、影と雲が僕を包んでロボットの拳を防ぐ。
『チィッ!! しゃらくせェ!!』
ロボットは腕に装着している機関銃で発砲してくるが、雲から発せられる空気の流れで滑って直撃しない。
銃やロケットが通用しないと判断したロボットは腕のパーツを変形させ、レーザーの剣を取り出す。背中についているジェットエンジンで高速移動し、剣で斬りつけてきた。
――ズバッ!!
影と雲の繭は真っ二つに切り離され、サラサラと塵となって消え失せる。しかし、
『なッ……!? どこ行きやがった!!』
そこに死体などはない。
僕らはとうに、このロボットの背後へと移動していたのだ。
「……肉体の主導権譲渡を確認。これより咲太に代わり、このワタシ――うなぴが戦闘を行います」
『テンメェ……んだよその姿はァ!!』
影が服に染み込んで真っ黒な姿となっていたり、マントは二股に分かれて肥大化し、槍のように鋭い爪がある拳のようになっていた。
さらに、白い雲がマフラーのように口元を隠して巻きついており、時折稲妻が走ることで不気味な笑みを浮かべているように見える。
◆え
◆はい?
◆変身したァアア!?!?
◆かっけeeeee!!
◆すげぇすごい(語彙力)
◆今日って日曜の朝だっけww
◆やめてくれサクたん。変身モノはオレに効く
◆男児の憧れだしなぁ……
◆幻 獣 ラ イ ダ ー サ ク た ん
◆悔しいけどカッケェな
「マスターが喜びそうな名称を検索中……検索完了」
うなぴは少し思考を巡らせ、この状態の名称を思いついたようだ。
「多幻獣繋纏――形態・〝天喰〟」
お父さんが昔から世界を飛び回って人を助けるヒーロー的なお仕事をしていて、僕はそれに憧れていた。しかし、どれだけ筋トレしても筋肉がつかないし、全く強くなれる気がしなかった。
そんな時、「周りにいる強い幻獣の力を借りればできるのでは?」と思い、やってみたらできたという代物だ。
だが、これはうなぴが僕の中に入って操るだけでなく、他の幻獣と神経を接続して行う危険な形態だ。
制限時間もあるし、過ぎれば戻れなくなるかもしれないというリスクもある故に、妹とお母さんには怒られた。
本来なら神経接続など体が崩壊しかねないだろうが、昔から幻獣たちの魔力を浴びている僕だからできる芸当だと思っている。
《うなぴ頑張れー! 内側から見てるけどカッコいいよ~~!!》
「はい、我が最愛のマスター。ご期待に添えられるよう善処致します」
今の僕はというと、VRで映像を見ているかのような感覚だ。
うなぴは僕の体だけでなく、ウオカゲやマシュ丸の能力をも操作している。とても高度な技術だ。
『変身したぐらいでこのオレに勝てると思うんじゃねぇぞォ!! ここがテメェの墓場だァア!!!』
「180秒の制限時間内にて決着をつけます。只今より……戦闘モードへ移行します」
――ガキィィィイイインッ!!!!
ロボットはジェットブーストを搭載した拳で殴りかかってくるが、こちらはマントが変形した拳で対抗し、それを受け止める。
数秒拮抗した後、ロボットはミサイルを発射し始めるが、雲を纏ってそれを受け流す。
『面倒だなァクソが……!! オラァ!!』
再びレーザーの剣で斬りつけようとするが、僕はドプンッと音を立ててその場から姿を消す。
◆躱した!?
◆どこいった
◆潜影鮫の力で影に潜ってるね
◆雲でミサイル受け流すわ影に潜るわww
◆なんか、ワイ犯罪者してて恥ずかしくなってきたよ
◆サクたんは人間をやめていた……?
◆元から人間か怪しくなってきたか?w
背後に回り、マントの拳をさらに肥大化させ、ロボットの両腕を掴んで床に叩けつけた。
反撃を避けるために雲で目くらましをし、稲妻を纏った雲で蹴りを決め込み、片腕を吹き飛ばす。
『ッ……!! こんのォ……幻獣の力借りてるだけの野郎がァァ!!!!』
「っ!!」
身体中からレーザービームを発射し始め、頰に掠って血が吹き出る。
「出血を確認。トロンボポエチン産出量増加により、血小板の数を増やしま――」
『遅ェ!!!』
その一瞬の隙を見逃さず、ロボットは無くなっていない方の片腕に装着した武器でレーザービームを放ってきた。
間一髪で巨大な雲を生成して直撃は避けられたが、内側から見ている僕にまで腕がジンジンとする感覚が伝わってくる。
《うなぴ大丈夫!?》
「……申し訳ございません、マスター。頰に傷ができてしまいました」
《それくらい大丈夫だよ! うぅ……僕にも何か手伝えればいいけど……》
「そう、ですね……。っ! いえ、マスターの手伝いが必要かもしれません。お手を煩わせてしまいますが、よろしいでしょうか」
《もちろんだよ!》
残りの制限時間は約60秒。倒せるためならなんでもやろう。
◆さぁさぁラストスパートだ!
◆どっちも頑張れ~い
◆力量は五分五分っぽい?
◆どっちもカッケェなぁ……
◆ほほほ、照れますな☆
◆↑テメェに言ってねぇ。去ね
◆つーかこの配信カメラも高性能やなw
『短期決戦でケリつけるぞォォ!! 死にやがれぇええええ!!!!』
再びレーザービームを乱射し始める。
だが、今回は当たらない。雲による浮遊やマントの拳を使って立体機動し、レーザーの雨をくぐり抜けた。
「影を……全開放します!」
――ドバァッ!!
全方位に影が飛び散ったと思えば、ロボットの腕や足にも付着し、一時的だが行動を制限する。
――残り15秒。
『こんなもんすぐに……』
「一撃必殺……出力最大の拳を展開……!!」
服に染み込んでいた影も、雲のマフラーも消えた。しかし、右腕に全ての影と雲を収束させ、さらに力を溜め込む。
――残り10秒。
(あれを喰らえば流石にこの機体もヤベェ……。だがなァ、シールドの機能は死んでねぇんだよ!! この勝負勝った!!!)
――残り5秒。
僕の拳にバチバチと稲妻が走り出し、そろそろ臨界点を迎えそうだった。
腕が弾け飛びそうになるが、なんとか堪える。
――残り3秒。
『シールド展開だァ!! もう制限時間が来るよなァ!!』
「っ!」
半透明のシールドがロボットに展開された。
そして、シールドが展開されて2秒……1秒と時間が経過し、右腕に収束していた影と雲が霧散し始める。
『勝っ――』
――パリーーンッ!!
『なッ!?!?』
シールドは何もせずとも壊れ、崩れ落ちた。
ボスさんの顔は見えないが、ひどく瞠目している顔が見える気がする。僕はニヤリと笑い、こう叫んだ。
「戻っておいで! うなぴ!!!」
そう叫ぶと、ロボットからバチッと稲妻が飛び出し、一直線に僕に向かう。
その稲妻が僕に触れた途端、霧散しかけていた影と雲は再び再形成され、さらに肥大化する。
「戦闘モード、再起動完了」
◆どうなってんだ!?
◆時間過ぎてない……?
◆300秒はブラフだったってこと!?
◆あー、わかった
◆誰か氏ー! 解説プリーズ!
◆残り3秒くらいで電子鰻がサクたんから離れて機体にハッキング。それでシールド破壊したあとに戻ってきたんや
◆すげぇええええ!!
◆え、じゃあこれ……
◆サクたんの勝ちだな
『や、やめ――』
「これがワタシの……いえ、ワタシたちの最高火力です。――【晴空深淵】」
――ドッッゴォオオオオオンッッ!!!!
無防備なロボットに、超巨大な拳がクリーンヒットした。機体はバラバラに砕け散り、地面に衝突する。
どうやら一番下まで到着したようだ。
「ふー……危なかったぁ……。うなぴありがと~~!」
『ガァァ……』
『がぅ~……』
「二人もありがとね。お疲れ様」
◆GG!
◆まじで勝ちやがったwww
◆サクたんに手を出すのはダメ、ゼッタイ
◆俺、足洗います
◆バナナ農家に転職すっかー……
◆こんなん見せられたらもうやっていける気がせん……
◆あかん、顎ががががが
◆顎の買い溜め必須じゃな
◆チクショー、ファンになっちゃうよー!!
相当無茶な戦いだったけれど、なんとか勝利を収めることができた。
うなぴ、ウオカゲ、マシュ丸には感謝しかない。あとでご褒美たくさんあげないとな~。
――こうして、僕とシャドウファングとの間で起こっていた水面下の戦いに終止符が打たれるのであった。
僕がその言葉を発した瞬間、影と雲が僕を包んでロボットの拳を防ぐ。
『チィッ!! しゃらくせェ!!』
ロボットは腕に装着している機関銃で発砲してくるが、雲から発せられる空気の流れで滑って直撃しない。
銃やロケットが通用しないと判断したロボットは腕のパーツを変形させ、レーザーの剣を取り出す。背中についているジェットエンジンで高速移動し、剣で斬りつけてきた。
――ズバッ!!
影と雲の繭は真っ二つに切り離され、サラサラと塵となって消え失せる。しかし、
『なッ……!? どこ行きやがった!!』
そこに死体などはない。
僕らはとうに、このロボットの背後へと移動していたのだ。
「……肉体の主導権譲渡を確認。これより咲太に代わり、このワタシ――うなぴが戦闘を行います」
『テンメェ……んだよその姿はァ!!』
影が服に染み込んで真っ黒な姿となっていたり、マントは二股に分かれて肥大化し、槍のように鋭い爪がある拳のようになっていた。
さらに、白い雲がマフラーのように口元を隠して巻きついており、時折稲妻が走ることで不気味な笑みを浮かべているように見える。
◆え
◆はい?
◆変身したァアア!?!?
◆かっけeeeee!!
◆すげぇすごい(語彙力)
◆今日って日曜の朝だっけww
◆やめてくれサクたん。変身モノはオレに効く
◆男児の憧れだしなぁ……
◆幻 獣 ラ イ ダ ー サ ク た ん
◆悔しいけどカッケェな
「マスターが喜びそうな名称を検索中……検索完了」
うなぴは少し思考を巡らせ、この状態の名称を思いついたようだ。
「多幻獣繋纏――形態・〝天喰〟」
お父さんが昔から世界を飛び回って人を助けるヒーロー的なお仕事をしていて、僕はそれに憧れていた。しかし、どれだけ筋トレしても筋肉がつかないし、全く強くなれる気がしなかった。
そんな時、「周りにいる強い幻獣の力を借りればできるのでは?」と思い、やってみたらできたという代物だ。
だが、これはうなぴが僕の中に入って操るだけでなく、他の幻獣と神経を接続して行う危険な形態だ。
制限時間もあるし、過ぎれば戻れなくなるかもしれないというリスクもある故に、妹とお母さんには怒られた。
本来なら神経接続など体が崩壊しかねないだろうが、昔から幻獣たちの魔力を浴びている僕だからできる芸当だと思っている。
《うなぴ頑張れー! 内側から見てるけどカッコいいよ~~!!》
「はい、我が最愛のマスター。ご期待に添えられるよう善処致します」
今の僕はというと、VRで映像を見ているかのような感覚だ。
うなぴは僕の体だけでなく、ウオカゲやマシュ丸の能力をも操作している。とても高度な技術だ。
『変身したぐらいでこのオレに勝てると思うんじゃねぇぞォ!! ここがテメェの墓場だァア!!!』
「180秒の制限時間内にて決着をつけます。只今より……戦闘モードへ移行します」
――ガキィィィイイインッ!!!!
ロボットはジェットブーストを搭載した拳で殴りかかってくるが、こちらはマントが変形した拳で対抗し、それを受け止める。
数秒拮抗した後、ロボットはミサイルを発射し始めるが、雲を纏ってそれを受け流す。
『面倒だなァクソが……!! オラァ!!』
再びレーザーの剣で斬りつけようとするが、僕はドプンッと音を立ててその場から姿を消す。
◆躱した!?
◆どこいった
◆潜影鮫の力で影に潜ってるね
◆雲でミサイル受け流すわ影に潜るわww
◆なんか、ワイ犯罪者してて恥ずかしくなってきたよ
◆サクたんは人間をやめていた……?
◆元から人間か怪しくなってきたか?w
背後に回り、マントの拳をさらに肥大化させ、ロボットの両腕を掴んで床に叩けつけた。
反撃を避けるために雲で目くらましをし、稲妻を纏った雲で蹴りを決め込み、片腕を吹き飛ばす。
『ッ……!! こんのォ……幻獣の力借りてるだけの野郎がァァ!!!!』
「っ!!」
身体中からレーザービームを発射し始め、頰に掠って血が吹き出る。
「出血を確認。トロンボポエチン産出量増加により、血小板の数を増やしま――」
『遅ェ!!!』
その一瞬の隙を見逃さず、ロボットは無くなっていない方の片腕に装着した武器でレーザービームを放ってきた。
間一髪で巨大な雲を生成して直撃は避けられたが、内側から見ている僕にまで腕がジンジンとする感覚が伝わってくる。
《うなぴ大丈夫!?》
「……申し訳ございません、マスター。頰に傷ができてしまいました」
《それくらい大丈夫だよ! うぅ……僕にも何か手伝えればいいけど……》
「そう、ですね……。っ! いえ、マスターの手伝いが必要かもしれません。お手を煩わせてしまいますが、よろしいでしょうか」
《もちろんだよ!》
残りの制限時間は約60秒。倒せるためならなんでもやろう。
◆さぁさぁラストスパートだ!
◆どっちも頑張れ~い
◆力量は五分五分っぽい?
◆どっちもカッケェなぁ……
◆ほほほ、照れますな☆
◆↑テメェに言ってねぇ。去ね
◆つーかこの配信カメラも高性能やなw
『短期決戦でケリつけるぞォォ!! 死にやがれぇええええ!!!!』
再びレーザービームを乱射し始める。
だが、今回は当たらない。雲による浮遊やマントの拳を使って立体機動し、レーザーの雨をくぐり抜けた。
「影を……全開放します!」
――ドバァッ!!
全方位に影が飛び散ったと思えば、ロボットの腕や足にも付着し、一時的だが行動を制限する。
――残り15秒。
『こんなもんすぐに……』
「一撃必殺……出力最大の拳を展開……!!」
服に染み込んでいた影も、雲のマフラーも消えた。しかし、右腕に全ての影と雲を収束させ、さらに力を溜め込む。
――残り10秒。
(あれを喰らえば流石にこの機体もヤベェ……。だがなァ、シールドの機能は死んでねぇんだよ!! この勝負勝った!!!)
――残り5秒。
僕の拳にバチバチと稲妻が走り出し、そろそろ臨界点を迎えそうだった。
腕が弾け飛びそうになるが、なんとか堪える。
――残り3秒。
『シールド展開だァ!! もう制限時間が来るよなァ!!』
「っ!」
半透明のシールドがロボットに展開された。
そして、シールドが展開されて2秒……1秒と時間が経過し、右腕に収束していた影と雲が霧散し始める。
『勝っ――』
――パリーーンッ!!
『なッ!?!?』
シールドは何もせずとも壊れ、崩れ落ちた。
ボスさんの顔は見えないが、ひどく瞠目している顔が見える気がする。僕はニヤリと笑い、こう叫んだ。
「戻っておいで! うなぴ!!!」
そう叫ぶと、ロボットからバチッと稲妻が飛び出し、一直線に僕に向かう。
その稲妻が僕に触れた途端、霧散しかけていた影と雲は再び再形成され、さらに肥大化する。
「戦闘モード、再起動完了」
◆どうなってんだ!?
◆時間過ぎてない……?
◆300秒はブラフだったってこと!?
◆あー、わかった
◆誰か氏ー! 解説プリーズ!
◆残り3秒くらいで電子鰻がサクたんから離れて機体にハッキング。それでシールド破壊したあとに戻ってきたんや
◆すげぇええええ!!
◆え、じゃあこれ……
◆サクたんの勝ちだな
『や、やめ――』
「これがワタシの……いえ、ワタシたちの最高火力です。――【晴空深淵】」
――ドッッゴォオオオオオンッッ!!!!
無防備なロボットに、超巨大な拳がクリーンヒットした。機体はバラバラに砕け散り、地面に衝突する。
どうやら一番下まで到着したようだ。
「ふー……危なかったぁ……。うなぴありがと~~!」
『ガァァ……』
『がぅ~……』
「二人もありがとね。お疲れ様」
◆GG!
◆まじで勝ちやがったwww
◆サクたんに手を出すのはダメ、ゼッタイ
◆俺、足洗います
◆バナナ農家に転職すっかー……
◆こんなん見せられたらもうやっていける気がせん……
◆あかん、顎ががががが
◆顎の買い溜め必須じゃな
◆チクショー、ファンになっちゃうよー!!
相当無茶な戦いだったけれど、なんとか勝利を収めることができた。
うなぴ、ウオカゲ、マシュ丸には感謝しかない。あとでご褒美たくさんあげないとな~。
――こうして、僕とシャドウファングとの間で起こっていた水面下の戦いに終止符が打たれるのであった。
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