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第80話
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――その頃、トラップによって分断された三人のうちの凛理はというと……。
「オラァアア!! テメェらまとめて爆発して死――……ねはよくねぇですわねぇ!!」
――チュドォオオオオオン!!!!
そこら中に響き渡る断末魔と爆発音。
両手に四連式ロケットランチャーを装備し、全方位に向かって弾を放って爆撃している。
「ば、 化け物だぁ……!!」
「誰が化け物ですってぇ!? 野郎ぶっ殺してやりますわぁあああ!!」
ダンジョン内にある研究施設やロボット、扉や家具などは悉く爆発して塵と化していた。
暴れまわりながらダンジョンを進んでいると、奥から大柄な人型の影が見え始める。現れたのは、傷ひとつない重厚そうな赤い鱗をスーツのように纏う人型ロボットであった。
「ゲホッ……鬼蛇穴組の組長の愛娘か……。だが、お前はもう終わりだ……」
床で意識朦朧としているメンバーの一人が、凛理に向かって啖呵を切っている。
「随分自信があるようですね。ロボ如きがトカゲの皮を纏って調子乗ってんじゃねぇですわよ」
「あれはなぁ……かのSランクダンジョンで手に入れたエンシェントレッドドラゴンから作られたロボットだ! なめるなよ小娘ッ!!」
一直線に凛理に向かってくるが、彼女は冷静にロケランをスカートの中にしまい、とある武器を腕に装着させた。
そして、腰を据えてロボットの胴体に照準を合わせる。
「パイルバンカーのお時間ですわ♪」
「はぁ? あれに穴を開けられるわけ――」
――ガキンッ……ドウッッ!!!!
瞬間、ロボットの胴体には巨大な風穴が開き、地面にひれ伏した。
それだけではない。ロボットの奥の壁を何十枚も突き破っており、その威力がひしひしと伝わってきている。
「やれやれ、大したことないですわねぇ。興醒めですわ」
「なッ……!?」
普段使っているロケットランチャーは多対一を想定した広範囲爆撃用の武器。そしてパイルバンカーは、ただ貫くことしか考えていない単体用の武器である。
「ところでワタクシ、あなたを最後に殺すと約束していましたわよね?」
「え、し、して、ないんだが……」
「あれは嘘ですわ♪ さぁさぁ、パイルをぶち込まれる覚悟の準備をしてくださいまし! いいですわねッ!?」
「だから約束してないってぇええええ!! いぃぃやぁああああ!!!!」
凛理はまだまだ暴れ続け、止まることを知らない。
……そして、分断された残りの二人である天宮城とルハは、同じ場所に転移されていた。
「ちょっと! さくたと離れちゃったじゃん!!」
「ダンジョンに潜ると大抵引っかかるから大丈夫よ。それとも、ルハちゃんは咲太君を信じられないのかしら?」
「ぐっ……。さ、さくたが簡単に負けるわけないでしょ!!」
「ふふっ、そうよ。だから私たちも切り抜けるわよ」
共闘に対して嫌そうな顔をするルハだが、深い溜息を吐いた後に腰に携えている刀を引き抜く。
二人を囲む大勢の魔物と構成員。咲太がいなくなったことにより、再びダンジョンを防衛する思考回路が復活し、敵対し始めたのだ。
「あんたのことは気にくわない。けど協力してあげる。足引っ張んないでよ」
「こっちのセリフよ。とりあえず魔物を一層するわ! 【グレート・アヴァランチ】!!」
天宮城の手が白く光ると同時に、そこから大雪崩が発生して魔物と一部の構成員を巻き込む。
間一髪で逃れた構成員もいるが、ルハが動く。
「【縮地】。【一閃・峰斬り】」
高速で移動して、刀を横一閃。
すると構成員たちはバタバタと倒れるが、血は吹き出ることなく気絶した。
「殺しはさくたが嫌がってそうだったし、仕方ない。次歯向かったら殺す」
「この調子で行くわよ」
「命令しないで。わたしの方がこのダンジョンに詳しいし」
「私だって【サーチ】であらかた把握できてるわ」
不仲な二人だが、最高のコンビネーションを発揮しながら魔物と構成員を倒して行く。
咲太、凛理、天宮城、ルハが侵入して数十分。
雷霆の迷宮が機能停止に陥るまで残り30%ほどである。
# # #
「……なんか、上からボカンボカン聞こえる気がするなぁ」
デスゲーム会場のような場所から出た僕は、ルハからもらった地図を頼りに奥へと進み続けていた。
◆まぁ……リリーお嬢だろうな……
◆さすがアンダーワールド四天王の鬼蛇穴組や
◆言葉は交わせるが、話が通じない
◆蛮姫とかいう異名あるぞ
◆あんなんによく協力仰げたなw
◆サクたんの人脈どうなってん?
◆触らぬ神に祟りなしってことよ
◆高校生なのに……俺たちよりすげぇ……!!
扉のセキュリティなどはロボットたちがハッキングをし、止まることなく進むことができている。
そして、最深部であるリーダーのいる部屋の前へと到着した。
「よしっ、開けます!」
最後の扉は木製で、鍵もかかっていない。
扉を開けると、そこにはあの時画面越しで会ったあの人がいた。
「チッ……もう来たのかよ……!!」
「あなたは! デスゲーム主催者……ではない人」
「シャドウファングリーダーの黒岩牙狼だ!! 覚えときやがれ!!」
まさかボスだったなんて……。「そう見えなかった」と言ったらまた怒られそうだったため、口にチャックをする。
とりあえず目的はこの人を倒し、この部屋にある機密情報を世に流してシャドウファングを潰すというものだ。
先に手を出されたのだし、恨むならば過去の自分を悔やむべきだろう。
「オレを簡単に倒せると思ってる目だなァ……だが甘ぇんだよ!!」
「えっ。うわぁああああ!?」
バンッという音が聞こえたと思えば、この部屋の床が抜けて落下し始める。
マシュ丸が僕の足元に雲を生成して落下死は防がれたが、穴というより滑り台の方が近いかもしれない。
サーフィンやスキーなどは運動不足の僕に経験はないが、今はまさにそれをしているかのような感じに近いだろう。
「ここから先は〝地下空洞世界〟や〝ダンジョンの抜け殻〟とか呼ばれてる空間だ……そこは魔力がゼロどころか、魔力を吸収する作用がある!!」
「あ……〝鍵〟が使えないっ!」
◆幻獣呼び出せなくなったな
◆牙狼優勢きちゃ~!!
◆なかなか考えたな
◆つーかアンダーワールドってなんや?
◆地中にダンジョンが生成される際、ダンジョンの下が空洞化する。その空間がそう呼ばれてるぜ
◆一回も行ったことないや……
◆普通はWDOが封鎖してるから行けんよ
◆地下空洞世界捜査班、通称〝U.W.I.T〟が捕まえに来るから行かない方が良い
腕に力を込めるが、模様は浮き出るもののすぐに空中に霧散して消えてしまう。
つまり、僕は幻獣を呼び出すことができない。今いる幻獣の潜影鮫、叢雲獅子、電子鰻でなんとか勝つしかないということだ。
『魔法が使えないってことはよォ……武装すりゃあ最強ってことなんだぜェ!!!』
僕らが落ちた穴の外から炎を噴射しながら、金属がボスである牙狼さんに集まり始める。そして、大氾濫の際に倒したゴーレム・エクス・マキナを彷彿させるロボットへと変形した。
正直言ってめちゃくちゃカッコいいし、乗ってみたい。だが、流石にそんなことを口走る余裕は今の僕にない。いつものなんとかなるだろうの精神はなく、汗が垂れる。
(これはちょっとやばいなぁ……。どうする。どうすればいい。どうすれば――)
息が荒くなり、視界がどんどん黒くなり始めたその時、スマホが振動した。
確認してみると、うなぴが僕にメッセージを送っているのが確認できる。
「あ――。ふ、ふふ……あははっ!!」
『なんだァ? 諦めて頭がおかしくなっちまったのかァ!?』
「いや~、一つありました。勝てる方法が!!」
うなぴからの提案は、正直に言えばやりたくないものだ。昔これをやったら妹とお母さんにブチ切れられたし経験があるから。
まぁ妹はお父さんと海外出張中だし、お母さんは体質の影響で寝てるから大丈夫なはず! アンチューブだし見てないでしょ!
『下に着く前にぶち殺してやらァアア!!!!』
大きなロボットの拳が眼前に迫ってきている。
しかし、僕は上がった口角を下げることはない。片手でスマホを持ち、それを額に当てながらたった一言、こう呟いた。
「――変身」
「オラァアア!! テメェらまとめて爆発して死――……ねはよくねぇですわねぇ!!」
――チュドォオオオオオン!!!!
そこら中に響き渡る断末魔と爆発音。
両手に四連式ロケットランチャーを装備し、全方位に向かって弾を放って爆撃している。
「ば、 化け物だぁ……!!」
「誰が化け物ですってぇ!? 野郎ぶっ殺してやりますわぁあああ!!」
ダンジョン内にある研究施設やロボット、扉や家具などは悉く爆発して塵と化していた。
暴れまわりながらダンジョンを進んでいると、奥から大柄な人型の影が見え始める。現れたのは、傷ひとつない重厚そうな赤い鱗をスーツのように纏う人型ロボットであった。
「ゲホッ……鬼蛇穴組の組長の愛娘か……。だが、お前はもう終わりだ……」
床で意識朦朧としているメンバーの一人が、凛理に向かって啖呵を切っている。
「随分自信があるようですね。ロボ如きがトカゲの皮を纏って調子乗ってんじゃねぇですわよ」
「あれはなぁ……かのSランクダンジョンで手に入れたエンシェントレッドドラゴンから作られたロボットだ! なめるなよ小娘ッ!!」
一直線に凛理に向かってくるが、彼女は冷静にロケランをスカートの中にしまい、とある武器を腕に装着させた。
そして、腰を据えてロボットの胴体に照準を合わせる。
「パイルバンカーのお時間ですわ♪」
「はぁ? あれに穴を開けられるわけ――」
――ガキンッ……ドウッッ!!!!
瞬間、ロボットの胴体には巨大な風穴が開き、地面にひれ伏した。
それだけではない。ロボットの奥の壁を何十枚も突き破っており、その威力がひしひしと伝わってきている。
「やれやれ、大したことないですわねぇ。興醒めですわ」
「なッ……!?」
普段使っているロケットランチャーは多対一を想定した広範囲爆撃用の武器。そしてパイルバンカーは、ただ貫くことしか考えていない単体用の武器である。
「ところでワタクシ、あなたを最後に殺すと約束していましたわよね?」
「え、し、して、ないんだが……」
「あれは嘘ですわ♪ さぁさぁ、パイルをぶち込まれる覚悟の準備をしてくださいまし! いいですわねッ!?」
「だから約束してないってぇええええ!! いぃぃやぁああああ!!!!」
凛理はまだまだ暴れ続け、止まることを知らない。
……そして、分断された残りの二人である天宮城とルハは、同じ場所に転移されていた。
「ちょっと! さくたと離れちゃったじゃん!!」
「ダンジョンに潜ると大抵引っかかるから大丈夫よ。それとも、ルハちゃんは咲太君を信じられないのかしら?」
「ぐっ……。さ、さくたが簡単に負けるわけないでしょ!!」
「ふふっ、そうよ。だから私たちも切り抜けるわよ」
共闘に対して嫌そうな顔をするルハだが、深い溜息を吐いた後に腰に携えている刀を引き抜く。
二人を囲む大勢の魔物と構成員。咲太がいなくなったことにより、再びダンジョンを防衛する思考回路が復活し、敵対し始めたのだ。
「あんたのことは気にくわない。けど協力してあげる。足引っ張んないでよ」
「こっちのセリフよ。とりあえず魔物を一層するわ! 【グレート・アヴァランチ】!!」
天宮城の手が白く光ると同時に、そこから大雪崩が発生して魔物と一部の構成員を巻き込む。
間一髪で逃れた構成員もいるが、ルハが動く。
「【縮地】。【一閃・峰斬り】」
高速で移動して、刀を横一閃。
すると構成員たちはバタバタと倒れるが、血は吹き出ることなく気絶した。
「殺しはさくたが嫌がってそうだったし、仕方ない。次歯向かったら殺す」
「この調子で行くわよ」
「命令しないで。わたしの方がこのダンジョンに詳しいし」
「私だって【サーチ】であらかた把握できてるわ」
不仲な二人だが、最高のコンビネーションを発揮しながら魔物と構成員を倒して行く。
咲太、凛理、天宮城、ルハが侵入して数十分。
雷霆の迷宮が機能停止に陥るまで残り30%ほどである。
# # #
「……なんか、上からボカンボカン聞こえる気がするなぁ」
デスゲーム会場のような場所から出た僕は、ルハからもらった地図を頼りに奥へと進み続けていた。
◆まぁ……リリーお嬢だろうな……
◆さすがアンダーワールド四天王の鬼蛇穴組や
◆言葉は交わせるが、話が通じない
◆蛮姫とかいう異名あるぞ
◆あんなんによく協力仰げたなw
◆サクたんの人脈どうなってん?
◆触らぬ神に祟りなしってことよ
◆高校生なのに……俺たちよりすげぇ……!!
扉のセキュリティなどはロボットたちがハッキングをし、止まることなく進むことができている。
そして、最深部であるリーダーのいる部屋の前へと到着した。
「よしっ、開けます!」
最後の扉は木製で、鍵もかかっていない。
扉を開けると、そこにはあの時画面越しで会ったあの人がいた。
「チッ……もう来たのかよ……!!」
「あなたは! デスゲーム主催者……ではない人」
「シャドウファングリーダーの黒岩牙狼だ!! 覚えときやがれ!!」
まさかボスだったなんて……。「そう見えなかった」と言ったらまた怒られそうだったため、口にチャックをする。
とりあえず目的はこの人を倒し、この部屋にある機密情報を世に流してシャドウファングを潰すというものだ。
先に手を出されたのだし、恨むならば過去の自分を悔やむべきだろう。
「オレを簡単に倒せると思ってる目だなァ……だが甘ぇんだよ!!」
「えっ。うわぁああああ!?」
バンッという音が聞こえたと思えば、この部屋の床が抜けて落下し始める。
マシュ丸が僕の足元に雲を生成して落下死は防がれたが、穴というより滑り台の方が近いかもしれない。
サーフィンやスキーなどは運動不足の僕に経験はないが、今はまさにそれをしているかのような感じに近いだろう。
「ここから先は〝地下空洞世界〟や〝ダンジョンの抜け殻〟とか呼ばれてる空間だ……そこは魔力がゼロどころか、魔力を吸収する作用がある!!」
「あ……〝鍵〟が使えないっ!」
◆幻獣呼び出せなくなったな
◆牙狼優勢きちゃ~!!
◆なかなか考えたな
◆つーかアンダーワールドってなんや?
◆地中にダンジョンが生成される際、ダンジョンの下が空洞化する。その空間がそう呼ばれてるぜ
◆一回も行ったことないや……
◆普通はWDOが封鎖してるから行けんよ
◆地下空洞世界捜査班、通称〝U.W.I.T〟が捕まえに来るから行かない方が良い
腕に力を込めるが、模様は浮き出るもののすぐに空中に霧散して消えてしまう。
つまり、僕は幻獣を呼び出すことができない。今いる幻獣の潜影鮫、叢雲獅子、電子鰻でなんとか勝つしかないということだ。
『魔法が使えないってことはよォ……武装すりゃあ最強ってことなんだぜェ!!!』
僕らが落ちた穴の外から炎を噴射しながら、金属がボスである牙狼さんに集まり始める。そして、大氾濫の際に倒したゴーレム・エクス・マキナを彷彿させるロボットへと変形した。
正直言ってめちゃくちゃカッコいいし、乗ってみたい。だが、流石にそんなことを口走る余裕は今の僕にない。いつものなんとかなるだろうの精神はなく、汗が垂れる。
(これはちょっとやばいなぁ……。どうする。どうすればいい。どうすれば――)
息が荒くなり、視界がどんどん黒くなり始めたその時、スマホが振動した。
確認してみると、うなぴが僕にメッセージを送っているのが確認できる。
「あ――。ふ、ふふ……あははっ!!」
『なんだァ? 諦めて頭がおかしくなっちまったのかァ!?』
「いや~、一つありました。勝てる方法が!!」
うなぴからの提案は、正直に言えばやりたくないものだ。昔これをやったら妹とお母さんにブチ切れられたし経験があるから。
まぁ妹はお父さんと海外出張中だし、お母さんは体質の影響で寝てるから大丈夫なはず! アンチューブだし見てないでしょ!
『下に着く前にぶち殺してやらァアア!!!!』
大きなロボットの拳が眼前に迫ってきている。
しかし、僕は上がった口角を下げることはない。片手でスマホを持ち、それを額に当てながらたった一言、こう呟いた。
「――変身」
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