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第68話

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 元々は愛知県最恐と言われていた心霊スポットの旧トンネル。そんなところと同化したダンジョンに三人で攻略しにきているんだけれど……。

「ゆうれい……こわい……! さくただっこしてぇ……」
「よしよし、大丈夫だよー」

 殺し屋で怖いもの知らずだったはずのルハは、今や僕に抱きついて泣きながらガタガタと震えている。
 クール系でカッコいい子なのかと思ってたけど、まさか幽霊にこんなに怖がるなんて……。

:ルハと言ったか、そこを代われ
:かわeeeee!!!
:イラつくぜ……この新キャラに憧れたんだ……!
:これがギャップ萌えというやつだな
:ヴッ!!!(尊タヒ)
:盛 り 上 が っ て き た
:サクたんママ俺にもヨシヨシしてくれ(迫真)
:↑消えろ害獣
:心霊スポットで何いちゃついてんだww
:これがサクたん配信の醍醐味だよなァ!

 僕の家だって結構古いし、夜だとだいぶ怖いはずだけどなんでそれは大丈夫だったんだろう?
 ルハを抱っこし、背中を優しくポンポンと叩きながらトンネル内を進んで行く。このトンネル内の天井の明かりは点滅を繰り返しているが、延々と奥まで続いている。

「実に軟弱ですわね。しかし……今ここで置いて行ったらどうなるか、ワタクシ気になりますわ!」
「うん、可哀想だからダメだよリリー」
「うっ、うぅぅう……。こわいぃ……」

 トンネル内部を歩き続けているが、どこからか気配や視線を感じる気がする。けど今のところ僕には何も見えていない。リリーも特に何も感じていないようだけれど、ルハだけはを明らかに目視出来ているようで、それを見ては怯えて僕を抱きしめる力が強くなっていた。

 あとで配信見直してみようかなー! すごいもの映ってたらどうしよう~。

「このダンジョンにいる魔物は目で見えないの?」
「見えないものが過半数ですわ。けれど、力が強い魔物だったり危害を加える際は見えるようになるとかなんとか……」

:え、じゃあコレ魔物なの……?
:後ろでダブルピースしてるやつらめっちゃおるで
:何もいないんだが?
:今んところ洞窟歩く配信だけどSAN値が削られてくぜェ……
:見えてるサク民と見えていないサク民で分かれてる模様w
:ちな見える人は何が見えてるん?
:サクたんをめちゃくちゃ愛でてる
:ふぁっ!?ww
:【朗報】サクたんの体質、幽霊にも通用するw
:まぁ一応魔物だしな。モノホンの幽霊はどうだか

 そのまま歩き続けること数分、洞窟の奥の方から不思議な声が聞こえてきた。

『……ポ、ポッ、ポ、ポ……』
「? 鳩でもいるのかなぁ?」

:あっ(察し)
:待てサクたん、一度止まれ
:多分大丈夫。だが俺たちの心の準備ができてねぇ!!!
:うちらのSAN値がズギュンドギュン(破壊)される
:アレが配信で映るの初では!?ww
:wktk

 何やらリスナーさんたちが盛り上がっているけれど、気にすることなく前進し続ける。
 するとそこには、白い服と帽子を被る大きな女性が立っていた。

「あ、こんにちはー! お姉さんもダンジョン攻略ですか?」
『ポ、ポポポ』
「なるほど。…………り、リスナーの皆さん助けてください! この人、のどっちなんでしょうか!!?」

 僕はカメラに向かって、小声でそう質問をした。

:ファーーwww
:サクたん、八尺様を知らない模様(笑)
:案の定同業者だと思ってら
:鳩語か機関車の真似をしてる人ってなんなんw
:草ァ!
:恐怖より笑いが勝る心スポ配信
:さすサク
:ってか八尺様かわいいんだが
:騙されるな。一応何十人も犠牲が出てるんやぞ
:八尺様。特殊な声帯で獲物をおびき出し、一度目をつけられたらダンジョン外まで追ってこれる特殊な魔物。尚、目をつけられた人以外はダンジョン外では目視できない。

「へー、魔物だったんだねぇ」
「ひぃ! さくたちかよらないでぇ! たすけてキラキラしてる人」
「テメェゴラオイ……。ワタクシのスカートに顔を突っ込むとは、コンクリで固めて海に沈められる覚悟があって?」

 ズンズンと八尺様に近づいていくが、怖がったルハは僕から離れてリリーのひらひらしているスカートの中に頭を突っ込んでいる。
 多分僕が連れてきた子じゃなかったら今にも言い放った言葉通りのことをしていたと思う。

「人型の魔物ってすごいね! 身長も高いし!」
『……ポッ♡』
「わっ、ちょっと急に持ち上げないでよ~」

 僕を抱っこしたかと思うと、肩に乗せて肩車してもらっている状態になった。どうやらこの状態で先に進もうとしてくれているらしい。

:おねショタキターーー!!
:素晴らしい! 私が望むおねショタが、今、目の前にある!!!
:怪異すらも手懐けやがったww
:サクたんは止まらないッ!
:っぱ八尺様は萌えキャラなんだね
:ルハちゃんは何してんのwww
:怖すぎて頭がおかしくなった
:リリーお嬢様バチギレ寸前で草
:ルハちゃんかわいい

「よ~し! それじゃあこのままレッツゴー!!」
『ポッポー!』
「全く、仕方ありませんね」
「ガタガタガタガタ……」

 八尺様をメンバーに引き入れ、さらにダンジョンの奥へと進むのであった。
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