29 / 65
連載
第64話
しおりを挟む
咲太らは作戦を練った後、後日にそれを実行することに決定して解散する。しかし、シャドウファングはすでに行動を開始していた。
さらなる情報投下はしていないが、牙狼は別の先制攻撃を仕掛ける……。
――プルルルルッ。プルルルルッ。
『こちらはD.U.S.T。ご用件は?』
「……俺だ、シャドウファングの牙狼だ。依頼を頼む」
『ほう……デリバリーですね? お目が高い』
「ちげぇよ! 殺しの依頼に決まってんだろ!!!」
〝神極の刀軍〟、略してD.U.S.T。この組織は、主に刀を使用する者たちが集う殺し屋だ。
裏社会では知らない者はいないほど有名な殺し屋だ。しかし、ボス・構成員・アジトなどの情報がほぼ出回っていないだけでなく、依頼成功率は八割を超えるという頭一つ抜けている組織である。
『死の配送ですよね、はいはいわかってますって。いつ、どこで、誰を殺してほしいか教えてください』
「今夜、さっき送った住所で、サクたん……藍堂咲太を殺してほしい」
『ふぅむ、今夜ですかぁ。いきなりすぎて困りますが、一人手が空いているので向かわせましょう。金が振込まれ次第任務を始めます。では、今後ともご贔屓に』
「あぁ。テメェらなら大丈夫だと思うが任せt」
――ブツン。ツーッ、ツーッ。
牙狼が話し終わる前に電話を切る。
プルプルと震えながらこめかみに血管を浮かべているが、一旦深呼吸をして自身を落ち着かせた。
「成功率と失敗率は五分五分とみたが、別にどちらに転んでも良い。せいぜい怯えとくんだなァ、藍堂咲太!!」
牙狼は高笑いをしながら奥の部屋へと戻っていく。
この先制攻撃が、後々己をの首を絞めることも知らずに……。
# # #
――深夜、愛知県某所にて。
「…………。配信を始める」
◆お、始まったな
◆待ちくたびれたぞ!
◆貴重な情報収集の時間よ~
◆殺し屋の配信キターー!
◆刀とクナイが武器の殺し屋は初めて見るゾ
◆失敗して捕まるに5万賭けるわw
◆↑じゃあ俺は花○院の魂をッ……
◆っぱDuntubeよりこっちのが刺激あるな
◆早く殺しに行こうよ
◆テンポ良くしろ
世間一般での動画配信サイトは主にDuntubeだ。しかし、闇に生きる者などの間ではこのUndertube、略して〝Untube〟が広く一般的になっていた。
配信者はもちろん、その配信を見ている九割は犯罪者たちだ。よって、常にコメント欄は殺気立っていたり荒れたりしている。
「藍堂咲太。それが今回のターゲット」
全身黒い外套で身を包み、フードを被る小柄な人物。腰には小太刀とクナイが備え付けてあり、殺気が見て取れる者だ。
これがこの配信主であり、咲太を殺害しようとしている殺し屋である。
◆誰?
◆巷で有名なサクたんじゃん!!ww
◆この子の懸賞金今えぐいよ
◆咲太って昔から体質で有名だよな……
◆捕まえたら幻獣も付いてくる超ハッピーセッツ!
◆これ失敗したら俺も行こうかなw
◆実はまだ誰もサクたん'sハウスに侵入できていないという偉業
◆ここのリスナーにわかしかおらん……
◆触らぬ神に祟りなしって知らないんだなぁ
殺し屋は手のひらを地面につけ、数秒集中した。そして次の瞬間目にも留まらぬスピードで駆け出し、塀を乗り越え、草むらを掻き分け、到着した。
悪意を持っている者は入れないようになっているこの空間をくぐり抜けてみせたのだ。
「ここが……」
表札に〝藍堂〟と書かれている大きな一軒家。
満月の夜。月明かりに照らされる一軒家はどこか威圧感があり、塀や屋根の上から見下ろすただの猫やカラスまでもが恐ろしく見える。
殺し屋とリスナーらを嘲笑うように、ミシミシと家鳴りが響き渡った。
◆うおおおおおおお!
◆マジで到着しやがったww
◆期待値上がるな~
◆な、なんかこのい怖いんですけど……
◆殺し屋より圧がある家ってなに?w
◆マジでここ化け物ハウスだからやめとけやめとけ
◆この殺し屋ならワンチャンあるか……?
◆いけるいけるww
◆殺した金で焼肉行こーぜ!
「……任務を開始する」
フードの奥から覗く桃色の瞳には、覚悟と若干の恐怖が混じっていた。
咲太の恐ろしさを何も知らないリスナーたちは咲太をナメており、殺し屋が簡単に任務を遂行できると考えている。
殺し屋も自分の腕には自信があり、いけるだろうと意気込んでいる。
――なぜ動物たちは殺し屋をスルーしているのか?
その疑問はすぐにわかることとなる。
そう……地獄が始まろうとしていた。
さらなる情報投下はしていないが、牙狼は別の先制攻撃を仕掛ける……。
――プルルルルッ。プルルルルッ。
『こちらはD.U.S.T。ご用件は?』
「……俺だ、シャドウファングの牙狼だ。依頼を頼む」
『ほう……デリバリーですね? お目が高い』
「ちげぇよ! 殺しの依頼に決まってんだろ!!!」
〝神極の刀軍〟、略してD.U.S.T。この組織は、主に刀を使用する者たちが集う殺し屋だ。
裏社会では知らない者はいないほど有名な殺し屋だ。しかし、ボス・構成員・アジトなどの情報がほぼ出回っていないだけでなく、依頼成功率は八割を超えるという頭一つ抜けている組織である。
『死の配送ですよね、はいはいわかってますって。いつ、どこで、誰を殺してほしいか教えてください』
「今夜、さっき送った住所で、サクたん……藍堂咲太を殺してほしい」
『ふぅむ、今夜ですかぁ。いきなりすぎて困りますが、一人手が空いているので向かわせましょう。金が振込まれ次第任務を始めます。では、今後ともご贔屓に』
「あぁ。テメェらなら大丈夫だと思うが任せt」
――ブツン。ツーッ、ツーッ。
牙狼が話し終わる前に電話を切る。
プルプルと震えながらこめかみに血管を浮かべているが、一旦深呼吸をして自身を落ち着かせた。
「成功率と失敗率は五分五分とみたが、別にどちらに転んでも良い。せいぜい怯えとくんだなァ、藍堂咲太!!」
牙狼は高笑いをしながら奥の部屋へと戻っていく。
この先制攻撃が、後々己をの首を絞めることも知らずに……。
# # #
――深夜、愛知県某所にて。
「…………。配信を始める」
◆お、始まったな
◆待ちくたびれたぞ!
◆貴重な情報収集の時間よ~
◆殺し屋の配信キターー!
◆刀とクナイが武器の殺し屋は初めて見るゾ
◆失敗して捕まるに5万賭けるわw
◆↑じゃあ俺は花○院の魂をッ……
◆っぱDuntubeよりこっちのが刺激あるな
◆早く殺しに行こうよ
◆テンポ良くしろ
世間一般での動画配信サイトは主にDuntubeだ。しかし、闇に生きる者などの間ではこのUndertube、略して〝Untube〟が広く一般的になっていた。
配信者はもちろん、その配信を見ている九割は犯罪者たちだ。よって、常にコメント欄は殺気立っていたり荒れたりしている。
「藍堂咲太。それが今回のターゲット」
全身黒い外套で身を包み、フードを被る小柄な人物。腰には小太刀とクナイが備え付けてあり、殺気が見て取れる者だ。
これがこの配信主であり、咲太を殺害しようとしている殺し屋である。
◆誰?
◆巷で有名なサクたんじゃん!!ww
◆この子の懸賞金今えぐいよ
◆咲太って昔から体質で有名だよな……
◆捕まえたら幻獣も付いてくる超ハッピーセッツ!
◆これ失敗したら俺も行こうかなw
◆実はまだ誰もサクたん'sハウスに侵入できていないという偉業
◆ここのリスナーにわかしかおらん……
◆触らぬ神に祟りなしって知らないんだなぁ
殺し屋は手のひらを地面につけ、数秒集中した。そして次の瞬間目にも留まらぬスピードで駆け出し、塀を乗り越え、草むらを掻き分け、到着した。
悪意を持っている者は入れないようになっているこの空間をくぐり抜けてみせたのだ。
「ここが……」
表札に〝藍堂〟と書かれている大きな一軒家。
満月の夜。月明かりに照らされる一軒家はどこか威圧感があり、塀や屋根の上から見下ろすただの猫やカラスまでもが恐ろしく見える。
殺し屋とリスナーらを嘲笑うように、ミシミシと家鳴りが響き渡った。
◆うおおおおおおお!
◆マジで到着しやがったww
◆期待値上がるな~
◆な、なんかこのい怖いんですけど……
◆殺し屋より圧がある家ってなに?w
◆マジでここ化け物ハウスだからやめとけやめとけ
◆この殺し屋ならワンチャンあるか……?
◆いけるいけるww
◆殺した金で焼肉行こーぜ!
「……任務を開始する」
フードの奥から覗く桃色の瞳には、覚悟と若干の恐怖が混じっていた。
咲太の恐ろしさを何も知らないリスナーたちは咲太をナメており、殺し屋が簡単に任務を遂行できると考えている。
殺し屋も自分の腕には自信があり、いけるだろうと意気込んでいる。
――なぜ動物たちは殺し屋をスルーしているのか?
その疑問はすぐにわかることとなる。
そう……地獄が始まろうとしていた。
866
お気に入りに追加
3,307
あなたにおすすめの小説
八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。