上 下
26 / 64
連載

第61話

しおりを挟む
:え……?
:今、なんて?
:草ァ!wwww
:【悲報】リリーお嬢様、他人のゲロ見て興奮するやべー女だったww
:放 送 事 故
:オイオイオイオイ
:盛り上がってきたーー!w

 一応凛理りりに配信をつけ忘れているというメールを送ったのだが、多分もう無駄だろう。

『え……は? な、何言ってるの……』
『何を言っている? それはそちらではなくって? 喋る暇があるならとっとと吐瀉物ぶち撒きあそばせ? さもなくば腹パンして吐かせますわ』
『や、やばい女だ……!!』

:魔物にやばいと言わせるお嬢様草
:おもしれーやべー女
:正体現したわね
:なwにwこwいwつw
:汚嬢様だった
:もう後戻りできないゾ♡
:~現在進行系でキャラ崩壊中~
:今北。お嬢様嘘だよな……?
:大マジなんだよなぁw

 ボキボキと指を鳴らし始める凛理に対して、彼女の理不尽さに驚きを隠せない人型の魔物。
 こうなったらもう止められないかなぁ……。

『本当にピンチなのですか? 先程は「魔物のに囚われて今にも吐きそうで」とかなんとかほざいていたのに……』
『ピンチよ! バカじゃないの!!?』
『あ゛? テメェぶち殺……いや、まだ勿体ですわね。えー、まず貴女の言葉暴力罪、ワタクシを騙した詐欺罪、ゲロ吐かなかった罪。そして魔物との共犯罪……っと』
『え、は?』
『えぇ、これでなんの心配もせずに現行犯にて粛清できますわね!』

 すると凛理はふりふりのスカートの中に、下から手を突っ込んで何かを取り出した。ガチャッという音を立てて構えた物は――だ。

:どういうことだよww
:言葉暴力罪ってなんやねん
:↑ゲロ吐かなかった罪の方がわけわかんねぇだろww
:ロケランきたー!
:リリーお嬢様は剣で凛々しく戦う……あれぇ???
:リリーお嬢様は4んだ。これからはリリー汚嬢様の時間だ
:野蛮お嬢様、参☆上!!
:このお嬢様こy
:どっから出した!?ww

『な、なんで魔物じゃなくて貴女に殺されそうになってるのよ!?』
『そりゃあ……ねぇ? ケジメつけなきゃいけませんよ。無様で間抜けな辞世の句が楽しみですわ~♪』
『誰かーー! 助けてーー!!!』

 悲痛な魔物の叫び声がダンジョン内に響き渡るが、自らで出口を塞いでいるためその声が他の探索者に届くことはない。
 罠に嵌めたと思っていただろうに、自らの首を絞めていることに今気がついたのだ。

『ひ、人の心はないんですか!!?』
『あぁん? そんなもんは犬畜生に食わしました。それで犬畜生の餓死を防いでみせましたの。ふふっ、正義のヒーローですわね!』
『正義のヒーローはワンちゃんのこと犬畜生って呼ばない気がするんですけど!?』

 凛理は満面の笑みでロケットランチャーを構え、片目を瞑った。

『うるせぇ口ですこと……。とっととロケランぶち込んで黙らせますわ。では、殺します』
『え、いやいや、待っ――』
『5!! 4!!』

 ――チュドォオオオオンッッ!!!!

 カウントダウンは意味が無く、ロケットランチャーが炸裂して魔物は跡形もなく消滅する。

『これは失敬、勘違いさせてしまったようですね。ワタクシ、ただ〝5〟と〝4〟が言いたかっただけですの』

:ファーーーwww
:カウントダウン「……???」
:5と4だけ言いたくなることある?w
:な に こ れ
:お嬢様やりやがったww
:聞く耳持たず
:イかれてんだろw
:粛清完了☆
:お嬢様と魔物、ハジけてるなぁ(片方は物理)
:だいぶ強い魔物だけどなんで一撃で倒せるんだよww
:さすが汚嬢様ですね!

 爆発で燃え広がる炎をケラケラと笑いながら見守る凛理。数分前に見せていた綺麗な姿は皆無で、今は狂気に満ちていた。
 やっぱり相変わらずだねぇ……。

『ま、どうしても許してほしいというのならば……そうですねぇ』

 破天荒なお嬢様キャラのリリー……本名――鬼蛇穴きさらぎ凛理。僕や涼牙の幼馴染であり、涼牙の許嫁と勝手に宣言している。
 さらには……。

『指詰めあそばせ♪』

 ――である。


 # # #


「ふぅ。塵芥に還元完了です」

 ワタクシに突っかかってきたやつをロケランで消し炭にしたあと、スカートにロケランを突っ込んで収納をした。
 もともと魔物だと気がついていたし、良い話し相手になった。

 ふと震えたスマホを手に取るとそこには、

 咲太:凛理、配信切り忘れてるよ
 マイダーリン涼牙♡(ピン留):配信切れてないぜ!

「…………えっ?」

 そんな文字が見える。
 フヨフヨと浮いている配信用カメラはジーッとこちらを見つめており、それが何を意味しているかは瞭然だった。

「やらかしてしまいましたね。うーん……ごきげんよ~!」

 ――チュドォオオオオンッッ!!!!

 配信用カメラにロケランを再びぶち込み、無理やり配信を終了させたのであった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元探索者のおじいちゃん〜孫にせがまれてダンジョン配信を始めたんじゃが、軟弱な若造を叱りつけたらバズりおったわい〜

伊藤ほほほ
ファンタジー
夏休み。それは、最愛の孫『麻奈』がやって来る至福の期間。 麻奈は小学二年生。ダンジョン配信なるものがクラスで流行っているらしい。 探索者がモンスターを倒す様子を見て盛り上がるのだとか。 「おじいちゃん、元探索者なんでしょ? ダンジョン配信してよ!」 孫にせがまれては断れない。元探索者の『工藤源二』は、三十年ぶりにダンジョンへと向かう。 「これがスライムの倒し方じゃ!」 現在の常識とは異なる源二のダンジョン攻略が、探索者業界に革命を巻き起こす。 たまたま出会った迷惑系配信者への説教が注目を集め、 インターネット掲示板が源二の話題で持ちきりになる。 自由奔放なおじいちゃんらしい人柄もあってか、様々な要因が積み重なり、チャンネル登録者数が初日で七万人を超えるほどの人気配信者となってしまう。 世間を騒がせるほどにバズってしまうのだった。 今日も源二は愛車の軽トラックを走らせ、ダンジョンへと向かう。

【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜

むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。 そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。 それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……? のんびりほのぼのとした現代スローライフです。 他サイトにも掲載中。

底辺ダンチューバーさん、お嬢様系アイドル配信者を助けたら大バズりしてしまう ~人類未踏の最難関ダンジョンも楽々攻略しちゃいます〜

サイダーボウイ
ファンタジー
日常にダンジョンが溶け込んで15年。 冥層を目指すガチ勢は消え去り、浅層階を周回しながらスパチャで小銭を稼ぐダンチューバーがトレンドとなった現在。 ひとりの新人配信者が注目されつつあった。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

元聖女だった少女は我が道を往く

春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。 彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。 「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。 その言葉は取り返しのつかない事態を招く。 でも、もうわたしには関係ない。 だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。 わたしが聖女となることもない。 ─── それは誓約だったから ☆これは聖女物ではありません ☆他社でも公開はじめました

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。