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第52話

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 〝殲滅穿角覇纏式せんめつせんかくはてんしき白阿修羅しろあしゅら〟。
 さっきの休憩中に、ネーミングセンスのある幼馴染の一人に考えておいてもらったのだ。思わず叫びたくなる名前をつけてもらってとても満足している。

:カッコいい†
:男の子はこういうのが大好きね~w
:ネーミングセンス良いなぁ……
:テンション上げてけよサク民ィ! これがこの層最後の殴り合いだーーッ!!!
:「サクたん無双」でゲーム発売しようぜww
:↑乗った。プログラミングは任せろ
:尚当の本人は戦わない模様w
:白阿修羅がかっこよすぎてまぢむり……♡

 成体のリヴァイアサンは体に水流を纏って防御を強めていた。だがそれは意味がない気がする。

『グガァアァ……!!!』
『ブモォオ!!!!』

 白阿修羅はドヴッと音を立て、地面にクレーターができるほどの威力で駆け出し、六本の腕でリヴァイアサンを殴り続ける。
 その打撃を全て纏う水流で弾いており、一見効果が無いように見えるが……。

「威力が強すぎたら……そりゃあ水流くらいなんか変えれるよね」
『ブモォオァアアアアア!!!!』
『ッ!!?』

 ――ドゴォォォン!!!

 質と量が圧倒的に上な白阿修羅の攻撃ゆえに、リヴァイアサンが纏う水流が変わり、その一瞬で拳を叩き込む。
 たった一撃で後方に吹き飛び、胴体に風穴が空いていた。

『グゴァ……!!』
『!』

 リヴァイアサンがしぶとく次の動きを見せた途端、白阿修羅は僕に駆け寄ってくる。
 どうやら広範囲に及ぶ水流の攻撃を仕掛けてきたみたいで、このままだと僕も巻き込まれかねないから助けに来てくれたらしい。

 無数の水流が全方位から来るが、白阿修羅は拳を構え、六つの拳でそれをはじき返し始める。

『ブモブモブモブモブモォォ!!!!』

 ――ドパパパパパパパパパパァン!!!!

:オラオララッシュwww
:水流全部拳で防いでるうううう!?!?
:うぉおおおおおお!
:頑張れ白阿修羅ァーー!!!
:これにはスター○ラチナもニッコリ
:ステゴロ最強すぎww
:拳で抵抗してて草
:フ ィ ジ カ ○ ギ フ テ ッ ド

 全ての水流を拳で殴って防ぎ続けると、水流が弱くなり始めた。
 しかしリヴァイアサンはこの間、水をチャージし続けていたようで、次の瞬間に口から超高圧洗浄機のような水のビームを放ってくる。

「危なっ!」

 白阿修羅が防ぎに入り装甲で耐えるが、雨垂れ石を穿つ。長く受け続けていたら、流石に自慢の装甲でも突破されてしまうだろう。

『……!!!』

 ――ボッッ!!!!

『ガ……ァ……?』

 防御を続けていたように見えた白阿修羅だったが、余っていた他の腕が勢いよく発射され、リヴァイアサンの頭を鷲掴みにしていた。
 考える隙を与えず、リヴァイアサンを宙に放り投げる。そして、その落下先は――白阿修羅一直線だ。

 腰を据え、拳を構え、ありったけをぶつける。

『ブモォオオオオォォオオオーーッッ!!!!!』

 ――ズドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 目にも留まらぬ速さの連撃が繰り出され、リヴァイアサンの肉体はみるみるミンチになってゆく。
 重い一撃を最後に喰らわせて天井まで吹き飛ばしたのだが、殺意が高い白阿修羅は頭のツノを最後に射出させ、完全に命を奪い取ってみせた。

:やべぇてぇええええええ!
:WRYYYYYYーー!!!!
:アリーヴェ帰るチ(さよなラ○オン)
:オーバーキルwww
:くっそ速ぇラッシュ、リアルでできんのかよ……(ドン引き)
:な~に~!? 深層3階ボスもやっちまったなァ!
:えぐいってw
:サクタンを崇めなければ……(英語)
:私たちの国がこれに襲撃されたら終わりだねw(英語)

「ううーん……二人ともごめんね、あの魔物が弱すぎて全然楽しめなかったよね」
『ブモッ』

:サクたん「深層三階ボスは雑魚!」
:そうか? そうだなぁ……そうかもなァ!(洗脳済み)
:今なら勝てる気がしてきた。行ってくるぜ☆
:↑おう。逝ってくるニキはちゃんと成仏してくれよな
:まだ全然真価発揮できてないっぽかったしなぁ……
:白阿修羅さいきょ~!!!
:今のうちにサクたんへの供物バナナ集めとけ

 深層三階ボス・メタモルリヴァイアサン――撃破。


###


 ――同時刻、深層六階隠し部屋にて。

「…………。あ、あの……三階のボスであるメタモルリヴァイアサンが討伐されたんすけど……」
「あぁ、知ってる。……なんだあの化け物を召喚する化け物はァ!!! めちゃくちゃ怖すぎんだろ!!! おしっこ漏れりゅううう!!!!」
「先輩のクールキャラがぶっ壊れてるっす!!」

 人工的に大氾濫スタンピードを起こした二人組は、隠し部屋で待機しながら上の状況を把握していた。
 もちろん、無双する咲太も見ている。

「このままだと、この調子でどんどん突破されちまうっすよ!?」
「……仕方ねェ。ぞ……」
「い゛っ!? で、でもそれじゃあ俺たちは……」
「作戦が失敗すればどうせ俺たちは消される。それなら……こっちに賭けたほうが良い……!!!」

 一か八かの大博打だった。
 だがこの決断は、最終的に咲太を追い詰めることになる……。
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