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第49話

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 ダイダラボッチのヤマトですら入りきるほど巨大な空間で、機械のゴーレムと対峙をする。
 ヤマトの足元からはすでに植物が生い茂り始めており、人工物と自然物の境界が曖昧になり始めていた。

:うぉおおおおおおおおおおおお!!!!
:デカすぎんだろ……(2匹目)
:ゴ○ラ対メカ○ジラかよww
:叡智の結晶vs自然の憤怒
:蟻ん子視点だなw
:サクたん最強! サクたん最強!
:当たり前のように幻獣を呼び出せるのイかれてるwwチャンネル登録したわ
:うぉー! ジャパニーズヨウカイだね!?(英語)
:これは偽動画だ。そ、そうに決まってる……(英語)
翻訳マン:↑残念だが全て生配信で加工ゼロだぞ(英語)
:日本はいつからこんな化け物を量産するようになったんだ……(英語)

 ――ギ、ギギギ……ゴォッ!!!

 そうこうしているうちに、ゴーレムとヤマトはお互い拳を握り、それを振るってぶつけ合う。轟音が鳴り響き、その一振りだけで突風がこの空間に吹き荒れた。

「うわぁぁあ!!?」

 油断したら吹き飛ばされそうになるほどで、物陰で見ているのが精一杯だ。
 一緒に来ていたドラゴン達やゴーレム達はこの一撃で吹き飛ばされてしまい、ほとんど素材へと変化してしまう。

『ゴゴゴ、ギギゴゴ……!!!』
『……!!』

 一撃一撃でダンジョンが揺れるほどの殴り合いをしていたのだが、ゴーレムが違う行動を見せた。
 背中に積んでいた機械の一つから、ミサイルを発射してきていたのだ。

:敵だけど格好良いなこいつ……
:クソデカロボからミサイルとか、嫌いな男子はいないんだよねw
:6○1、仕事の時間だ。
:山じゃないから祟りが発動しないんか!
:あれ……普通にピンチですか?
:根性見せぇ大妖怪ィ!!

 ヤマトは何十発と放たれたミサイルをもろに直撃し、少し後退する。その隙を見逃すことなく追撃を仕掛けようとさらにミサイルを発射し、殴りかかろうとしたのだが……。
 ギチギチと音を立てて体が言うことを聞いていない様子だ。体の隙間から、それが絡まって動きが鈍くなる。

 ヤマトは山の神であるダイダラボッチ。それ故に、木々の成長を促すことができるのだ。体に付着していた苗木を殴ると同時に相手に付着させ、それを急成長させて動きを止めてみせた。

「ヤマトー! 今がチャンスだよーー!!!」
『!!!!』

 ――ゴヴッ……ドゴォォォンッ!!!!

 僕の掛け声でヤマトは再び拳を握りしめ、ゴーレムの腹部に現れた輝く球体めがけて腕を振るい、そのまま地面に叩きつける。

:超 大 型 バ ト ル
:ガチでやりやがったwww
:深層二階のボスまで倒したマ???
:サクたん、地上波テレビも独占しておりますw
:快挙だろこれ!!?
:こ~れ最速のクリアですw
:サクたん怖ぁ……
:今日から日本への見方を変える必要があるみたいだね……(英語)
:↑ノーノー。サクたんを敬うのが正解だよ(英語)
:私たちも叫ぼう。バナナサイコー!(英語)
:ヤマトの勝ちだ
:↑あっ……
:サクたん待て! !!!

「形態、変化……?」

 パァッとした笑顔で喜びを分かち合おうとコメント欄に目を向けたのだが、不穏な四文字が目に入った。
 その不安がやってきたぞと言わんばかりに、倒れたゴーレムの方からガチャガチャと物音が鳴り始め、ついには炎が燃え盛る。

 勢いよく立ち上がった姿は、先ほどとはまるで違う状態だった。腕が六本に増え、体からは炎が燃え盛り、頭は特殊な形に変形している。

「え……か、カッコいい!!!」
『……!?』

:一般人「う、嘘だろ……」サクたん「か、かっこいい!」←www
:さすサク
:深層配信とは思えない発言だぁ……
:ヤマト君も思わずサクたん二度見してて草
:男のロマンだから仕方ないじゃんね?
:なぜ彼は目を輝かせているんだい……?(英語)
:サクタンはイかれてるよww(英語)
:ってかこの形態はなんなんや?
:形態の名前だけはシャドウファングが情報売ってたな。えっと確か――

 ――〝壊滅炎殻機械式かいめつえんかくきかいしき擬似阿修羅ぎじあしゅら〟。

『ガガガガガッッ!!!!』

 腕が三倍の本数というアドバンテージ、さらに炎を纏ったことによって樹木の影響を完全消去、さらに単純なスピードとパワーアップ……!
 ヤマトもかろうじて食いつき、腕を引っこ抜くなどをしているのだが、すぐに新たな腕を生成して無意味と化す。攻勢だったヤマトが押され始めてしまう。

:やばいやばいやばい!
:もういい、ヤマト戻れ!
:クソゲーじゃねぇかよww
:戦略的撤退してもこれは誰も憎まんぞ
:サクたんコメ欄見てる……?

「…………。いや、なんとなくわかったかも」

 リュックからを取り出し、それを近くに落ちていた何十個ものゴーレム達の素材にくくりつけ始める。

「多分あのゴーレムの、本当の弱点はです! あの巨体を維持するための回路が詰まってるんだと思います。さっきのお腹の球は、わざとそこに殴らせるためのブラフ!」

 ゴーレムの体に纏われている機械やらスクラップやらは適当だのに、頭だけが妙に凝ったデザインをしているのも違和感だったしね。

:え、そうなん?
:シャドウファング「……」
:仮に本当だったら、シャドウファングの損失額だいぶ上がるぞwww
:シャドウファングざまァwwww
:あ^~飯うま~☆
:でもどうすんだよ!?

「ドラゴン君、お願いしてもいいかな?」
『……グルァ♪』
「うん、良い子だね。じゃあ行こっか!」

 僕を飛んでくる瓦礫から翼で防いでくれてきたこのレッドドラゴンにお願いをし、体に糸をくくりつけて、僕は背中に飛び乗る。
 遥か数百メートルの頭、そのさらに上を目指して飛翔した。

 ゴーレムはこちらにミサイルを飛ばしてくるが、生き生きとしているドラゴン君が全弾避けてくれる。
 どうやら一番の脅威はヤマトと認識していて、こちらにリソースはあまり割いていないらしい。

「まぁでも、その判断が間違ってるんだけどねぇ!」

 弱点の遥か頭上に到着する。
 ドラゴン一匹体当たりくらいなら耐えられると思っているのだろう。けど、

、みんな!!!」

 糸がに輝き、光に包まれる。そして光の中から、何十台ものゴーレムが天から降り注ぐ。

 ――ドンッ! ドガゴゴゴゴッッ!!!

 素材に括り付けていた糸は黄泉蜘蛛ヨミグモの糸だった。糸を握りながら念じたら、僕でも蘇りの効果が発揮されるということがわかっていたから使えたのだ。
 頭上からのあり得ない衝撃。IQが高いこのゴーレムならこちらを見て警戒するだろう。けど、その一瞬でいい。

「今度こそは、決めちゃってね」
『――――ッ!!!!』

 ――ドッッゴォオオオオオオオオオオンッッ!!!!

 ヤマトの渾身の一撃がゴーレムの顔面に直撃し、今度こそ行動を停止して素材へと変化した。

:は、
:ははっ
:探索者……やめよっかな
:強すぎるだろww
:うわぁぁああああああ!!!!
:勝ったあああああ!
:やっぱ魔王じゃねぇか!?!?w
:【¥50000】第二層お疲れ代
:【¥10000】もう止められねェよwww
:頭も良いのズルいなぁw
:【¥25000】心配して損したよ。GG!!

 深層二階ボス・ゴーレム・エクス・マキナ――撃破。
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