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第47話

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 地上に侵攻していた魔物たちはほぼ全滅し、あとは僕の声がきちんと届く子たちだけなので、一旦落ち着いたと言えるだろう。

:やwりwやwがwっwたw
:世界で怒らせてはならない人にランクインッ!
:もうサクたんだけで解決できるやろw
:いや、でも波があるからなぁ……
:大氾濫スタンピード中ダンジョン内にある〝ネオダンジョンコア〟を破壊しなきゃ、そのコアの魔力がなくなんない限り侵攻してくるぞ
:耐久戦になるってことか……

 何やら勘違いをしているリスナーさんだが、いい話を聞けた。今回のスタンピードは深層第七階からと聞いたし、そこにネオダンジョンコアというものがあるのだろう。
 僕は歩みを進め、ダンジョン内に入る。

:ちょ、サクたん!!?
:危ないから戻りなさい!
:行くつもりなら止めるぞ
:深層からの大氾濫スタンピードはマジでやばいからな?
:無理しないで( ;  ; )

「……本当にやばくなったら引き返します。黙って指くわえて見てるのとか無理なので。それに、僕は絶対死なないのでだいじょ~ぶです!!」

 カメラに向かってピースをし、さらにダンジョンの中へ入っていく。
 決して楽観的に考えているわけではない。舐めてダンジョン内に入るわけではないし、いざとなったら戦線離脱するつもりだ。

:分かった。サクたんを信じるぜ
:深層配信者とかいないからガチでやばいぞw
:これから映るもの全てがクッソ価値あるものになるかもな
:シャドウファングは何してんだよ!!!
:配信は止めないみたいやな

 カメラも流石に止めようと思ったが、いかんせんダンジョンや魔物にまだそこまで詳しくないので、リスナーさんたちに教えてもらいながら進むことにした。

「おぉ……おっきい穴が空いてますね!」

 地面にはポッカリと穴が空いており、底が見えないほど奥深くまで筒抜けになっているようだった。

「さて……それじゃあ止めに行こっか。リスナーさんたち、僕だけじゃきっと勝てません。なので力を貸してください!」

:心配だけど、ゔー……わ゛か゛っ゛た゛!!!!
:情報伝達と収集なら俺らに任せろ
:サク民で愛知県救うぞオラァ!
:なんとかなれぇえええ!!
:止めてもいくんでしょ? なら、全力で信じる
:止めるやつはうるせェ! 行こう!(ドンッ)

「それじゃあ――レッツゴー!!!」

 大氾濫スタンピードを止めるべく、底が見えない大穴に向かってピョンっと飛び込んだ。


###


「…………勢いで飛び込んだんですけど、落下耐性とかないから普通に死んじゃいます! みんな助けてぇ~~っ!!?」

:何やってんだお前ェ!!!!ww
:台 無 し
:これこそサクたんクオリティーだw
:どんだけ落ち続けるんだよ!?
:ふっか
:ドドドドドウスル!!?
:緩衝海豹カンショウアザラシで衝撃吸収せい!

 落ち続けて浮遊感がくどくなるが、本当に死にそうなのでリスナーさんたちに助けを求めた。

「あ、アザラシちゃん! わかりました!!」

 右腕に力を込め、鍵を生成した瞬間だった。一気に視界が広がり、とてつもなく大きな空間と地面が見えてくる。
 そしてそこには、巨大で真っ赤な鱗を持つトカゲ……ではなく、ドラゴンが

「っ!? 来て! ――〝緩衝海豹カンショウアザラシ〟!!」

 ――ゴォォォォッッ!!!

 ドラゴンの口からは豪炎が放たれ、一瞬にして僕は炎に包まれる。

「――……ぷはっ!! 死ぬかと思った……」

 呼び出したアザラシちゃんは、炎がやってくる直前に大きな体で僕を包み込み、炎と落下の衝撃を吸収した。
 ……間一髪で回避したけれど、出鼻を挫かれるかと思った。

『グルルルル……』
「初配信で会った子と似てますね……?」

:それは〝エンシェントレッドドラゴン〟だぞ!
:レッドドラゴンの上位互換で、火力とか鱗の硬さが桁違いだったはず
:確かこのダンジョンだったら、深層一階のボスだったくね!?
:落ちすぎで草
:ショートカットだね、ヤッター()
:相当強いぞこのドラゴン……
:どうするサクたん

 水を使う……それとも氷かな……。いや、だったら大丈夫かな。

「あの子相手には考えるのやめます。をします!」

:え?
:歯?
:ぱ、パードゥン……?
:【悲報】サクたんは、考えるのをやめた
:何しでかすつもりだww
:切り抜き隊、準備完了でありまする
:鱗はダイヤモンドより硬いらしいぞ! よしておくんだましっ!

 右腕に力を込め、新たな幻獣を呼び出す。

「おいで。――〝赫岩龍カクガンリュウ・グラン〟」
『グルルァア……!!!』

 グランを呼び出し、周囲の気温はさらにぐんっと上がった。お互い睨み合い、相手の様子を伺っているようだ。

『『――――ッ!!!!』』

 だがついに、ドラゴンは再び口を大きく開けて炎を放つ。グランも負けじと炎を放ち、お互い譲り合わない状況になった。

:熱つつつつつ!!!!
:見てるだけで熱いわww
:緩衝海豹に包まれるサクたん可愛い……
:家で見てて動いてないのに熱いよ~!
:でもこのまま粘り勝つつもりか?
:そう見えるな
:文字通りに火力勝負かww

「みんなグランの説明覚えてないですね~。あれは前座みたいなものですよ?」

 赫岩龍。自身の体に生成される溶岩を体温で溶かし、それを放つ幻獣。だが、周囲の気温が異常なほど高ければ、その過程を大幅にスキップできる!

「グラン! やっちゃって!!!」

 ――ゴゴゴゴ……ゴォォオオオオオッッ!!!!

『ガ、ァア!!!?』

 尻尾の先端が紅く輝くと、どんどんその輝きが伝達していき、とうとう口元まで迫る。そして、一瞬口を閉じて溜め、マグマのビームを放ち始めた。
 たじろぐドラゴンだが、炎よりもマグマの威力が強い。マグマのビームは時間が経つにつれて一回り、二回りと、どんどん太くなって威力が増す。

 そしてとうとうドラゴンの炎は消え失せ、マグマの海に浸されたドラゴンは爆発四散した。

:…………
:…………
:…………
:…………

「やった、倒しましたよ! ……あ、あれ? コメントが流れてない……もしかして壊れちゃった!?」

 コメント欄が微動だにしなくなってしまった。熱さで壊れてしまったのだろうかと考えていると、息を吹き返したかのようにドバッと流れ始める。

:やべええええええええええwwww
:熱すぎぃ!
:炎耐性あるレッドドラゴンを熱で溶かしやがったww
:それに耐えるアザラシちゃんも大概
:サクたんとこのカメラはアザラシちゃんのおかげで守られた……
:幻獣えぐぅw
:【¥50000】GG……とは言えないほど一方的でしたわ~!w
:【¥25000】サクたんには攻略無理とか思ってすみませんでしたorz
:なんだァこの化け物w

「よし、それじゃあこの調子で進んでいきます!!!」

 グランは鍵で家に戻し、先へと進む。

 深層一階ボス・エンシェントレッドドラゴン――撃破。
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