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第41話

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 僕はユニコーンのユンちゃんに体を元に戻してもらったが、なぜか駆動さんはまだ戻してもらっていない。悪戯好きなのは可愛いけど、ほどほどにと念を押しておいた。
 場所を移して庭へと移動する。

「む、家の庭はこんなに開けておったかのう?」
「この家ダンジョンと同化してるから、多分この庭もダンジョンの中だと思う」

:ダンジョンと同化ってなんですかww
:初耳だぞ!w
:まぁダンジョンと同化してないとあんなでかい生き物連れて帰れんか
:誰も攻略できないだろうなぁ……
:牛かと思ったらベヒーモスが歩いてる庭ww
:黄泉蜘蛛のワタガシちゃんも寝てるな
:桜の木に登ってる推し(ハナちゃん)を見逃さなかったぞッ!
:幻 獣 ハ ウ ス
:やーい。お前ん家ー、幻獣やーしきーwww
:こりゃ生きて帰れませんわw

 この庭は山や林、雑木林などがあるゾーンなので、そこに住む生き物たちを飼育している。山で暮らす獣や昆虫などだ。ベヒーモスや餅月兎、他にも沢山いる。
 そうこうしているうちに、色んなペットたちが僕を見つけて近寄ってきた。

 とりあえずクロコには一匹ずつ紹介してもらうことにした。まずは、全身が青々しい緑の葉っぱで覆われたシカから。

「これは〝四季色鹿ヨツイロジカ〟。肉体はなく、木の枝が集まって形を成している鹿じゃ。その枝は花、青葉、紅葉、落ち葉など、四季折々の姿を見せるぞ!」
「なんかこいつの周りクソ熱くねぇか……?」
「うむ。青葉は灼熱の夏の陽気、落ち葉は極寒の冬の空気に変えるからのう」
「妙に暑かったり寒かったりしたのそれのせいだったんだね……」

:本人が把握していない定期
:サクたんだしね……w
:気にしたら負けだ!
:可愛いなぁ
:この子なら飼えそう
:↑オメーが飼えても鹿は嫌がるぜ。失せな
:(´;ω;`)<うおーん

 葉っぱの頭を撫でていると、パタパタと鱗粉を振りまきながら僕の頭に一匹の蝶がとまった。
 大型犬くらいの大きさをしている虹色の蝶だ。

「クロコー、この子は?」
「〝虹揚羽ニジアゲハ〟。鱗粉が目に入ると知覚が活性化し、共感覚の状態となるぞ。じゃが、口のストローを突き刺されると〝色〟を吸われて植物状態となるから要注意じゃ!」

:綺麗ー……って怖ッ!?!?
:色を吸われるってなんすかww
:幻獣だもん
:個性を奪うってこと?
:麻痺してたけど幻獣って怖いんよな……

「あ゛ー……サクたん、調査として来たからまぁ……この庭で一番強いやつが見てぇ」
「一番強い? うーん……」

 駆動さんがそんなことを言ってきて、少し考え込む。
 この庭で一番強そうなペットかぁ……うーん、誰だろうかな。あ、やっぱかな!

「おいでー! !!!」

 そう叫ぶと、地響きがすると同時に一つの山が立ち上がり、さらに地面から何かが飛び出してきた。
 山がそのまま人型となったような生き物と、超巨大なムカデだ。

「クソデケェな……」
「何回見てもおっきいね~」
「ふむ……。〝大太法師ダイダラボッチ〟と〝万里百足バンリムカデ〟か……!! 忌々しき因縁の相手は既に懐柔されておったようじゃのう」

 ヤマト……もといダイダラボッチの存在は知っていたが、幻獣だというのは知らずにここで飼育していた。

「〝大太法師ダイダラボッチ〟は山の神であり、山で不敬を働いた者を祟ることができる。そして……〝万里百足バンリムカデ〟。ふっ、ただのデカいムカデじゃな~」
『グァアア……!!!』
「お? なんじゃなんじゃ、久々にってもよいのじゃぞ?」

:デカァアアアイ! 説明不要ッ!!!
:っぱデカいは正義なんだよなぁw
:なんつーバケモンを飼育してんだww
:大妖怪二匹揃ってる……
:だ、大丈夫だ、問題ない。顎のストックはまだある
:黒狐たんと訳ありか?
:仲悪そうw

 ムカデのムーとクロコがバチバチと火花を散らしているけれど、昔に何かあったのだろうか……?
 チラッと駆動さんを見ると、僕の顔を見て一度頷いて踵を返す。

「確認した。そんじゃあ、めんどいからあと2箇所くらい確認したら終いにするかぁ……」
「はーい。来てくれてありがとねー! また来るから!」
「ふんっ。今日のとこは闘わずに済んだようじゃな」
『…………』

 終始ムーとは仲が悪そうで睨み合っていたが、ダイダラボッチのヤマトは大きい手を振り返してくれた。

 再びリビングに戻り、次なる場所に移動するべく冷蔵庫の前に立つ。

:サクたんどうしたん?
:飲み物か?
:サクたんの冷蔵庫の中見たいナ!
:↑おじさん帰ってください
:移動するんじゃなかったんかいな

 僕の冷蔵庫は、下の段が冷凍室

「防寒対策したし……それじゃ、レッツゴー!」

 ピョンっとジャンプし、引き出した冷凍室に飛び込む。足元だけ入る……ということはなく、全身がすっぽり入って氷雪ゾーンに移動した。

「冷蔵庫まで亜空間にするとはやるのう~! とうっ!」
「……クソが、胸がつっかえて入れねぇ……。おいクソ馬、とっとと元の体に戻しやがれ」
『ブルルル~♪』
「うぜぇ……」

:冷蔵庫に入ってったwww
:とんでもハウスで草
:どうなってんだよサクたんの家!!?
:わァ、冷凍庫にたくさん入れられるねー()
:顎のストック切れた。誰かよこせ
:駆動ちゃんさっきからエッなのやめてくれ
:助かる!(迫真)
:ユニコーンまじでありがとう
:ずっとそのままでいてくれw
:美しい、これ以上の芸術作品は存在し得ないでしょう……

 駆動さんが全く降りてこないけど、何してるんだろうか……。
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