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第40話

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 不思議なことに、なぜか土曜日の記憶がないまま日曜日を迎える。
 涼牙りょうが天宮城うぐしろさん曰く、僕は悪い人たちに誘拐されかけていたらしい。この体質は昔から結構目立っていたし、人も引き寄せる。だから拉致とか何回かされてるし、今更驚くことはない。
 それと、海の幻獣も追加で二匹仲間にできたので嬉しかったが、大きなサメは幻獣でも魔物でもなかったから連れて帰れなかった。

 日曜日に今度こそ天宮城さんと東京観光をしたが、ずっと僕にひっついて行動していたため目立ったし、暑苦しかった。

 ――そして東京に行った数日後の放課後。
 駆動さんが僕の家にやってきて、家の調査(?)とやらをしに来た。

「チクショウ……どんだけ入り組んだ場所にあんだよ……。しかも人っ子一人いねぇ山の中だしよぉ……」
「え? ただの一本道ですよ?」
「はぁ? ……あー……これも幻獣ねぇ……」
「???」
『なーお』

 白い毛に青い斑点がある飼い猫がテシテシと配信用カメラをつついており、それで僕の目的が思い出される。

「駆動さん、もう配信とかしても大丈夫ですか?」
「あぁ、構わねぇが……俺は配信について知らんぞ。幻獣も全部は解説できねぇ」
「――そこは儂に任せるのじゃっ!」
「お願いね、!」

 たまたま遊びにきていたクロコもお家配信に出てもらい、幻獣について説明してもらうことになっている。天宮城さんは用事があってこれなかったが、心底悔しそうにしていた。
 早速カメラを起動させ、配信をスタートさせる。

「みんなこんばんは~! 今日はお家でペットたちの紹介配信しまーす」

:こんばんサクたん!
:待 っ て た
:久々に感じるよー
:ぬっこ可愛いw
:お家配信ってマ!?!?
:グヘヘ……♡
:↑ギルティ、コンフィスケーション、デス・ペナルティ!!!
:助かるw
:黒狐たんもおるやんけ!
:ま~た知らん男がおるな
:でもクソイケメンで草
:身長高ッ! 足長ッ! 面良ッ!
:幻獣誑しと女誑しが揃っちまったか~?w

「久々じゃのう~、黒狐じゃ! ……ほれ、お主も挨拶くらいせんか」
「あー……WDO日本支部トップ、駆動ゼロ……。今日はサクたんの家と幻獣の調査で来た……。クソだるい……」

 クロコに肘を当てられ、気怠そうに自己紹介する駆動さん。リスナーさんたちは驚きを隠せていない様子だった。

:日本のトップ!!?w
:はい。早速やらかしww
:【定期】サクたんだから
:さすさく
:Xランクの次は最速の男とコラボっすか……
:なんだァこの配信、可愛いとイケメンしかいねぇなw
:駆動さんにダンジョンRTA配信してほしい
:お前ら顎を外すのは早いぞッ!ww

 挨拶も無事に終わったので、早速家の中を紹介することにした。

「まずここはリビングです! めちゃくちゃ広くて、暖炉とかソファがあります! あとペットたちが歩き回ってます」

:天井たっか!w
:天咬蛇のシラハちゃん、突っ張り棒に巻き付いてて草
:暖炉ある家ってすごいな……
:幻獣が徘徊するリビング
:不法侵入したら生きて帰れなさそうww

『なぉーん』
「あっ、この子はシズクです! 水玉模様が可愛いですよね?」

 足にすり寄ってきた先ほどの猫……もとい、シズクを抱っこすると、にょーんと体が伸び始める。
 しかし、僕の頭上まで持ち上げても

:ファッ!?!?
:伸びすぎ伸びすぎwww
:なんやこのぬっこ!
:サクたんの身長超えるくらい伸びてる……
:チーズみてぇww
:もしかして幻獣ですか……?w

「うむ! この猫は〝水猫ミズネコ〟という幻獣じゃな。体を無限に伸ばせられる上に、自身が液体となって移動できるぞ。湿度が高いところじゃと完全に姿を消せるじゃろう」
「すげぇネコだが名前が適当な気がすんな……」
『みゃう』

:【速報】猫は水だった
:長年の論争に終止符が打たれた……
:幻獣だからな?w
:普通のネコでも水だろ。大概二世よ!
:可愛いは正義なんだねぇ
:ステルス性能えぐぅw

 シズクを床に下ろすと、長く伸びた体のままソファに向かい、ゴロンと転がって眠り始める。
 その一部始終を遠くから見ていた子が、こちらに興味を示し始めて近づいてきた。ピンク色の体に一本のツノを生やす馬だ。

「この子は妹命名のユンちゃんです!」
「言わずと知れた一角馬ユニコーンじゃな。ツノを削った粉を飲めば万病に効くが、触れると――」
『ブルルッ』
「あ?」

 クロコが説明してる最中、ユンちゃんが駆動さんにツノを押し当てている。すると駆動さんからポンッと音がなり、煙が上がった。

「あぁ……? んだこれ……」

 煙が晴れるとそこには、高身長でツヤツヤの長い黒髪を持つお姉さんが現れる。

「このようにじゃな、ツノに触れられると性転換する。悪戯好きじゃから気をつけるべきじゃぞ」
「カッコいいお姉さんになりましたね!」
「どーでもいいけど戻してくんねぇか……。胸が苦しい」

:エッ!!!!!
:エチチチチチチ
:ダウナー巨○お姉さんとか……うッ!
:ド級のストライク、ドストライクだ!!!
:無限にTSっ娘が生産できるな~!ww
:元男でいい、結婚してくれ(土下座)
:サクたんがTSしたらどうなるんだ……?

 リスナーさんの一つの疑問を察知でもしたのか、ユンちゃんは僕に近づいてツノを当ててきた。
 ポンッと音を立てて煙に巻かれるが、現れたのは……。

:……え?
:変わって、ない
:美少女(♂)→美少女(♀)
:見た目変わってなくてクソワロタwww
:だって元が完成形だもん(笑)
:可愛いよサクたん~~!w

「変わってないのう」
「変わってねぇな」
「変わってないですね」

 僕は性転換されようが、容姿は何も変わらないらしい。
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