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第28話

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 ――キーンコーンカーンコーン

「うへぇ……やっと終わった……」

 クロコと一緒に龍を捕まえた配信の翌日、僕は高校での授業で疲れ果てて机に突っ伏していた。
 いかんせん今日は授業が長かったし疲れた。帰ったらすぐにご飯の料理をしないとなー……。

「咲太ー、帰ろうぜー!」
「わかったー」

 涼牙《りょうが》に呼ばれ、リュックを背負って下校を始める。

「今日は配信すんのか?」
「うーん……。今日は夜ご飯の準備とかしないといけないからナシかなぁ……」
「そうか。……あ、だったらよ、!!?」
「え?」

 涼牙によると、食材をドロップする魔物しかいないEランクダンジョンが近くにあるらしい。しかも、包丁やらまな板を提供してくれるんだとか。
 確かにそれだったらダンジョン配信になるし、夜ご飯も作れて一石二鳥だから早速やってみようかなぁ。

 そう思った僕は帰宅後、配信用カメラを持って涼牙に言われたダンジョンまで向かった。
 ダンジョンの中は至って平凡な洞窟のようなもので、特に変わったものはないダンジョンだ。

「よし、じゃあもう始めよ!」

 ボタンを押し、早速配信をスタートさせた。

「こんばんは、今日は一人です! 晩御飯作りまーす」

:圧 倒 的 情 報 不 足
:急展開すぎるなおいww
:こんばんサクたん!
:もう夜みたいなもんだしな
:サクたんの手料理……だと……!?
:ジュルリ
:↑通報……するにはまだ変態度が足りねェ
:食料庫の迷宮ダンジョンか。テンション上がるな~

 ここのダンジョンを管理している人から調理器具は貸し出してくれたので、手ぶらで来ても問題なかった。
 ダンジョン内にいる魔物を倒し、貸してもらった器具で素材を調理していく感じだ。

「今日作るのは野菜炒めとかでいいかなー」

:いいね
:待ち切ねぇよ!
:あれ? でもそれって……
:サクたんの天敵入るくね?w
:しかもこのダンジョンにいるよね
:サクたん大ピンチで草

 何やらコメント欄がざわついている気がするが、一旦必要な食材を頭の中で整理し始める。
 まずはメインの豚肉。野菜はキャベツ、にんじん、もやし、玉ねぎかな。あとはお米くらい。……緑の悪魔は入れるつもりない……。

「じゃあ早速具材集めして――……って、なんかもう集まってますね」

 奥に進んで食材を探そうと思っていたのだが、もうすでに魔物たちが集まっていた。
 馬の形をした人参や、尺取り虫のように動くもやし。他にも、動物の姿を模した野菜や肉がやってきている。

:食材ダンジョンって何回見てもカオスよなw
:野菜が動き回ってるもん
:しかもサクたんはもうすでに懐かれてるから、余計にカオスw
:あれ、なんか変な奴いね?
:人参だけど人間みたいな手足と羽生えてて草
:どっかで見たことある気が……
:試験……英語……ヴッ、頭が!!!

 食材は既に揃ってしまったし、早速料理を始めようとしたのだが、可笑しな光景が目の前で広がっていた。

「あはは! すごい! 食材が料理してるよ!!?」

 いつのまにか包丁やらまな板が魔物たちの手に渡っており、手先が器用な魔物が包丁を手に取り、他の食材たちはまな板の上で寝転がっている。
 食材が料理を始めてしまっていたのだ。

:なwにwこwれw
:食材が料理してるゥ!?!?ww
:好かれまくったらこういうことになんのか……
:あの時の推し活ミミックと同じだなw
:身を削ってでも推しに貢ぐ。まるで俺たちだな
:↑身を削る(物理)で草
:まな板の上の野菜魔物、幸せそうな顔してらァ
:顔ないんですが

 僕が出る間もないまま料理が進み、どんどんと食材が加工されて行く。いい調子だなぁと思ったその時だった。

『――ピマピィマ?』
「…………あ」

:あ
:あ
:あw
:出会ってしまったかww
:天敵襲来w
:盛り上がってきましたわ~!
:緑の悪魔、降☆臨!!!

 少し歪な楕円形に緑緑しい肌……。そこに手足が生えた魔物は見てわかる通り、だ。
 楽しく料理をしていてニコニコしていたのだが、僕は一瞬で無表情になって冷酷な視線をピーマンに送りつける。

:塵芥を見るような目、助かるね
:スクショタイムだ!
:ガチで嫌いなんだなww
:こんな顔初めて見たぞ
:さ、サクたん……うッ!
:↑失せろ(ドンッ!)
:ピーマン、よくサクたんの前に来れたなぁオイ?
:絶対に振り向いてもらえないピーマソ君、哀れで笑える

 僕が今日作る野菜炒めに、〝ピーマン〟という具材が入ることは許されない。

「みんな……やって」

 ピーマンに指を指し、僕の周りにいる魔物たちにそう言い放つ。
 すると皆勢いよく走り出し、ピーマンの魔物に向かって一直線。数の暴力で圧倒され、ピーマンの魔物はただの野菜になって地面に落ちた。

:サクたんアンチへの動画提供です
:サクたんの悪口言ったらこうなんで~w
:怖すぎwww
:そのうち『サクたんのピーマン嫌い集』の切り抜き作れそう
:ピーマン、ご臨の終でございやしたw

 取り敢えず危機ピーマンの排除に完了する。
 金輪際会いたくない魔物だなぁ……。
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