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第25話

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「うーん……君、大きすぎるよねぇ」
『グルァ……』

 この龍の太さだけでも大樹のようだし、遥か遠くのマグマからも龍の胴が見え隠れしているから相当長いだろう。
 家に連れて帰るにしても、体からずっと放熱しているなら迷惑になっちゃう気がするし……。

:連れて帰るつもりなの……?
:近隣住民をそいつで威嚇しようぜ!
:歩 く 災 害
:あたり一帯が焼け野原になんぞww
:テイクアウトは受け付けておりません
:今回ばかりは諦めなさいw
:黒狐ちゃんもペンギンズがおかしいだけで、近づいたら燃えるからな?

 リスナーさんたちも若干諦めムードだけれど、ここは譲れない……! だってかっこいいんだもん!!
 何か策はないかと唸っていると、クロコが隣で息を吐いてこんなことを言ってきた。

「サクたんよ、連れて帰る方法ならあるぞ」
「え、本当!!?」
「うむ、利き手を儂に差し出すがいい」
「はいっ!」

 言われた通り右手を差し出すと、クロコは懐から黄金に輝く鍵を取り出して、それを僕の右手の甲に押し付ける。
 するとみるみる輝きを増し、鍵は拳に吸い込まれ、そこ中心として右腕にも輝く模様が現れた。

「今お主は〝鍵の主〟となり、〝ゲート〟を使用できるようになったのじゃ」
「よくわかんないけどかっこいいね!」
「それは儂が宝箱から見つけたもので、好きな場所で信頼関係が築けている魔物や幻獣を呼び出すことができるものじゃ」
「へー。……あ、模様なくなった」

:サクたんにピッタリすぎて草ァ!!
:相性が良すぎやしないかw
あまみやch:じゃあ今度は大きいモフを要求するわ
:いつでもどこでも、馬鹿でかいやべー幻獣を呼び出せれるようになっちまったww
:鬼に金棒だな!
:サクたんはもう、誰にも止められねェ!!!w
:ど こ で も 幻 獣 ド ア
:なるほど、黒狐ちゃんは不憫枠兼、猫型ロボット枠だったってか

 確かにその能力が本当なら、家でこの子を呼び出せば簡単にお引越しが可能になる。
 しかも、大きすぎるペットとかもわざわざ外に連れ出さずとも、ダンジョンで呼べば活躍させることができる!

 と、意気揚々としていると、このボス部屋の外からものすごい量の足音が聞こえてきた。またまたデジャヴを感じたが、それの正体は……。

「ま、魔物が一気に押し寄せてきておるぞ!?」
「あー、みんな僕の家に来たいのかな?」

:お持ち帰りされたい勢だ!
:っぱイかれてるよサクたんww
:そりゃまあ、合法的に家凸できるんだからなぁ……
:モテる奴は大変だなぁ(しみじみ)
:魔物が迫り来る恐怖映像w

 けど、流石にみんなは連れて帰れないよねぇ……。
 来てもらって悪いけれど、みんなには引き返してもらった。みんな落ち込んだ様子でトボトボと歩いていった……。

「ありがとうクロコ。これ大事にするね!」
「ふふふ……うむ! 儂もサクたんの助けになれて嬉しい限りじゃ。……一応儂も幻獣故に、いつでも呼び出して――」
「じゃあ早速帰って迎え入れよー!」
『グォオオオオ!』
「…………」

:黒狐たん、サクたんはこういう子だからねw
:やっぱり不憫枠じゃねぇか!
:泣けばいいと思うよ(笑)
:まぁ誰か一匹だけ優遇しちゃったらまずいからね
:っていうかだけど、家でこんなデケェ龍飼えんのかよ?ww
:↑そういえばそうじゃん
:家が焼けるどころか溶けるぞw

「あぁ、大丈夫ですよ? 僕の家に火山の部屋あるので」

:?????
:ほわっつ?
:チクショウ、埒が明かねェなww
:俺、国語の成績5だけど訳わっかんねぇw
:部屋に火山があるということは、火山が部屋にあるということなんですよ()
:↑ほう、つまり何が言いたい?
:ボルケーノ・イン・ザ・ルーム
:全部一緒じゃねぇか!!!

 そういえばダンジョンが家と同化していることは天宮城さんにしか言っていなかった。面倒だし今は龍のことで頭がいっぱいなので、またの機会に説明するとしよう。

 色々と急展開な配信になったけれど、まさか龍もお持ち帰りすることができるようになるとは思わなかったなぁ。
 そして、時間も時間なので今日はここで配信を終了するこもになった。


###


 ――自宅の一室にて。

「ふっふっふ……じゃあ早速呼び出してみよっかな!」

 ダンジョンと同化した僕の家の中には、海や草原、氷の大地などが広がっている。なので、たくさん生き物が飼うことができるわけだ。
 そんな家の一室である火山部屋にて、さっきの龍を呼び出すことにした。

「えーっと、『呼び出したい子の顔を思い浮かべて右手に力を込める』……? ふんぬ~っ!!」

 すると右腕がさっきのように輝き出し、手に赫灼する一つの鍵が現れる。

「これを空中で差し込んでひねるんだっけ?」

 ――ガチャッ。ギィ……。

 ひねると同時に光の輪郭の扉が現れ、徐々に扉が開いてそこからさっきの龍が現れた。

「おぉ~~! 僕の家にようこそ!!」
『グルルァア!』

 こうして、僕の家に巨大なマグマの龍がやってきたのであった。
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