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第24話

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 鱗竜の迷宮ダンジョン攻略の配信を始めてから1時間くらい経過した。
 一応明日も学校があるので、今回はこの辺りで引き返そうとしたのだが、タイルの床ゾーンでカチッと何かが鳴る音が聞こえる。

「うーん、デジャヴだね!」
「言うとる場合かぁ!?」

:まーた罠にかかってるよサクたんw
:サクたんは罠にかかりやすい……閃いた
:やはり束縛系か……私も同行しよう
:↑俺は既に通報したぞッ!!
:黒狐ちゃんの方がまだあまみやちゃんより良識あるみたいだな!
:映画について語りあってたからなww
:つてかそんなん言ってる場合じゃねぇよ!?
あまみやch:それ! どこかのボス部屋に転移させられるわよ!!?
:最悪即タヒもありうる害悪トラップ……

 ズズズと地面に紋が現れだし、次第に発光して僕らの体からも光の粒が現れ始めた。リスナーさんたち曰く、どこかの階層のボス部屋に転移させられるみたいだ。
 違う場所観れるのは楽しけど、今日は夜ご飯をちゃんと食べたいから浅めがいいな~。

 真っ白い光から抜け出すと同時に、とてつもない熱風を浴びた。皮膚が今にも発火しそうなくらい熱くなり始めている。

「ここは……まずいのう、マグマのボス部屋じゃ!」
「うわ~、マグマとか久々に見たよ! ……今日夜ご飯、麻婆豆腐の気分になっちゃった……」
「お主は何を言うとるのじゃ!?!?」

:普通の人「ヤバイ目の前にマグマ、焼け死ぬ!」。サクたん「マグマ……麻婆豆腐食べたくなった!」
:ほんっっとにさぁ……ww
:どんな思考回路してんだこの子
:頭おかしい(褒め言葉)
:でもこんな近くなのになんで熱がらないの?
:たし蟹

 転移させられた瞬間は一気に燃えそうになったけれど、今では何も問題がない状態にった。
 その理由は、僕に張り付いている子たちのおかげだ。

「熱くないのはの子たちのおかげです! えへへ、連れてきてよかった!」
『ぴー!』
『ぴいぴい♪』
『ぴ?』
『ぴっぴ……』
『ぴゃーっ!』

 五匹の手のひらサイズのペンギンたち、もとい幻獣のベイブペンギン。体から冷気を放出させて、あたりの熱を和らげているっぽい。
 因みにこの子たちの名前はそれぞれ、いちご、にくまん、みかん、よもぎ、ごま、という名前だ。

 一匹を指で撫でてあげると、他の子達も『撫でろ!』と言わんばかりに指に頭突きをしてくる。可愛い。

:かわEEEEEEE!!?
:ミニサイズ(可愛い)×ペンギン(可愛い)……ヴッ!!!
:かわちい♡
:でも幻獣なんだよなぁ……w
あまみやch:一匹……いや三匹くらい欲しい
:あまみやちゃん強欲で草

 クロコは僕が焼け死ぬのではないかと慌てていたが、ペンギンたちのこと見て安堵混じりのため息を吐く。
 かというクロコも引火しそうな尻尾を腰から生やしてるけど、どうやら大丈夫らしい。

「しっかし、ボス部屋をこんな空間に変化させてしまうとはの~。流石はじゃな」
「え? ボスじゃないの?」
「ボスはあれじゃ」

 クロコが指差す先には、グツグツと音を鳴らす溶岩に沈んで行くドラゴンの姿があった。どこか親指を立てて沈んでいった気がする。
 ボスは倒されたら数時間でまた現れるらしいので、文字通りアイルビーバック。尚リスキルをされているようだ。

「こんなマグマで暮らせれる幻獣かー。どんな子なんだろう?」
『ぴーぴぃ?』
「……噂をすれば、というやつじゃな。来たぞ」

 地面が揺れ始め、何かがマグマの中を移動している。それはだんだんこちらに近づいてきており、とうとう姿を現した。

「生ける厄災……蠢く活火山……。色々と二つ名がある天災の幻獣――〝赫岩龍カクガンリュウ〟じゃ」
『グァァ……!!!』
「おぉぉ~~っ!!!」

 赤黒い岩のようにゴツゴツとした鱗を持ち、その鱗と鱗の隙間からは赤く煌めいている龍だ。
 ドラゴンとは違い、翼も生えていないし細長い見た目をしている。けど、全長はとてつもなく長いのだろう。

:龍キター!♪───O(≧∇≦)O────♪
:可愛いペンギンからかっこよすぎる龍出てきて風邪引いたわw
:↑そこにマグマがあるじゃろ、頭まで浸かって温まりなさい
:デデンデンデデン!(某BGM)
あまみやch:火山の噴火を操作したり、口からマグマのビームを出せるヤバイ幻獣よ……
:サクたんの戦力がまた上がったよ、ヤッタネ!
:これでアンチ全員溶かせられるなw
:厄災を束ねる現代の異端者(男の娘高校生)
:電力発電の次は地熱発電もできるやんけw

 ドラゴンはカッコいい。龍ももちろんカッコいい。しかもこの子はもう懐いてくれているみたいだし、幻獣だからダンジョン外に出れる。

「どうやってお家に連れて帰ろうかなぁー!」

 今僕の頭の中では、この子をどう連れて帰るかということしか考えていなかった。
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