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第12話

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 あまみやさんからシラハを返してもらい、自分の首に巻き直す。怒りの甘噛みをされているが、脳が溶かされる気配はない。
 そんなこんなで中層を進んでいくこと数十分、目先には大きな空間が広がっていた。

「あの場所はなんですか?」
「あれは〝ボス部屋〟よ。普通に現れる魔物よりも強い魔物が先に行くのを防いでいるの」
「ほぇー。簡単ですか?」
「ここにいるのはCランクのミノタウロスだし、まぁ楽勝よ。けど油断したら簡単に死ぬわ」

:二足歩行の牛だな
:ボス部屋の魔物ってデケェんだよなぁ……
:ボスミノタウロスは普通に強いぞ!
:幻獣いるからEZ
:みんながんばえー
:普通なら緊張感あるけど、ここは皆無だなw
:安心して見れるチャンネル

 その空間へと進むと、中央に丘のようなものが見える。よく見てみるとそれは、筋骨隆々な牛であることに気がついた。
 こちらの存在に近づくと、床に置いていた斧を手にして立ち上がる。

『ブモォオオオオ!!』

 けど、違和感がある。今まで僕はありとあらゆる動物たちと関わってきた。けれどこれは……本当にその類のものなのかな……?
 そう思ったのも束の間、ミノタウロスがこちらに向かって斧を振り下ろしてきた。

「危ないわね! でもなんでサクたん君にまで!?」
「…………。あれはそういうのじゃない気がします。うーん……よくわからないけど、生き物じゃない……?」

 ピョン左衛門が杵で斧を受け止め、斧は僕らに届くのを防ぐ。

:ボスの魔物はテイムできない……ってコト!?
:確かに、ボスの魔物って決まった行動しかとらねぇよな
:生き物じゃないんか!?
:じゃあ倒すしかないんかー

 ピョン左衛門もこちらをチラチラ見ながらミノタウロスの猛攻を軽くあしらっている。『倒していいのか?』と目で訴えかけていた。
 衝撃で地面が割れ、岩の破片がこっちに飛んでくる。

「いてっ!」
「だ、大丈夫!?」

 手に擦り傷ができ、赤い血が垂れてきた。

 ――ピリッ。

 瞬間、ダンジョンの空気が変わった。
 ピー助にシラハ、ピョン左衛門も目つきが変わったような気がする。この部屋の外から地響きも聞こえてきて、それが段々とこちらに近づいてきていた。

:サクたん……血が……ッ!!
:ミノタウロス許すまじ
:てか変な音しない?
:地響きってか、足音?
:サクたんは動物とか魔物から好かれまくってる。ボス部屋に野良の魔物の乱入はよくある。つまり……?w
:ヤバすぎるwww

 ――ドドドドドドッッ!!!!

「な、何なのよこれ!!?」
「わぁ! あはは、全員集合だ~!!」

 ダンジョン内にいるありとあらゆる魔物たちがこの空間に集合したが、皆殺気立ってボスのミノタウロスめがけて走っている。
 スライムが足元を絡め、ゴブリンたちは棍棒で殴り、コボルトは噛みつき……。蜂の巣状態のミノタウロスはもがき苦しみ叫ぶが、次第にその声は薄れていずれ消え失せた。

「あ、素材になってる」
「は……え……? なん、なのこれ……」

:や り や が っ たwww
:圧倒的数の暴力で草
:サクたんってもしかしてヤバすぎる存在……?
:歩く災害w
:彼に喧嘩を売ったら最期
:ミノタウロスざまぁみろってんだ!
:切り抜きしてきもーすww
:↑サクたんアンチ勢への切り抜きだなw
:悪口言ったらこうなるて……恐ろしっ
:拡散拡散~!w

 ミノタウロスを討伐した後の魔物たちは、絆創膏を貼ってくれているあまみやさんをジーッと見つめて圧をかけている。
 処置が終わったら心なしかみんな嬉しそうな顔になっていたし、心配してくれているみたいだ。

「サクたん君……あなたって本当に何者なの……?」
「哲学ですか? ちょっと専門外ですね!」
「いや、うーん……まぁいいわ。あなたが人類の敵じゃなくて本当に良かったわ」

:本当にそうw
:世界滅亡RTAしちまうよ
:その気になればサクたんの意思で大氾濫スタンピード起こせそうww
:世界で6人目のXランク探索者になれるだろ
:やばい子が埋もれてたもんだな~w

 連れてきた幻獣たちはボスに攻撃できなかったことが悔やまれるのか、不満気な顔をしながら僕にすり寄ってきている。
 平等にみんなを撫でながら、自分の手にある絆創膏に目を向けた。

「(……怪我するのなんて何年振りだろうなぁ。いつもみんなが守ってくれてたし)」

 僕は涼牙みたいに力が強くないし、あまみやさんみたいに魔法が使えない。いつもみんなが守ってくれてるから感謝しないとなぁ。

「いつもありがとね」
『シューッ』
『キュイ』
『クルルルゥ』
「そうだね、ピー助はこれからお願いするよ」

 ボスもダンジョンのみんなと協力して倒したことだし、先に進もう! どんな魔物が出てくるのか楽しみだな~。
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