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第41話

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 存分に暴れられても問題がない開ている地に転移してきたが、寸分の狂いなく義姉は僕らの方に向かってきている。
 魔力探知が得意らしい。

「……ところで、なんでついてきたんですかお嬢様……」
「わ、わかんないわよ! なんか私もいつの間にかワープしてたのっ!」
「まぁ巻き込んだのは僕か」

 今すぐお嬢様だけ元の場所に返す――……のは、もう遅いな。
 空には赤い彗星が見え、僕らめがけて一直線に降下している。防御魔術を展開させ、衝撃に備えた。

 ――ドガァァァンッ!!!

「カッカッカ! お主がイアを誑かしておる男かぁ? 是非とも手合わせを願いたいんじゃがのう? できればボコボコにしたいものじゃ……!!」

 土煙の中、クレーターの中心に人影が見える。
 低身長で黒い軍服に軍帽をかぶる少女。赤髪と翡翠色の目は、イアと同じだ。しかし、つり目とモフモフの髪が姉妹の違いだろう。

「ん……アッシュ、私のお姉ちゃんは、私より強い」
「そりゃ……戦いがいがあるってもんかな!」

 ……確かに、圧倒的オーラがビリビリ伝わってくる。だが、本当にイアが負けるのか? まだ未知数だからわからないが、それほどまで脅威なのだろうか。
 警戒して姉の方から目を一切離さず、いつでも拳を振り抜けるようにしておいた。

「儂はイアの姉こと〝アイ〟、特異人イレギュラーの一人じゃ。身のほどをわきまえるが良いぞ小僧。……と言いたかったんじゃが、貴様の方が年上とは。癪じゃのう」
「僕はアッシュです。……けどアイさん、年下になるみたいなもんでしょ。になるなら」
「カッカッカ! 面白いの~! 反吐が出るジョークじゃ。しかし、チャンスをやろうぞ」
「ぅ――」

 瞬間、なんとか目に収めるほどのスピードでアイは移動をし、イアの背後を取っている。手刀を首に当てると、脱力して気を失ってしまう。
 反応はできたが、イアに向かうと思っていなかったので防ぐことはできなかった。

「イア!」
「お主が果たして妹に相応しい男か確かめようと思うての~。取り敢えずイアはこちらで預かるぞ」

 懐から取り出した四角い物体をイアに当てると、そこに吸い込まれていった。
 おそらくは亜空間に閉じ込めておく魔道具の一種だろうな。しかし……実の妹を手刀で気絶させるとはな……。

「んで、何をするんですか」
「簡単じゃ! 二人で儂を倒してみせよ。さすればイアを解放するし、貴様らの関係を認めようぞ。もし儂が勝てば、一生近づくでない」
「そりゃ当たり前ってやつですよ。…………ん? ?」
「えっ?」

 シエルお嬢様と顔を合わせ、素っ頓狂な声を漏らす。

「お主が連れてきた者じゃろ? だったら協力して倒してみせんか。貴様や妹となんら関係がないのならば良いが」
「……っ! 私も、関係者です!!!」
「お、お嬢様!?」

 今は絶対乗るタイミングではなかったはずだ。なんせ相手は特異人イレギュラーと呼ばれる者。
 お嬢様を守りきりながら戦えるとは思えない。

「ふふっ、言ったでしょアッシュ。良い女になるって」
「だからといって無謀な戦いをしていいわけではありません」
「無謀じゃないわ。貴方と並ぶには、料理ができたり魔術ができるだけじゃなく、強くならなきゃいけない。だから、私なりに強くなったつもりよ」

 お嬢様が強くなったと言うのはどんなことだろうか。魔術の勉強? 剣術の稽古? 聖眼の覚醒?
 どれにしても、今の僕やアイに敵うほど強化ではないだろう。やはりここは一旦僕だけ戦うしか――

「……逃がそうとしてるのはわよ。けど、本当に安心して欲しいのよ。本当に、ね」
「……? あ? なんだ、あれ」

 アイが来た方と反対方向から何かが飛来してきている。

「私がただゲームして、ゲーム作ってると思ってるの? 最近ハマってたゲームは。……もう言わなくていいわよね」
「お嬢様……マジか……!!」

 聖眼は他者の人格を見抜いたり、深層心理を見抜ける。それだけでなく、通常の眼が数万倍強化されている。
 それ故にミクロなサイズまで見れるし、透視能力もある。

 それをまさかこんなことに活用するとは思ってなかったな……!

「作ってたのってですか……!!」
「ふふんっ。正しくは、パワードスーツよっ!!」
『目的地ニ着地シマシタ。飛行モードヲ解除シマス』

 ガチガチャと音を立てて四角い箱が変形し、人が身に纏うには丁度いい形に変形をしている。

 どうやらシエルは――〝アーマードお嬢様〟らしい。
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