上 下
24 / 44

第24話

しおりを挟む
「ハイ次ィ! また堅い動きになってるぞシアン!」
『ひうっ♡ は、はいっ!!.』

 体を元に戻し、シアンにビシバシと修行をさせている。幸いにも邪竜のベビーラッシュが起きていたらしく、魔物の貯蔵は充分だった。
 何百回とビリビリなっているが、次第に動きが良くなってきているのも確かだ。……だが痺れる毎に変な声が出るようになっている……。

『ししょ~! 体ビリビリしてなんも感覚がありましぇん……!! あとなんかビリビリする度に変な感覚になります……♡』
「んー……。なんかヤバそうだし一旦休憩するか」

 地面に倒れてドロドロに溶けているシアンを回収し、近くの岩場に移動した。
 電流流すのはやりすぎかと自分でも思ったが、生温い修行だったら返って弱くしてしまう。なるべく心を鬼にし、飴と鞭を使い分けるのが肝だ。

「お疲れ、シアン。昼飯にしよう」
『ご飯!!!』

 【無限収納ストレージ】から机と椅子、そしてイアに作ってもらった料理を取り出す。
 目をキラキラと輝かせ、体が不定形なくせに口からドロドロの唾液まで垂らしていた。

『この料理は師匠が!?』
「ちょっと手伝ったくらいだな。星空の魔女に作ってもらったんだよ」
『あの星空の魔女に!? 幅広い人脈持ってるんですね、流石です師匠!! 食べて良いですかぁ!?』
「いいぞ」
『頂きまぁす!!!』

 次々と料理を口に放り込むが、咀嚼は一切せずに丸呑みしてゆく。まぁスライムだし、吸収することが得意だから必要ないのだろう。
 半透明の肉体ゆえに、料理が喉を通るのが丸見えでたったひとつ思うことがあった。

(エロ……)
『どうしましたかししょー? ボクの顔になんかついてますか?』
「……いや、なんでもない。それより、だいぶいい動きになってきたな」
『えへへ、ありがとうございます!』

 いくら煽情的とはいえ、シアンだってまだまだ子供だろう。シエルお嬢様より年上っぽいが、成人はしてるのだろうか?
 ま、今んところヤるのはイアとだけで充分だ。あの夜の出来事のせいで欲のストッパーが壊れかけてるみたいだな。慎むべし……。

「あ、そうだ。今は暇だし、ついでに回復薬作っとくか」

 再び【無限収納ストレージ】を開き、そこから薬草と瓶を取り出す。
 それを分子レベルまで分解する魔術を使い、魔力をふんだんに込めた水とかき混ぜる。その後、【昇華】を使って回復薬のグレードをアップさせて完成。

『回復薬ってそんなにすぐできるんですね!』
「僕は使う機会ほぼないから、あんま頻繁には作ってないよ。【治癒ヒール】で回復できるし」
『ボクもすぐ再生するので使ってません!』
「スライムだもんな」

 一応ちゃんと回復薬ができているか【鑑定】をしておいた。

 △ △ △

 ◾︎超高級回復薬エリクサー(製造者:アッシュ)

・傷や骨折を瞬時に治すことのできる回復薬。
・本来はエルフ族が数年かけて一滴を作るもので希少だ。

 ▽ ▽ ▽

 よし、ちゃんとできてるな。
 これを後9本くらい作った。こんだけあれば充分だろう。
 あと、結局邪竜は5匹狩ったし魔物の素材納品についてとこれでオーケーだ。

「だいぶ休憩したし、そろそろ修行再開するぞー」
「は、はい! ……ま、またビリビリさせられたり、いっぱい叱られるんだ……♡」

 再び修行もとい、矯正をし続けた。すっかり動きもよくなり、シアンは自由に動けるようになって僕でも動きを追うのが少し困難となる程だ。
 けど……修行をすればするほど息が上がっていたが、なんか様子がおかしかったな。嬉しそうな感じだったんだよなぁ。……違うよなシアン? 疲れただけだよな?

 ――勇者シアンはメキメキと力をつけている。それはまるで新芽のようであった。しかしその芽は成長し、蕾ができていた。ナニカの目覚めは近いということだ――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者がパーティーを追放されたので、冒険者の街で「助っ人冒険者」を始めたら……勇者だった頃よりも大忙しなのですが!?

シトラス=ライス
ファンタジー
 漆黒の勇者ノワールは、突然やってきた国の皇子ブランシュに力の証である聖剣を奪われ、追放を宣言される。 かなり不真面目なメンバーたちも、真面目なノワールが気に入らず、彼の追放に加担していたらしい。 結果ノワールは勇者にも関わらずパーティーを追い出されてしまう。 途方に暮れてたノワールは、放浪の最中にたまたまヨトンヘイム冒険者ギルドの受付嬢の「リゼ」を救出する。 すると彼女から……「とっても強いそこのあなた! 助っ人冒険者になりませんか!?」  特にやることも見つからなかったノワールは、名前を「ノルン」と変え、その誘いを受け、公僕の戦士である「助っ人冒険者」となった。  さすがは元勇者というべきか。 助っ人にも関わらず主役級の大活躍をしたり、久々に食事やお酒を楽しんだり、新人の冒険者の面倒を見たりなどなど…………あれ? 勇者だったころよりも、充実してないか?  一方その頃、勇者になりかわったブランシュは能力の代償と、その強大な力に振り回されているのだった…… *本作は以前連載をしておりました「勇者がパーティーをクビになったので、山に囲まれた田舎でスローライフを始めたら(かつて助けた村娘と共に)、最初は地元民となんやかんやとあったけど……今は、勇者だった頃よりもはるかに幸せなのですが?」のリブート作品になります。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

クラスごと異世界に召喚されたんだけど別ルートで転移した俺は気の合う女子たちととある目的のために冒険者生活 勇者が困っていようが助けてやらない

枕崎 削節
ファンタジー
安西タクミ18歳、事情があって他の生徒よりも2年遅れで某高校の1学年に学期の途中で編入することになった。ところが編入初日に一歩教室に足を踏み入れた途端に部屋全体が白い光に包まれる。 「おい、このクソ神! 日本に戻ってきて2週間しか経ってないのにまた召喚かよ! いくらんでも人使いが荒すぎるぞ!」 とまあ文句を言ってみたものの、彼は否応なく異世界に飛ばされる。だがその途中でタクミだけが見慣れた神様のいる場所に途中下車して今回の召喚の目的を知る。実は過去2回の異世界召喚はあくまでもタクミを鍛えるための修行の一環であって、実は3度目の今回こそが本来彼が果たすべき使命だった。 単なる召喚と思いきや、その裏には宇宙規模の侵略が潜んでおり、タクミは地球の未来を守るために3度目の異世界行きを余儀なくされる。 自己紹介もしないうちに召喚された彼と行動を共にしてくれるクラスメートはいるのだろうか? そして本当に地球の運命なんて大そうなモノが彼の肩に懸かっているという重圧を撥ね退けて使命を果たせるのか? 剣と魔法が何よりも物を言う世界で地球と銀河の運命を賭けた一大叙事詩がここからスタートする。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

処理中です...