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第12話

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 すっかり日が沈んで夜になっていたが、さすがは城下町、店の明かりで昼のように明るい。東京には流石に劣るが、眠らない街と言っても過言ではないだろう。

「さて……これからどうしようかな」

 出店で売られていた焼き鳥を頬張りながら街を練り歩いていた。金はあるが、一時的なものに過ぎないのでやはり職を手にしたいところ。
 歩いてるだけで職に就けないかな~、なんて思っていると、背後から誰かに声をかけられた。

「……アッシュ、やっと見つけた」
「え? あっ――〝星空の魔女〟」

 とんがり帽子に赤髪碧眼を持つ女性は、この前の大会で戦った人である星空の魔女こと、イアさんだった。

「……単刀直入に言う、私の家に来て」
「な、何故……?」
「魔術の腕に惚れた。一緒に高みを目指そ。私たちなら、魔王より早く世界をものにできる」
「別に世界征服したくないんですが……」
 「んー、私も別に世界欲しくない」
「……? そう、なんですね」

 なんというか、独特な雰囲気を醸し出している人だ。
 多分、先程から僕はスカウトされているのだろう。でもいきなり『家に来い』とだけ言われて行くほど何も考えていないわけではないからなぁ。

「家に行って、そこからはどうなるんですか?」
「一緒に魔術研究? 衣食住は確立。家庭菜園と料理が第二の趣味だから安心して」
「助手みたいな感じですかね」

 この人の魔術はかなりなものだが、僕にはまだ到底追いつきようがない。生きている時間が違うから当たり前だけど。しかし、腕前は確かだから一緒に研究をすれば新たな発見ができるだろう。
 ちょっと不安だが、乗ってみるのも悪くはないかもしれない。

「まぁ、いいですよ。手合わせして魔術の腕も見せてもらったんで期待できますね」
「ん、ありがと。あと敬語いらない。あなたの方が年上でしょ」
「……それに気づくとは見る目あるなぁ」

 僕の方が年上だとわかっているのに、自分は敬語を使わないのか。まぁ気にしてないから別に構わないけれどね。

「んじゃ、一旦体験として家に置かせてもらうか。キツかったらやめさせてもらう感じでいい?」
「構わない。一生、いや、何生もいたいと言わせる」
「お、おー……。頑張って」

 王室直属の騎士の次は、魔女のバディになるとは。人生何が起こるかわからないもんだなぁ。

「じゃあ、早速家行こ。私に捕まって」
「わかった」
「ん、よし。【空間転移テレポート】」

 イアがそう呟くと、バチンッと音を立てて瞬間移動をした。明るくうるさい街から一変、真っ暗で静寂に包まれる場所に移動した。
 頭上には満点の星空が広がっており、息がしづらい空間だ。

「随分と標高が高い場所に家を作ったんだなぁ」
「ん、人が多いのは嫌い。だから寄り付かない山頂に家作った」
「常人だったら余裕で高山病になる気がする」
「うん、それを狙った」

 魔術を極めて幾星霜、果たしてどのような研究を、どのような構築をするのかが見ものだな。
 上から目線というか、年上目線。自分なりオリジナルの魔術研究しか知らないから、他人の研究を見るのはいい機会だ。

 こうして、王室直属の騎士から星空の魔女の助手になった。
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