青い鳥と金の瞳の狼

朔月ひろむ

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春嵐 〜Side T〜

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俺は今、人生初の一人暮らしをしている。
といっても、蒼司が実家から戻ってくるまでの期間限定だが。
大学に入って一人暮らしする、なんて高校生の時は憧れだった。
蒼司との同居は、念願の一人暮らしじゃなかったけど、実家からの独立という意味では有意義ではあった。

「なんか、疲れてねぇ?」
教室でワイワイと騒ぐ友人達に出迎えられ、俺は席に座る。
俺のことを心配してくれたのは、高校の時からの友人の秋山正悟あきやませいごだ。
「いや、ほら、あのオメガ様と一緒に住んでるんだから、お疲れなんだって……」
ニヤニヤと意味深な笑みを浮かべるのは、同じく高校の時からの友人、佐間裕翔さまゆうとだ。
「あー、毎日、ヤりまくりかぁ……」
「羨ましい…」
他にも大学に入ってつるむようになった友人達。
彼らは皆、アルファだ。
ヤリたいざかりの年齢だから、想像することはそっちくらいしか思い浮かばない。
俺も漏れなく、ヤリたいざかりのはずなのだ。
だが、ここで事実は言っておいた方がいいだろう。

「俺らはシタことないぞ!」
恥ずかしいので、ボソリと小声で否定する。
「はっ?マジで!!?」
「あのフェロモン浴びてて、手を出してないって!!?」
「ウソだろ……」
「おまえらうっせぇ…」
驚きの声をあげる友人達のせいで、教室内にいる人間から注目されてしまう。

「いやぁ…あの貴俊が手を出してないとか、信じられねぇわ」
俺の高校時代の素行を知っている裕翔は、俺を別人を見るかのように見る。
裕翔の驚きには心当たりがあるので仕方ない。
高校時代、寄ってくる女性とそれなりに遊んでいた。そんな状況を知る裕翔からしたら、信じられないだろう。
もしかしたら、俺の素行の悪さを心配したから、両親は蒼司との縁組をしたのかもしれない。
でも、仕方ないのだ。
高校の頃、寄ってくる女は俺の『狼』というアルファの魅力に近付いてきていただけ。
ぶっちゃければ、俺の子種がもらえればそれで良かったのだから。
オメガを抱いていても惑わされることなく、避妊は完璧にしていた。
俺の強い『狼』のアルファのフェロモンに惑わされないオメガは、蒼司だけだ。
俺も蒼司の強い『青い鳥』のオメガのフェロモンに惑わされて手を出すことがない。

「でも、番になるんだろ?」
「さあ?」
「さあって……」
すでにパートナーと番になった正悟は呆れ顔だ。だが、まだ18歳だと番がいないアルファやオメガが大半た。
「よくわからんことしてるな」
「あのフェロモンに抗えるなんて、さすが『狼』」
彼らは蒼司のフェロモンの魅力に惑わされている。
俺がいなければ、蒼司に手を出しかねない。そんなことさせれないので、今もアルファのランクの違いを利用して、彼らを服従させる。
「わかってるって。アレには手を出さないって」
アルファは自分より上位のアルファには逆らえない。
犬っころのアルファに、俺が負けるワケがない。
だからこそ余計に、蒼司に手を出されるのは許し難い。

俺の逆鱗には触れたくないのだろう。
蒼司の話はこれで仕舞いとする。
蒼司の話をされたからか、俺はだんだんと機嫌が悪くなっていく。
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