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明晰夢の発展
しおりを挟む明晰夢というものは、夢の中ですきにできる娯楽だ。
練習こそいるが、一度マスターすれば、コストパフォーマンスは他のどれよりも高い。
何しろ一定の行動を取るだけで、色々な体験を疑似体験できるからだ。
世界が不況で暗くなっていく中、明晰夢がブームになっていった。
だが、ある時を境に明晰夢が現実として役に立つことになったのである。
それはとある研究によって開発された技術だった。
その会社は、今の明晰夢ブームに便乗し、明晰夢を簡単に入れる装置、あるいは導入を助けるための装置を研究していた。
そして、それによって、偶然にもある一定の空間へ意識だけをアクセスすることができることが分かったのだ。
それは、何億光年も遠くの惑星の一つ。
そこには人と同じ生命体がいるかもしれないと知られていたが、しかし遠すぎるがゆえに観測は困難だった。
だが、夢の世界でなら、その装置を使えばそこに行くことができるのだ。
具体的な場所は当初は分からず、のちの研究によって分かるようになったものの、当初はその装置を使って明晰夢を見た人が、誰も同じ物体を見ていたことから始まった。
夢は常に変化するものにも関わらず、一定のパターンで装置を使うと、何度も見た夢が一致するのだ。それはどこか特定の場所を示しているようにも思えた。
しかし、そこはまるで現実とは思えない環境だった。
人々は魔法を使い、そしてモンスターと呼ばれる魔法を使う動物がいるのである。
そして、安全性が証明されるとその会社はその装置を売り出した。
謎の現象が起こるものの、安全性は完全にクリアしていた。
その謎の夢空間において、入眠者は視点だけの存在であり、全くその世界に影響を及ぼすことができなく、同時に影響を受けることもなかった。
そう、できることは、ただその世界を認識することだけだ。
多くの者がその空間へと毎夜旅立つことになった。
だが、その世界の、ある存在がその意識を認識できたのである。
彼は魔人とも呼ばれ、人とモンスターの中間ともいえる存在だった。
彼は特殊な魔法を使い、人の意識を特定の檻に閉じ込めることで、恒常的にエネルギーを生み出す方法を開発したのだ。
だが、人の意識はとらえることが難しい。そこに存在があるわけでなく、単に遠くからこの世界を認識しているだけだからだ。
無論、当然装置を停止させ、入眠を解除すればその異世界から意識は消え去る。
だが、その魔法で生み出せるエネルギーは無視できるほど小さくはない。
だからこそその魔人は、檻の中に意識をとらえ続けるため、ある工夫を施した。
それは、娯楽である。
あらゆる享楽や娯楽をその檻の中で再現したのだ。
それによって、入眠者の好きな趣向をとらえた彼は、多くの意識をその檻に捕らえることに成功した。
中には、ずっとその檻に捕らえられるものも。
多くの者が、檻の中で遊ぶことが常識となりつつある中、あるものは気が付いた。
この檻の外に出られるのではないかと。
彼は檻の中から飛び出した。
そこには檻の中からでは想像もつかないような世界が広がっていた。
楽しさは檻の中のほうが強い者の、未知なるものの探求心ゆえに、彼は旅立っていったのだ。
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