2 / 6
第一章 ブラック・シーカー
第一話 100階
しおりを挟む「侵入者確認、現在92階地点に到達、看守は全員現場に急行せよ。なお、侵入者の目的はブラック・シーカーと思われる」
監獄内が朝から騒然としていた。
黒いマントを覆った若干若い4人は上階へと足を早めていた。
「ブラック・シーカーっていうのが今回の目標であってるか?」
「おそらくそうだろう。で、本当に100階にいるんだろうな。そいつは?王姫様?」
「私の第三の目には見えています。多分。」
「多分じゃ困る。そいつは今後の我が国の発展に欠かせない実験材料なんだからな」
「は、はい。」
アリス以外の三人は次々と現れる看守達をいとも簡単に倒していった。
そこはもはや惨状だった。
戦闘経験がない王女には血を流す看守達が倒れていく姿には目を瞑った。
「そこの角を右です。」
アリスの声と共に4人はある一つの檻の前にたどり着いた。
中の状態は暗くて見えない。
しかし、かすかに鎖が地面と擦れた金属音が静かな空間に響き渡った。
「お前がブラック・シーカーいや、アライシンヤか?」
しばらくの沈黙の後、若干さらに黒マントより若い声が聞こえた。
「正確に言えばどちらも違う。俺はただのヒーラーだ。ブラック・シーカーは看守達が皮肉を込めてつけた名だ。」
「なんでもいいが、これからお前を我が国に連れて帰る」
「何のために?連れて帰るって俺の生まれたのはこの国だが?」
「それは後のお楽しみってやつだ」
「そうか‥」
男の1人が両手、両足の鎖の鍵を解く。
「出ろよ、囚人。」
ようやく、その囚人の姿が露わとなった。
が、しかし黒マントたちは息を飲んだ。
「なんだ、その姿は。全く歳をとっていないじゃないか。お前が国王殺しをしたのは100年前の話じゃないのか?」
出てきたのは20代の若い男。
「人違い‥ではないのか?」
「おい、王姫!お前、嘘ついたな」
黒マントの1人がアリスの胸ぐらを掴みかかった。
「間違いなくこの人です!」
しかし、その場の誰もが信じることをやめた。
「だから、この出来損ないを連れてくるのはやめようと言ったんだ」
アリスの顔面に拳が直撃する直前、聞こえたのは黒マントの呻き声だった。
「き、貴様何をした。くそ、どうなってる。」
「え?え?」
アリスもその場で現場の状況を対処できるほど脳が追いついていなかった。
ひとつだけわかるのは先ほどまで殴ろうとしていたはずの黒マントの腕がなくなっていることだった。
しかし、血はない。
「やっぱり鈍ってるな。100年のブランクはなかなか埋まらないか。ホントはお前全てを消すつもりだったんだが。とりあえず、汚ねえから血は止めといてやった。お前らの狙いは俺を実験のモルモットにするつもりだろ?」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】呪われ姫と名のない戦士は、互いを知らずに焦がれあう 〜愛とは知らずに愛していた、君・あなたを見つける物語〜
文野さと@ぷんにゃご
ファンタジー
世界は「魔女」と言う謎の存在に脅(おびや)かされ、人類は追い詰められていた。
滅びるのは人間か、それとも魔女か?
荒涼とした世界で少年は少女と出会う。
──それは偶然なのか、それとも必然か?
君しかいらない。
あなたしか見えない。
少年は命かけて守りたいと思った
少女は何をしても助けたいと願った。
愛という言葉も知らぬまま、幼い二人は心を通わせていく。
戦いの世界にあって、二人だけは──互いのために。
ドキドキ・キュンキュンさせますが、物語は安定の完結です。
9.9改題しました。
旧「君がいるから世界は」です。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる