達観した紫の上と、年上旦那様

神月 一乃

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人肌恋しくなる冬模様

私の「夢」

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 さてさて。
 専門学校系の願書を出さずに数日過ごしていたら、担任から電話が。
 ……あーーだいぶ、クラスメイトの進路が決まりましたからねぇ。うんうん。

 なぁんて思いつつ話していたら、いつの間にか旦那様が来ていて、私から電話を取り上げました。
 あ、千夏と花音に迷惑がかからないように勉強部屋の隣室に来て電話とってたはずなんですけど。
「……今更? 麻帆佳は結婚したのだし、家庭に入るという選択肢はあなたの中にはないのか?」
 その手があったか! と私も今更ながらに思い出し。そんな私を見た旦那様が苦笑しておいでです。
「それ以外の進路? ……私の都合で麻帆佳を振り回しているのだが。だから決まらないことに関して、麻帆佳だけを責めるのは間違いではないのか? それにどうして今頃言う? 麻帆佳が登校できるようになった後すぐそういった対応を取っていればもっと選びようがあったと思うのだが」
 あ、珍しく塩対応の旦那様ですよ! いつもでろ甘なのに!

 その後もしばらく応酬があり、願書出すまで時間が出来ました。

 以前旦那様にも聞かれたのですが、私やりたかったことが叶っちゃってるので、他にやりたいことないんですよね。

 叔父一家にお世話になっていた頃、私の中で「あの家を出る」というのが一番の目標で。出来れば受けた暴力の損害を求め、両親の遺産を取り戻す。それしかなかったんです。
 旦那様と結婚してあの家出れましたし、今となっては叔父一家は留置所の中。誰も保釈金を払わないので、出られないようです。
 叔母の実家でも、払う意思はない模様。そりゃそうですよね~~。五人分ですよ、五人分。一般家庭には無理ですね。
 そのまま裁判になるんじゃないかという話です。

 他の目標がなかったため、あとやりたいことがないのです。だから、調理師専門学校のパンフレットを見せられ、私は驚きましたとも。
 ただ、仕事としてみるにはちょっと辛いかな、とか思ったり。私の料理は所詮家庭料理ですから。
 語学に関しては、結婚当時はともかく、今は必要だと分かっています。……が、そこまでやる気が出ません。なので学校に行くというのも違うかなと。だって、ああいう学校って、将来を見据えていくものだと思っているので。
 とか思っていたら高部さんの奥様に「こういうのが好きだから進みたいっていうのでもありなのよ」と教えていただきました。
 聞けば奥様、洋裁専門学校の出身だとか。入学した理由が「不器用を少しでも良くしたかった」とのこと。そういうのもありなんですね~~。

 それはともかくとして。
 選択肢をいきなり広げられても、やりたいことが見つからないんです。

 とうの昔に諦めた「夢」は自分で叶えられないようにしましたから。

「で、麻帆佳が昔抱いていた夢って何?」
「ふぇ!?」
 私声に出していました?
 と思ったら、千夏と花音にちらりと聞いたのだとか。あ、あの二人には言いましたもんね。
「……」
「……」
 私にスマホを返すと、ぎゅっと後ろから抱きしめられて、また旦那様の膝の上に座る形に。

 現在休憩中らしく、時間があるとかでこのままです。

「……け、研究員になりたかったんです」
 父と同じ道に進みたかった。父はどこかの企業で開発管理を行っておりました。だからなのでしょうか、同じように研究・開発の道に進むことを夢見ていました。

 両親が他界して、その夢は諦めましたけど。そして高校でもあえて文系に進んだのです。

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叔父一家にヘイトがあがるお話でした。
麻帆佳は元々理系よりの人間です。
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