上 下
59 / 120
天高く陰謀巡る秋

麻帆佳からの選択肢ですが

しおりを挟む
 それにしても不思議なのですが、私ですら知っている厳原グループ。偉い人が退任するくらいの収賄って一体なんでしょうね。よほどのことがない限りトカゲの尻尾切りで終わるような気がするのですよ。
「……色々重なってね。一番大きかったのは、某品物に対する関税撤廃を阻止するための収賄と、それに付随する色々」
 最近は以前にもまして、旦那様は私の考えていることが分かるようになったみたいです。
素晴らしい。……私は旦那様の考えていることなんて、さっぱり分かりませんけど。
「それだけじゃ、引責しませんよね。まさかと思いますけど、今回みたいに・・・・・・脅したのも含むんですか?」
「それだけで理解して欲しくない。関税撤廃促進派への嫌がらせと脅迫。中には人質を取ったのもあるって父からは聞いたけど」
 よく、グループが崩壊しなかったこと。思わず呆れてしまいますよ。
「うん。園田とか、古くからいる人たちが頑張ったからね。園田が指示したとして、厳原グループを懲戒解雇、その責任を取ってこの人が引退したって筋書き」
 うん。最低です。この人が「自称」高貴な人なら、私は下賤でいいですよ。同類になりたくないです。
「今の、わざと口に出した?」
「もちろんですよ」
 どこまでもこういう輩にはダメージを与えたいんですっ!
「この下賤の身で儂に逆らうのかぁぁぁ!!」
 あーあ。これ以上血圧上がったらまずいんじゃないですか? 御年召されているようですし。

 仕方ないです。さっさと帰りましょうか。
「旦那様。私からの選択肢です。その一、この方の望むように私と離婚して、気に入られる方と再婚なさる。……ここにいる皆様がそれを望んでいるようですね。
 その二、とりあえずこの方を締めて、今回の話し合い自体をなかったことにして、園田さんを連れて帰る。……これが理想だと思いますけど、締めても懲りなさそうなんですよね」
「……ま、麻帆佳」
「選択肢はまだ終わってませんよ? その三、会社を辞めて他社へ就職。私と離婚するか否かは旦那様にお任せいたします。……厳原にかかわりがあるからと、色々大変でしょうけど。おそらく私は扶養でのんびりなんてできないでしょうね。
 その四、同じく会社を辞めて独立。これも離婚するか否かは旦那様次第です。
 その五、……これが一番難しいと思いますが、仕事辞めて海外で別の仕事を見つける」
 うん、我ながらいい選択肢を旦那様に叩きつけれましたよ。

 えーっと、旦那様? どうしてそんなに固まってるんですか?おーい。


「どの選択肢を選ぶにしても、麻帆佳とは離婚しない。それは決定事項だから、その一は却下」
 やっと復活したと思ったら、いきなりそれですか。
「で、その二。麻帆佳が手を汚す必要はないから却……」
「旦那様、『締める』の意味が違います。とりあえず二度とこんな馬鹿げたことができないように『お話合い』をするだけです」
 明日さんとかも巻き込むことになりそうなので、ちょっと大変ですが。
「……うん。言いたいことは分かるけど、面倒。なのでとりあえず却下。で、その三だけど、基本難しいと思うんだ。多分この人が圧力かけるだろうし、厳原と関係のないところに行こうとすると、先ほど言った収賄の件で色々マスコミにも他社さんが突っ込みを入れられる可能性もあるからね」
 まるで私じゃなく、あちらの老爺に話しかけているみたいですよ。
「だから私としては、その四とその五の折衷案がいいな。麻帆佳が高校卒業するまでは日本にいて、卒業したら海外に一緒に行く。起業したのを半年で軌道に乗せて、海外で展開」
 それは思いつきませんでした。ってか、離婚しないというのは決定事項なんですね。
「とするならば、善は急げだ。明日にでも退職届だそう!」
 え? もう決定ですか?
「だって、この連中集めたのって、麻帆佳を凌辱するためってのもあるみたいだからね。そんな事、許さない」
「戯けがっ!! 能無しが厳原を出て何が出来ると思っておるのだ!? 最低限の人脈すら……」
「旦那様っ!!」
 やっぱり、旦那様もこの人に幼いころから怒鳴られていたんでしょうね。顔色が変わっています。
「旦那様は、慕われているじゃないですか! 明日さんにも高部さんにも、藤城さんにもっ!!」
「ま……ほか?」
「それに克人さんだって! 克人さんが仕事の悩みとかをぶちまけるって凄いんですよ!」
 私は事実しか言ってません。克人さんにも言われたのですよ。「あの人、麻帆佳ちゃん以外の周囲はよく見ている」と。
 私だけよく見れないのは何故なのか、口を割ろうとしませんでしたけど。
「それは旦那様の人柄と能力ですっ」
 ……というか、どうして私がこんな慰めをしなきゃいけないんでしょうか。

 この老爺のせいですね。
まったく、怒鳴ることしかできない人が口出ししないでください!

 とりあえず帰りましょう。そして、今後の解決策を模索しましょう。


 こんなことがあった翌日。
この話が厳原の方々にも伝わっているわ、明日さんから撫でて褒めてもらえるわ、忙しい日でした。

 旦那様が仕事を辞めて独立起業するのは、それから数日後。従業員は明日さんと藤城さん、そして克人さんというメンバーでした。
 そして、このマンションの同じフロアに、千夏一家と花音一家もお引越ししてきました。

 私への脅迫として、二家族が危険なのだそうです。どこまで下種なんでしょうかね。


 で、何故か旦那様が風吹さんから説教食らっておりました。……フロア廊下で正座って……と思ったのは内緒にしておきます。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

本当は、龍雅さんが到着するのは、凌辱されるギリギリのところという設定でした。あまりにもドアマットヒロインっぽくて悩んでいたのですが、近況にも書いた通り、龍雅が動くのが早かったため阻止されました。
千夏の両親は早期退職することに。「貯蓄もあるし、家も売ればこれ終わった後田舎でスローライフ出来るよね」という考えのもと。そのころには千夏は大学生だろうし、問題ないなーというお人。花音宅は岡さんにお店を託しております。同じように田舎に引っ込んで葬儀屋か結婚式場で花束でも作ろうかと考え中。
貴重品持っての避難です。生活費は龍雅持ちです。
個人資産はなりに持っておりますので、痛くも痒くもなかった模様……
もちろん、そのことをあの老爺は知りません。「無能」という烙印を押したため、その辺りは無関心。あとでそのことを知ってまたしても怒り狂いますが、厳原に関係のない銀行で預金をしていたため、こちらも問題なしですww

明日さんも、藤城さんも龍雅のいない会社に意味はないと退職。高部さんも同じことを思ったのですが、家族を優先しました。で、秘書課で後身を育てる羽目に。残ったために苦労することになります。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...