彼女と彼とお酒

神月 一乃

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彼と彼女の秘密

味方に付いたはず……多分

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 これは二人を味方につけておくべきだ。そう判断した桐生は、帰りがけの車で美冬があの姉弟と一緒にいたこと、どうやら二人の妹らしいことをそれとなく・・・・・伝えることにした。
「何ですって!?」
 嬉しそうに叫ぶ祖母に、それが間違いでないことを悟る。
「負けたわぁ。千秋ちゃんと冬哉君の包囲網をすり抜けるなんて、思わなかったわ」
「うふふ。無欲の勝利かしら」
「千代ちゃんには一番会わない言葉よねぇ」
「筑紫ちゃん、酷いわ。無欲だったのは、桐生だもの」
 なんだか、凄い会話をしていませんか? 桐生は心の中でそう思ったが、言わないでおいた。

「いくつか聞きたいのですが」
「何かしら?」
「あの姉弟は……」
 いったい何者なのか。それが気になった。
「千秋ちゃんは都築うちで秘書をしてもらっているの。確か息子の専属秘書だったわね」
 しおりの息子ということは、都築興産の社長である。あの若さで社長の専属秘書とは恐れ入る。
「……え?」
「お嫁さん探しに行った時、見つけたんですって。確か千代ちゃんの母校よね」
「そうよぉ。特待生として通っていたの。入学時から『あの子いいわぁ』って思っていたのに」
 ぷぅっと頬を膨らませる祖母。シュールなはずなのに、違和感がない。
「お嫁さんも探して、秘書も探して一石二鳥だったの」
「……そ、そうですか」
 なんだか、怖い。

 その時に年子の弟、冬哉も知ったという。
 ……ということは。
「美冬ちゃんを知ったのは、冬哉君の結婚式で。親戚の子供かと思ったら、二人の妹だったのよ。そのあとからは、あの茶会に行けば会えるようになったけど……ねぇ」
「そうなのよぉ。千秋ちゃんと冬哉君のガードが固くて、お見合いの話とか一切できなかったの。そうこうしているうちに、他の方々も気に入っちゃって、協定ができちゃったのよぉ」
 なかったら千秋経由で内々定を出すつもりだったのに、そう悔しがるしおりを見て、桐生は遠い目をした。
 ……悪くないはずだ。うん。

「私としては結婚を前提に付き合っているつもりですし、今日それをあのお二人の前で宣言してきました」
「あら! ということは元旦一緒にいたのは、美冬ちゃんなのね!」
「勿論です。祖父たちが反対するなら、私は仕事辞めて家を出ますので」
「その時は都築うちで雇うわ! いつでも言ってね!!」
「そうなったら、わたくしも家を出るから! 美冬ちゃんを公で可愛がれるこの地位を逃すものですか!」
 なんだか変に力んだ祖母に、「遠慮します」と言いたくなった。
 その言葉を飲み込めた桐生は、ある意味空気が読めた。

「しばらくあの人たちには内密にお願いします」
 当然とばかりに力強く頷く二人を見て、一抹の不安を覚えた桐生だった。
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