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出会いから恋人に至るまで
小悪魔は無意識に振り回す
しおりを挟むそんなわけで迎えた、正月。
元旦の挨拶を済ませた桐生は、美冬との待ち合わせ場所に急いだ。
待ち合わせ場所にいる、男の塊に桐生は少しだけイラついた。
「美冬、お待たせ」
「桐生さん」
真ん中にいた美冬を助け出すと、すぐさま歩き出した。
「桐生さん、痛いです!」
「ごめん。その格好は?」
「……えっと、姉に選んでもらいました」
もの凄く可愛い。何というか、白いファーコートと、チェックのミニスカート。そして黒のニーハイソックス。……いや、ニーハイソックスではなく、ガーターベルトで止められた、タイツか。ある意味小悪魔的可愛らしさである。
下半身に意識を総動員させ、欲望を抑える。とりあえずは初詣だ。
「……お姉ちゃんったら、酷いんです! ママに言って『今日は帰ってくるな』って! せっかくのお節と今日しか手に入らないお酒を楽しみにしていたのに!!」
未だに己よりも酒とご飯が優先らしい。
「玉乃光の『山田錦』ですよ!? 叔父さんが持って来てくれるんですけど、皆呑んじゃう~~!!」
「……あれか。確かに美味しいよね。俺も酒何本か持って来てるけど、要らない?」
五橋「吟醸原酒」に越の誉「吟醸」である。美冬もぐらついているのが分かった。
「玉乃光の『山田錦』って、十月から発売される限定のやつでしょ? 流石に今から手に入れるのは難しいから、他の酒で我慢して。他にも正月用の祝い酒も持って来てるし」
「どこで呑むんですか!?」
「……内緒」
こういうとき、ホテルを思い浮かばないのはどうしてだろうと思ってしまう。とりあえず、コーディネートしてくれた美冬の姉と、色々と根回ししたであろう真貴とその後輩に感謝だ。
混んでいた神社で初詣を終わらせ、車に戻ろうとすると美冬が消えていた。
捜すと、屋台の方にいる。
「今日は手の調子が悪くて、手が握れないんだ」
そう言って笑う的屋の男に思わず睨みたくなってくる。
「兄ちゃんとじゃんけんで勝ったから、もう一本おまけだ」
昔からこういう屋台はあったなぁ、そう思っていると桐生の目の前にチョコバナナが差し出された。
「えっと?」
「桐生さんの分です。甘いのって苦手でした?」
「苦手じゃないよ。……出来ればいきなりいなくなって欲しくないと思っただけで」
その他にも色々と買い込んでいる。
「それって……」
顔が引きつるのを止められなかった。
「こういうところに来ると、どうしても買っちゃうんですよ。行くときに屋台を見て回って値段を見て、帰りに買うんです」
その言葉に思わずくすりと笑った。
付き合ってからも、美冬は何一つ変わらない。
「さて、車に戻ろうか」
そう言って美冬の持っていた袋を預かった。
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