彼女と彼とお酒

神月 一乃

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出会いから恋人に至るまで

哀れまれました

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 いたずら電話や嫌がらせの類は、真相が明るみに出ると、同僚たちの態度が変わった。
 勿論、変わらなかった人たちもいる。
「……あんたって、見た目平凡なのに、中身がね……」
「どゆこと!?」
 同期の同僚に結構酷いことを言われている気がする。
「いい? あんたはちみっこいけど、あれだけ食うって時点である意味目立つの。それに、ざるを越えたわく並みの酒豪。大体それで覚える」
「えぇぇ? 嗜む程度……」
「あんたの量を『嗜む』にしたら、世の人は酒に弱くなるわ!!」
 そんなことで怒られるとは思わなかった。
「美味しいものは、美味しくいただかなきゃ」
「それは、あんたと付き合うようになると、よぉぉく分かる。しかもきっちり躾けられてるのも。箸のもち方は課長や部長が褒めるほど綺麗だし、食べ方も綺麗。その時点で上役にはいい印象なの。しかもあれだけ飲んでも絡まないどころか、飲めなくて困ってる人を助けるし、絡まれてる人を助ける。その上、飲みまくっても皆にお酒を注ぎまわるし、なんなの?」
「……礼儀でしょ? お箸のもち方はお母さんがそれこそ厳しくしつけてくれたから。それに、飲めない人にお酒勧めるってどうかと思うんだ」
「そっか。まぁ、いいけど。そういう意味で印象残っちゃうわけ。それを面白くない人たちもいるって事」
 当たり前のことをしているだけで嫉まれるとは、嫌な世の中だ。
「だから、桐生さんとかも気になっちゃったんだろうね。しかも、あんた一人だけでしょ? お酒の話についてけたのも、見惚れてないのも」
「ただのヘタレよ、あの男」
 いきなり真貴が話に入ってきた。
「桐生さんって、ヘタレですか?」
「この子限定で」
「……なるほど。少し哀れになってきました」
「哀れんであげて」
 何の話か全く分からない。
「とりあえず、声援送っておきます」
「伝えとくわ」
「誰に?」
「あんたは知らなくていい!」
 きっぱりと同僚と真貴に言われてしまった。
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