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花の街
エイミの事情
しおりを挟むエイミの両親はαだったらしい。「らしい」というのは、人伝に聞いたからだ。そして花の街の門の外へ、赤子だった頃に捨てられていた。
実際、この街のΩの三分の一が年齢を問わず、捨てられたΩだ。
残りはこの街で産まれた者や、様々な理由でこの街に流れて来た者となる。
ただ「Ωである」という理由だけで、捨てる親は多数いるのが現状だ。
産まれて間もなく捨てられたであろう、エイミを拾い、名をつけてくれたのがメイサである。メイサは「自分の娘につけたかった名前の一つ」としてエイミという名を与えた。
……エイミの「姐」や「娣」にも同じようにつけてるため、真偽のほどは分からないが、「Ωが産まれたという理由で離縁させられた」のは本当のことらしい。そう、昔なじみのαの医師が言っていた。
だから、花の街に住む住民はメイサにとって「等しく子ども」なのだと。
その扱いがどれほどのΩの心を救っているのか、メイサは知る由もないだろう。だからこそ、街の住民はメイサを「ママ」と呼び慕うのだ。
エイミは他のΩよりも発情期が酷い。通常数か月に一度、一週間程度とされているが、エイミは月に一度、二週間ほどの発情期がある。つまりは、月の半数を発情期で過ごしている。
それ故、エイミの部屋は、メイサの事務所から直接行けるようになっている。それを秘書であるマリも許可を貰い使っている。
「はい、エイちゃん。気休めだけどこれ飲んどいて」
通常のΩであれば、ある程度の発情期を抑制できる水薬を、エイミに渡す。これを飲めば、エイミの発情状態も若干はおさまる。……おさまるだけなのだが。
「ありがとぉぉぉ。昨日飲もうと思ったのに、あのヒトたち来ちゃって飲めなかったうえに、零しちゃったのぉぉ」
零したと言っているが、間違いなくあ奴らに零されて飲めなくされたに違いない。マリは確信を持って言える。
「いい加減拒否しちゃいなよ」
Ωの薬を邪魔するということは、この街の規則に反する。それが理由で拒否することも可能だが、それをエイミはあえてしていない。
「拒否はしたくないかなぁぁ。あたしとしても楽しんでるしぃ」
「悪辣」
「うふふぅぅ。いいじゃない。あたしを『番』だって思い込んでるお馬鹿さんたちだものぉ」
「……気づいてる?」
「何のことぉ?」
「それでメイサママも騙せると思わないことかな」
「ママにも『好きにおし』って言われてるよぉ」
「メイサママもエイちゃんには甘いんだから」
「違うよぉ」
うふふ、と笑いながらエイミが小首をかしげた。
「ママはぁ、この街に住むみぃんなに優しいのぉ。そして、街の外のヒトとぉ、ママ自身に厳しいのぉ」
「……それも、そうだね」
それも事実だ。そして、マリもその愛情を向けられている一人なのだから。
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