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 体の表面が柔らかくふやけて溶けて無くなっていくような気持ちよさ。


 んー、起きたくない。なんだ、いつもより疲れてるみたい。

 寝返りを打とうとして、もがく。あれっ?おかしい、うごけない。


「うーん……うーん……」

「可愛い、私のレイ。おはよう」

「!?」

「レイはもう、分かっただろう?お見合いは、断れるな?朝イチですまないが早く断ってくれ」


 ”お見合い”……!

 ギョッとして覚醒した。開けた視界にはロドリックがいっぱい。

 それも全裸。

 その上に、にゅくにゅくと起き抜けの俺の息子まで握られて、あっ、あっ、そんな……!


「ひ、ぁあ……っん!」


 え――――ッ?

 ふわふわする頭が、絶頂して更にバカになる。ぴくぴくと体が痙攣して、息も吸えない。何事なの、この状況。

 もう俺の息子は吐き出すものも無いらしく、たら、たら、としおらしく泣いているようだった。


 ロドリックはシャワーの時と同じように、ちゅ、ちゅ、と俺の身体にキスを落としていく。

 こいつ、俺を結婚させたくないあまりに、こんな甘ったるい顔をしてサービスしてんのか?


 ……可愛いとこ、あるじゃん。


「も……っ、そんなんしなくたって、お見合いは断ったぞ……」

「っそうなのか!?」

「全く、はぁ……っ、朝から、こんな……んん?」


 ん?

 このスッキリ感。そして虚脱感は、慣れ親しんでいるぞ……?
 毎朝感じていたのは、えっ、こいつが……?


「!まさか、お前……!」

「やっと気付いたのか?毎朝、こうしてレイの射精管理しているのを」

「管理って……!ひ、あ、だめ、触るな……っ!」

「もう私たちは恋人だろう?レイにはいつまでも健康でいてもらわなくては。だから続けさせてもらおう」

「他にもあるだろっ!?あ、あ、あ……ッ!!」



 俺たちはいつのまにか恋人になっていたらしい。


 平日にも関わらず、朝からロドリックに余す所なく愛でられることとなり、俺はそうそうに白旗を上げた。だってその整いすぎた顔で嬉しそうに微笑まれ、大事そうにキスをされると、『ま、いっか』ってなっちゃうんだもん。








「うー……お前、やり過ぎ。もう時間ねぇ」

「すまない。暴走した……」


『入り口ちゃん』に転職した俺の尻の孔が、悲鳴を上げていた。ひりひりする。何故かロドリックは適した軟膏を持っていたので、俺の水魔術で出した水も一滴混ぜて、塗ってもらう。そのくらいしやがれってんだ。


「ん……んぅ……、ちょっ、お前、」

「わざとじゃない。念入りに塗っているだけだ。誓って」

「あ……っ、ん――ッ」


 もう、どうすんのこの身体!こんな簡単に感じるようになっちまって!

 軟膏のおかげで入り口ちゃんは完全回復したのだが、ハフハフと昂った状態で授業へ行かなくてはならなくなってしまった。

 ぐすん。健全な俺の息子が泣いている。


 責任をとってくれ。マジで。








 冷静になって考えてみれば、俺ってば何をしたのか。

 もしロドリックが女の子だったのなら、俺、絶対にヤッてない。

 好きだって言ってくれる女の子が迫ってきたとして、その先を考えて、二の足を踏んだだろう。

 だってさ、相手が女の子なら俺は責任を取らなきゃならない。そう強く思う。妊娠の可能性もあるし、相手が貴族令嬢なら殊更『肉体関係を持つ』ことに対して世間が厳しい。


 結婚して、子供作って、養って、稼ぐために出世して。

 それが苦にならないのなら、きっと愛している、ってことなんだろうけど。

 ロドリックは男で、相棒で、雑に扱っても良くて。隣に並び立つのにこれ以上なく信頼出来る相手で、どちらが責任、とかはない。

 だから、すんなりと受け入れてしまったのかなぁ。

 ……でも、ロドリックじゃなかったら。

 他の男だったら。


 多分、部屋が半壊するくらい蹴飛ばすと思うんだ、俺。


 じい、と斜め前に座るロドリックを見た。あー、すげぇ格好いい。すっと通った鼻梁とか、盛り上がった筋肉とか、あれが今朝、俺の上に乗ってたんだよな……。

 ぽわぽわ。ふわふわ。嬉しいような、やっちまったような、複雑な気持ち。

 その後すぐに、パリス侯爵令嬢から糾弾されるとは、微塵も考えていなかった。










「なんて、なんてひどいお方なんですのっ!?信じられませんわ……!」

「うぅ、いいんです、パリス様……っ!」

「いいえ、これはわたくしが言わなくては。レイジーン・アクア。乙女心を弄んだ極悪人よ!」


 ビシィッ!

 指をさされた俺は、なんとか貴族らしい柔和な笑顔を作った。……えっと、なに、これ?





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