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第二章 二回目の学園生活

20マルセルク side

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(…………面倒?)

 慌てて打ち消す。まさか。そんなわけはない。リスティアを愛しているのだから。

 マルセルクの愚息に感じ入った様子の、リスティアの頸を噛む。その途端に達し、気絶してしまったリスティアに、愛しさが込み上げるが……薄い腹が目に入った。
 
 おかしい。まだ開花しない?

 花紋は性行為により開花すると聞いていたが、違っただろうか。

 マルセルクが疑問に首を傾げた時、フィルから『発情期に入った』と連絡を受けた。

 もうリスティアに精は与えた。あとはフィルで解消するとしよう。

 比較すると分かる、フィルの発情期は凄まじい。強く香る月下美人のフェロモンで、ラットを起こしたマルセルクは、気の済むまで欲を吐き出す。抱いているのはフィルでも、思い描くのは愛するリスティア。

 フィルはリスティアとは違い、経験豊富で、どんな荒い抱き方をしても問題なく喘ぐから都合が良かった。
 当然ながら、嫌われようが別に構わない。不機嫌になられても物さえ買い与えれば途端に良くなる、単純で簡単なオメガ。それ以上でも以下でもなく、フィルの感情などマルセルクが気にすることは無い。


(……楽だ。性欲処理なのだから、当たり前か)


 それから、リスティアはまさか、マルセルクとの魔力の相性が悪いと訴えるようになる。衝撃を受けた。

 こんなにも愛しているのに、こんな不幸があるとは思ってもみなかった。それならば婚姻前に少しでも試しておけば……とも一瞬考えて、やはりやらなくてよかったと思い直す。相性が悪くとも、リスティアと結婚する以外の選択肢はないからだ。

 それでも健気なリスティアは、マルセルクと一緒に寝たいなどと言うものの、それでは自分の方が暴発しかねない。リスティアの前では常に堂々とした格好の良い王太子でいたい。理性を失いリスティアに乱暴を働くなど、想像すらしたくない。だから、断った。

(決して、面倒な訳ではない。そのはずだ)


 それから一年、リスティアはマルセルクの魔力に慣れるために奮闘してくれたが、結果は芳しくなく、もう、相性の悪さを感じさせない薬を飲んで、事に及ぶこととなった。



 久しぶりに発情期のリスティアを抱くと、薬のせいか、締め付けが悪かった。それに元々淡白なのと、人形のような美貌も相まって、気持ち良いのか良くないのか判別し難く、あまり盛り上がらない一夜を過ごしたせいで、……抱くのが苦痛になってしまった。

(私のせいでは、ない。リスティアの薬の……薬師団長のせい。薬が無ければ……そういえば、最近はリスティアのフェロモンをあまり感じなくなったな)


 愛している。心から愛しているのに、身体が反応しない。
 番のリスティアよりも、フィルのフェロモンの方が強烈に効く気がする。

 頭の中では、己が矛に穿たれて喘ぐリスティアの痴態を思い描けるのに、現実はそうではなかった。そんな現実ものは直視したくなくて、マルセルクは空想上のリスティアを抱きながら、フィルに放つ。抱くというより、入れて、出す。

 フィルには監視が付いていて、学生時代とは違い他の男と一緒に楽しむことは出来なくなった。

 一対一でフィルを抱くのは、楽ではあったものの刺激に欠けていたため、他の者も戯れに呼びたかった。『せめてリスティア様か、フィル様どちらかが子を孕むまでは』と大臣どもに懇願されて我慢をしていた。

 フィルの子など不要なため、避妊薬を飲ませて。














『殿下、リスティア様が……ここだけの話、番欠乏症の予兆があります。触れ合うようにして下さい、出来るだけ長時間』

『何も挿入だけが性行為ではないのです。リスティア様を高めて差し上げることだけでも……』

『何回言ったら分かるのですか。リスティア様の命に関わるのですよ!』


 そう喚く薬師団長がうるさかった。触れ合えば、絶対に欲しくなる。抱きたくなる。しかしそれはリスティアにとって害悪なこと。己の子種を注ぐと吐くなんて、悲劇でしかなかった。
 リスティアを高める?どうやって、この矛を使わずにどうやってするんだ?マルセルクはいつだって奉仕される側だ。


 番欠乏症など、大袈裟だった。あれは犯罪に巻き込まれて噛まれ、その後番から抱かれずに長期間放置されたオメガや、無責任なアルファに番を解消されたオメガのかかるもの。

 それと違い、自分はきちんと、発情期に一度は抱いている。正直言って、あまり良くはないがリスティアのために。毎晩晩餐も共にし、手に触れたり頭に触れたりもする。


(薬師団長はリスティア贔屓が過ぎる。誇張するんだ、いちいち)


 結局、リスティアは孕まなかった。『もしや殿下の子種に問題が?』などと言われ始めた。
 不安を抱いたマルセルクは、フィルの方も解禁すると、……すぐに孕んだ。

(良かった、やはり私は問題無かったのだ)

 そう思うと、リスティアが苦労をする必要もない。その頃のリスティアは、どんどん痩せていくのに、孕むやすくなるという薬や薬草茶、謎の置物や体操なども取り入れていて、気の毒だったからだ。

 そうだ、この子供を養子にすればいい。マルセルクとて王妃と血は繋がっていないが、ちゃんと子供として愛された。それと同じ事。

 リスティアはただ、安心して愛されていればいいのだ。痛い思いなどせず、子供も持てる。

 そうしてフィルの子を養子にしたことが、リスティアにどんな気持ちを抱かせるのか、考えもせずに。






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