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第三章 三人の卒業、未来へ
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しおりを挟む「子供……?あなたの醜悪な願いを、子供のせいにするのはいかがなものかと」
「煩い!うるさいうるさい……いつもいつも!気にしてませんよ、みたいな顔をしやがって!お前ら、こいつを全員で嬲って『死なせて下さい』って言うまでずっと犯してやって!あ!ふふ、そうだぁ、全員の排泄物もくちに入れてやりなよ、上でも下でも!」
「へへっ!なんでもありってことか。そりゃあ大好物だぜ」
「得意分野だ。久々に滾るな」
「それも、ぴかぴかのオメガだ。くぅ~っ、これで金も手に入るなんて、最高!」
フィルは高らかに笑うと、部屋の隅にあった朽ちかけた椅子に腰掛ける。どうやら、高みの見物を決め込むようだった。
リスティアには、フィルの言うことの半分も理解出来なかった。何故、そこまで人に憎悪を持つことが出来るのか。……フィルと関わった時間は、そう多く無いのに。
しかしこちらもそう簡単にやられる筋合いはない。
最初に手をかけてきた男は、見えない壁に阻まれて、怯む。
「なんだこりゃ……?」
「アイツ、なんか持ってっぞ!」
「触れねえ!」
戸惑いは次第に怒りへと変わり、よってたかってガンガンと叩かれる。至近距離で浴びせられる怒声に恐怖を感じながらも、絶対に離すものかと魔道具を抱いた。
結界への攻撃が激しければ激しいほど、魔石の魔力を喰う。十数人の男たちが叩いたり蹴ったりしているのだ、みるみる減っていくのが分かる。
(……これ、夜明けまでに持つかな……)
せめてもう一つ、持ってくれば良かった。三人分の衣装に隠しポケットを付けるのに、あまり時間をかけられなかったのだ。そのため容量が少なかった。
「オラァ!自分から出てくれば優しくしてやっぞぉ!」
「そうだ!ほら、見えるか?この立派なやつで、一晩中ヨガらせてやるよ!」
結界越しとは言えど、手を伸ばせば届く距離で陰茎を取り出し、見せつけるように扱き始める男もいた。いろんな男が逸物を硬くして、リスティアを嫌な目で見ている。
ゴブリンより、オークより、余程、気持ちが悪い。欲望に染まった醜悪な顔。
ああ、まるで、マルセルクの精を受けた時のような気持ちの悪さを思い出してしまうくらいに、気分が悪い。
そんな時、チェチェがリスティアの頬をちろりと舐めた。安心させるように、ゆっくり、優しく、小さな舌で一生懸命に。
(そうだ!大丈夫。落ち着いて、冷静になれ。魔石の魔力が切れる前に、結界を構築しておけばいい)
光属性の高等魔術だ。使ったことはないが理論は頭に入っているし、出来ない訳ではないはず。チェチェのふわふわの体温に励まされて、集中しようと目を閉じる。
「も~、なんなのぉ?早く叩き割っちゃえばいいじゃん~!そいつが泣き喚くところが早く見たいの!」
フィルが遠くから、焦れたように叫んでいる。そういえば、今日のパートナーであるマルセルクは、どこにいるのだろうか。
フィルを監視しておくべきじゃないのか。
仮にも妻が身重な状態なのに、どこにいるんだ!
周囲の声を拾おうとする耳のせいで、リスティアの集中は不安定になる。
「チッ……これが頑丈なんだよ!いや、でも、いつかは魔力も切れるだろ」
「そう~?早くねっ!ぼく、わくわくするぅ~♡ぐっちゃぐちゃにしてあげてね!」
「任せろ!ヒヒッ!こんな上玉だ、たっぷり可愛がってやるよ」
リーダー格と思われる男は、一際体格が良かった。もしかして、アルファかもしれない。
恐る恐る見上げると、ゾクリと鳥肌がたった。
にやりと笑ったその男から、フェロモンが放たれる!
「か、は……っ」
脳を直接打撃されたような衝撃を受ける!
なす術もなく地べたに這いつくばった。運良く、魔道具を胸の下に敷いたおかげで、結界は無事だった。それでも呼吸すらままならない。
ひゅーっ、ひゅーっ、と変な音が肺からする。四肢に全く力が入らないし、平衡感覚を失っていた。
(これが、威嚇フェロモン……!)
「お?睨む余裕があるとはな。気の強い奴、大歓迎だぜ。調教しがいがある」
「こん、な……っ、重、ざい、を……っ」
「ふはは、いまさらだぜぇ……ってな!」
その男は、中に人間がいるというのに、全く手加減せずに剣を振り下ろした!
ガキィィン!
「ヒッ……」
(だ、大丈夫、まだ。大丈夫なはずだ……っ!)
魔道具に示された、『残り耐久効果』がガクッと減った。あれをずっとやられれば、一時間も経たずに割れるかもしれない!
「いいねぇ!やっちゃって~!腕の一本や足の一本くらい、無くなっちゃってもいいし~!」
「……っフィル、殿……!?」
呑気な声援に耐えかねて叫び返せば、美少年は頬に手をやって、ふっと微笑んだ。
「え?だって、どうせあんた死ぬんだし」
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