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第二章 二回目の学園生活

33 マルセルク side

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 何故、リスティアは自死してしまったのか。

 マルセルクは自問自答を繰り返し、一つの結論に辿り着いた。

 フィルとの子を、養子にしたからだ。


 リスティアはマルセルクの子を産めない。それなのに、ほとんど男娼と変わらないフィルの子を育てさせることで、彼の矜持を傷つけてしまったのだ。

 せめて性交で愛を伝えられれば良いのに、魔力の質の相性の悪さは、今回も同じだろう。薬師団長が言うには、これほど相性が悪いことも珍しい程に、リスティアへの体の負担は高かった。

 繊細なリスティアにそんな辛いことはさせたくない、という思いもあるが、それ以上に自分との行為が『辛いもの』と認識されていると考えると悲しいものがあった。常に望まれて与える立場のマルセルクには、耐えられなかった。

 リスティアを喜ばせたい気持ちはあるが、それは贈り物や言葉で愛を伝えればいい。

 子供は第二妃の役割にして、産んで貰う。フィルではなく、リスティアの友人の中からちゃんとしたの・・・・・・・を選んでくれれば、マルセルクはいつでも種付け出来るのだから。









 そう自信満々に向かったのに、リスティアの説得に失敗した。怒りに染まるリスティアは、感情が昂っていて、マルセルクの考えを提案している場合ではなかった。


 こればかりは時間をかけてアピールしていくしかない。


 リスティアに言われた、『飾る用のおもちゃと、遊ぶ用のおもちゃ』の言葉は、半分正解で、半分不正解だった。

 フィルは遊ぶ用のおもちゃだが、リスティアは違う。
 リスティアは、マルセルクがマルセルクであるのに必要な部品そのもの。手に入れて初めて、マルセルクは完成するのだから。



 マルセルクに自覚はなかった。

 自分の『愛』がどれほど薄く、軽く、リスティアを得るためだけの虚構であることを。

 そうと気付かないマルセルクは、永遠にリスティアを諦められない。












 フィルはマルセルクの性欲処理に都合が良かったものの、やはり末端といえども貴族令息というのが良く無かった。そこは反省した。

 ただ、この先もリスティアと体の関係を結ぶのは難しい。であれば、新たな性欲処理係を見つける必要があった。今度こそ、貴族でない、野心もない、絶対に孕む事はない者を。


 後宮に閨担当の者を用意するよう命じると、すぐに用意できるのは一人しか居なかったらしい。

 それはフィルの前に抱いていた、ベータの男娼だった。大人しく、淡々と処理をするこの男のことを、マルセルクはつまらないとは思いつつ、久しぶりでいいかと思い抱いたところ、

 なんと、吐いたのだ。


 驚き固まるマルセルクを他所に、男娼は運ばれていった。
 その後、薬師団長から『魔力の質の相性が悪いようです。おかしいですね……以前はこんなことはありませんでしたのに』と言われて、マルセルクはピクリとした。


 まだ今回は、リスティアを抱いていない。しかし、おそらくあの男娼と同じことになりそうな気がする。

 つまり、これでは、まるで、


(私が悪いみたいじゃないか……?)








 悪い予感のしたマルセルクは、側近二人を呼び出した。

 こっそりと王城を抜け出し、三人で検証するため男娼館へと行く。
 顔を隠してはいるものの、仕草に滲み出す気品から、館主には複数人の男娼を紹介された。
 ずらっと並んだあらゆるタイプの男娼たち。当然、万が一にも孕まないよう、全員ベータだけ。


 側近らにも命じて、全員を代わる代わる抱いた。


 すると、マルセルクと騎士団長令息を相手にした男娼の中で、半数以上が具合の悪さ、吐き気を訴え逃げ出したのだ。

 宰相令息の方は、特に全員違和感ないようで、それよりも精力が尽きてしまい、後半は口付けによる魔力譲渡で相性を試していた。

 具合の悪くならなかった男娼たちは、常に人気上位の男娼だった。『あの子達、軟弱ですみませんねぇ~』とへらへらと笑っていたが、マルセルクには、この者達の方が異常であることを、察知していた。

 媚の仕方、技術、喘ぎ方。皆似たり寄ったりの反応。そしてそれは、フィルもそうだったと思い当たった。フィルは貴族でいながら、プロの男娼と変わらなかったのだ。


(私は、もう、男娼しか抱けない……?それも、より多くと交わった、穢れた者としか)


 騎士団長令息は何も気付かず、喜んで腰を振っている。宰相令息は、勘付いて顔を青くしていた。


「まさか……フィルの奴が、何か病気を持っていたのでは……」

「いや、薬師団長が健康には何も問題がないと言っていたんだ。それは無いはずだが……このままでは、私は貴族と結婚出来ないということになる」

「白い結婚、は離縁事由になりますからね……殿下、まずいことになりましたね」

「お前、フィルを何回抱いた?」

「私ですか?さぁ、数えてはいませんが、大体お二人が相手している間に口でやってもらって、その後復活しないことが多いので……お二人の回数の半分くらいでしょうか」


 マルセルクは頭を抱えた。
 リスティアを苦しめた原因が、自分にあるなんて。どうしても認められない。

 以前は何の問題なく接合できた男娼が、ダメだった。心当たりはフィルと何回も性交したことしかない。原因は、フィルに違いない。フィルのせいで何もかもおかしくなったのだ。


 貴族の令息令嬢で、フィルと同程度に性に奔放な者など殆ど居ないし、マルセルクもそのような者を妻にするのは嫌だった。
 そうするとつまり、今後、マルセルクの子はフィルや愛妾との間にしか産まれない。そうなると、リスティアを説得する材料もなくなってしまう。


「薬師団長!私は一体どうすれば……!あいつのせいで!クソッ、もう一度まっさらになる薬はないか!?」

「……?何を仰っているのでしょう。落ち着いてお話し下さい、殿下」




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