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第二章 二回目の学園生活
24 フィル・シュー side
しおりを挟むぼくはオメガ男娼の子供だった。産み親が病気で死ぬと、父親だと言う男爵がぼくを引き取りに来た。本当に親かどうかは知らない。似てないもの。
12を過ぎた頃だ。発情期はまだだというのに、男爵は僕を嬲った。
元々母に生き写しのぼくをヤるために引き取ったらしい。
笑っちゃうくらいド下手くそだった。ぼく、娼館でもお触りはされていたのに痛いくらい。
でも、すぐに産み親を思い出す。生まれた時からソノ場面は見て育ってきた。ぼくの親は、他の男娼より数段上手で、誇りだった。そのイメージはばっちりだから、それとなく誘導して、大事に抱かせるようにすればいい。
ぼくの顔は最高に可愛いのと、身体も最上級のものを遺伝されていたおかげで、男爵はぼくを溺愛するようになった。その結果、居候ではなく、養子にしてくれた。
ぼくには天賦の才能があるようだ。使わないなんて勿体無い。
発情期がくると、花紋まで現れた。これは極上のオメガを意味していて、アルファによって取り合いになる程価値が高まる。
その頃すでにセックスを嗜んでいた僕は、たまたまその時抱かれていた男で開花した。呆気なく。まったく、この時ばかりは金をせしめたかった。勿体無い。
男爵は僕の体に溺れてはいるものの、最終的には良いところの坊ちゃんに嫁いで欲しいらしい。それはぼくの願いと合致する。
ぼくら花紋付きオメガには、たくさんのアルファとの見合いを斡旋される。けれど国から紹介されたのは、商家、男爵や子爵家などの、身分に合ったアルファばかり。嘘でしょ、ぼくのこの容姿と、花紋もあるのに、もっと上のアルファじゃないとさぁ。
やっぱり高位貴族の優良アルファと結婚して、一生遊んで暮らしたいよねぇ!
平民から練習して、男爵令息、子爵令息を落としていく。
良心の呵責?ある訳ない。恋人を取られたって?恋人はモノじゃない、心があるんだよ、おじょーさん。つまり、心がキミから離れただけってこと。ぼくのせいじゃない。
ぐうの音も出ない正論に、女の子やオメガたちは顔を真っ赤にして去っていく。あははっ!おかしい!自分の魅力不足に、今頃気付くなんてね!
伯爵令息、侯爵令息も落とす。彼らは非常に太っ腹で、少しリクエストに応じただけで、なんでも買ってくれた。ぼくの美肌を保つためのクリームも、高級香油も、宝石だってなんだって、ぼくのもの。
婚約者を誘惑するな?えっと、誘惑してません、ぼくの溢れた魅力に、釣られただけ。
婚約者がいるならちゃんと手綱を引いておくように!ぼく、か弱いからさぁ、婚約者に嫌がらせされたら病気になっちゃう。
そう言って次に会った時には、婚約が解消されていたのには笑った。だってぼくの本命じゃないのに、ご苦労だね?
綺麗な顔の婚約者が、ぼくを見て嫉妬に歪ませるんだ。その醜い顔を見るのが、めちゃくちゃ好き。元が綺麗であればある程、腹が捩れるほど笑えた。
婚約解消には違約金みたいなのを払わなくちゃいけなくて、それは令息が払ってくれる。そしたらちゃんと、ぼくも相手をしてあげる。
そしてついにぼくは、この国の王子、マルセルク様にも見初められてしまった。マル様に抱かれた時は、うっかり本気で昇天するかと思った……!
やっぱりめちゃくちゃ格好いいし、身体もイイ。アルファの匂いも最高。ちょっと荒いけど、箱入りだから仕方ないよねぇ。それはいくらでも調教出来るもの。
番にはなりたくないけど、結婚はしたい。マル様って王太子になるって言うんだから、この国の中で一番上ってことだよね?
ぼくの本命は、マル様に決めた。そうすると、邪魔なのはその婚約者、リスティア。
『私は清楚です』みたいないけすかない顔をしたオメガだ。オメガのくせに成績も良く、オメガのくせに鍛錬して筋肉も付けて、オメガのくせに誰からも侮られていない。薬師によって花紋持ちだと診断されているオメガで、共通点がある故に余計に気に食わない。
なぁに、あれ。見ているだけで苛々する。
マル様を奪ったら、あの顔を真っ赤にして黙って逃げるんだろうか。それって……最高に面白い。スカッとしそうだ。
運の良いことに、マル様との身体の相性は最高で、大勢に抱かれるぼくを見て興奮もしている。つまり、ぼくはマル様に限定しなくてもいい!趣味嗜好がこんなにぴったり合うなんて、これは運命なんじゃないかな?
リスティアが一番ダメージを食らうタイミングと言ったら、奴が噛まれた後に違いない。オメガは噛まれたら終わりだ。そのアルファに一生縛り付けられ、人生を棒に振る。
そんなの愚か過ぎてぼくには出来ないけど、リスティアみたいな世間知らずのオメガなら、マル様に捧げるはずだ。
その後、愛しのアルファがぼくに夢中だと知ったら……どんな顔をするだろうね?
そんな矢先。
避妊はしていたのに何故か妊娠していた。ちょっと計画は狂ったけど、まぁいい。だって直感的に、マル様の子だと分かるもの。流産しない時期に入るのが待ち遠しかった!
そしてやっと安定期になり、嬉々としてリスティアに言えば……悔し紛れか、祝福してくれると言う。
信じてはいない。けれど、リスティアが本当にそうしてくれるのならぼくの思い通りだし、そうでなくとも、王族の子を宿すぼくに下手なことは出来ないもの。この腹の子がいるだけで、ぼくは無敵。
リスティアと婚約は無くなったし、あとはマル様と婚約するだけ。
ふふっ!リスティアは強がってるけど、平民になるんだって!一方、ぼくは王妃!
それなのに、リスティアは顔を歪めなかった。それがどうしても気に食わない。……ふん。権力を持ったら、リスティアは散々不細工な男に嬲らせて弱らせてから、殺してもらおっと!
そう思ってウキウキして、リスティアの澄まし顔を眺めていたのに――――――――
……なんで、ぼくは、ここにいるのだろう?
一見普通の部屋に見えても、窓には格子が嵌っているし、扉は二重扉で、こちら側にノブが付いていない。
衣食住に不足は無いし、薬師が毎日やってきては『順調です』と言う。
けれど、誰にも会えない。
最後に会ったマル様は、人が変わったように恐ろしかった。ぼくをリスティアの前で、見せ物のように、道具のように扱って、ぼくの心は傷ついた。なんなの?ぼくは、あんな風に扱われていい存在じゃない。愛される存在なんだ!
だからマル様でなくてもいい。誰でもいい。
三日と開けず誰かと性行為をしていたぼくの体は、疼いていた。
時折食事を運んでくる人も、世話をしてくれる人も、全員女なんだ。薬師は枯れた爺さん。
なんで!?
怒ったぼくは、食事を摂らないようにした。
すると薬師がやってきて、『意図的な飢餓状態は、王族の子を殺害容疑で処刑になります』と真顔で言う。ぼくは諦めて食べることにした。
じゃあ、滑って転んで頭を打ったことにしよう!
そうすれば男二人以上で運ばないといけないよね!?
気絶したフリをしていたら、侍女がやってきて、また出ていく。
しめしめ、と思ったら、またいつもの薬師がやってきて、ぼくの耳元で『王族の子殺害……ですか?』と囁くもんだから、飛び起きた。
ぼく自身より、子供の方がそんなに大事?
でも、そのうち殿下の側近たちが、夜中に忍び込んでくるようになった。善行を積んでおいてよかった!二人に同時に犯されて、ぼくの身体はすっかり元気になった。
ちょっとここの狭さにさえ耐えれば、ぼくは、マル様の妻としてお披露目されるはず。最高の成り上がり!
マル様のことはすっかりイヤになっちゃったけど、元々ぼくはマル様だけじゃ満足出来ないし、それは彼にだって知られていること。
つまり、肩書きは王妃で、実際はいろんな男と楽しめるってこと!?
それって最高過ぎる……!
ふふふ。待っててね、目障りなリスティア。
必ずぐちゃぐちゃにしてあげる!
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