悪役令嬢は、もう推しません

カシナシ

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番外編

聖女・ユリアナ

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主人公ヒロイン 聖女×××(デフォルト:ユリアナ)
 可愛らしい桃色の髪と、青空の瞳を持つ美少女。か弱く儚げな容姿だが、最近まで平民だったため天真爛漫で元気いっぱい!そんな彼女に元気付けられる令息が多数。持ち前の明るさで、攻略対象たちの憂いを晴らすぞ⭐︎】






 カナリアが奪われた後のことは、よく覚えていない。


 気が付けば、シンプルな箱のような牢屋にいた。汚くはないが、何もない。目に痛いほどの白に囲まれて、ユリアナは椅子に両手両足を縛り付けられていた。


「本来なら、侯爵令嬢を差し置いて王子を略奪した平民――――というだけで処刑ものだが、その時点ではお前はまだ、聖女だった。王族と結婚させる価値があった」


 顔を覆面で隠した、誰かが言う。手には怪しい道具が握られて、迷いのない手付きで、地面に何かを描いている。


「だが、ろくに聖歌の練習もしなかった。聖歌の効果も著しく低かった。聖女としての資質を問われている時に……あれだ」


 ハァ、とため息が聞こえた。それから、キーッ、キキ、という耳障りな音も。ユリアナを取り囲むようにして、複雑な線が書き込まれていた。


「なに……あんた、何を、してるの」

「聖歌の効果はもう無かったことから、あの侯爵領に着く前からあんたは聖女じゃなかったんだ……それなのに、侯爵令息を襲おうとしたな。侯爵令嬢を嘘の誹謗中傷で傷付けた上、民を煽動して殺させようとした」

「違うわ!トリスタンはあたしのことが好きなんだもの!それなのにあいつが、ダリアローズが何かしたのが悪いの!あいつさえいなければ、トリスタンはあたしのものになっていたのよ!」

「何か、とは?」


 男は模様を描く手を休めないまま、聞き返してくる。これは助かるかもしれない、とユリアナは気色ばんだ。


「ほら、……闇魔法、だっけ!?ダリアローズが使えるやつよ!それでトリスタンの意思を奪って、あたしの裸を見ても何も思わないように……」

「……くだらない。くだらなすぎる……。魔法学を取っていなかったのか?人の意思を奪うなんて魔法は、無い。精々、その場限りの魅了くらいだろう」

「そ、それよ!ほら!あるんじゃない!」

「侯爵令嬢が魅了を使っていたとして、その時側にいなかったのなら、効力は無い。つまり、あんたの裸に、単に唆られなかったってだけの話だ」

「は……」


 ユリアナは絶句した。考えてみたこともなかったのだ。自身に絶対の自信があった。

 可愛らしい桃色をしたふわふわの髪に、大きくくりんとした空色の瞳で、か弱く健気な令嬢。それが全て。完璧なヒロインじゃないか。

 更に、トリスタンは攻略対象。難易度は確かに高いが、ヒロインなのだから絶対に悩殺されるに決まっているのに……


(まさか。ダリアローズのことを好き……とか、言わないよね?あんな、悪役令嬢を……?)


 呆然としたユリアナが黙った間に、男は淡々と、ユリアナに現実を突きつける。


「まあ、あの侯爵令嬢の方は知らんが、令息の方は民衆に向かって熱烈に愛を叫んだらしい。魅了の魔法はぼうっとしちまうから、そんなことは絶対に出来ない」


 魅了の魔法は万能ではない。精々数秒間、自身に目を向けさせるくらいのこと。難しい割に効果はイマイチで、まだ媚薬を使った方が手っ取り早い。すたれつつある魔法だ。


「そんな……そんなの、嘘よ。嘘。嘘に決まっているわ……」

「それにな、魅了のような禁制魔法は使えないよう誓約書を書かされるはずだ。特に優秀な魔法使いほど……あんたは違うか。……さて。出来たぞ。ユリアナ元聖女。殺人教唆と強姦未遂、その他の不敬も合わせて……声を奪う」


 床に描かれた模様がカッと光った。と同時にユリアナの首へ何かが巻きつく。苦しい。痛い。息が出来ない!!

 ジタバタと暴れるも、ソレは外れない。

 一瞬意識を失った後、パチパチと平手で叩かれて起きる。


「おい、起きろ」

「……!!っ、ゥ……っ!」

「よしよし、良い感じだ」


 もう、喉からは唸るような濁音しか出ない。まるで獣のようで、絶望した。

 男はまるで他人事だった。自分の仕事を讃えるように鼻歌を歌い出している。腹立たしくて悔しくてキッと睨むが、呆れたような声を出すだけだ。


「そんな腐った性根だから、聖鳥も逃げ出したんだな。納得だ」

「ぅぅううううう……ッ!」

「あんたの所業を知っているのは、パールブレス侯爵領の人間だけ。良かったな。犯罪者だとはまだ広まってない。これからは“小聖女”として一生を奉仕活動に捧げることだ。なに、代々の聖女もスピーチは好かんかったから、声が出なくとも問題はない。励めよ」


 ユリアナははくはくと口を震わせた。

 もう、聖歌は歌えないどころか、声も出せないのだ。

 最悪なことに、呪いの効果がある方法で声を奪われた。それはダリアローズが聖歌を歌ったとしても治らない、犯罪者用のものだった。








 ユリアナの私物は、ひとつも無くなった。

 脱走防止のために、鉄格子の嵌められた、顔も出せないほどの小さな窓しかない部屋。広さも王城にあった部屋とは比べ物にならないほど狭く、衣服はシンプルなものしかない上、全て自分で洗わなくてはならない。

 腕に嵌められた腕輪だけは、とても綺麗だ。レオナルドの色の宝石がふんだんに使われたものだが、ダリアローズのお下がりという点と、魔力封じと、教会敷地内から出ると警報の鳴る機能が付いている点が気に食わない。



 レオナルドはいつのまにか王位継承権を剥奪されて、教会に属する神官となっていた。王自らレオナルドと貴族との接触を禁じたことから、もうコネクションも使えない。ただのレオナルドだ。

 レオナルド神官は、もともと王族用に用意されたそれなりの部屋に住んでいる。食事や衣服などはその他神官と同じ扱いだが、部屋だけはこれまでの功績に免じて使用を許されたらしい。不公平だ。


 そのレオナルドは、急速に老け込み、かつての美貌は無い。性欲減退薬の影響らしい。髭や眉毛は伸び放題で、頭髪は薄く、どこか達観したように遠くを見るようになり、俗に『長老化現象』と呼ばれる副作用のようだった。


 常に蝋のような蒼白な顔でやってきては、食べ物やなにやら慌ただしく世話を焼いて帰る。一応まだユリアナとは夫婦だというのに、一刻も早く立ち去りたいかのような顔をして、そそくさと逃げていくのである。


(許さない。レオ様、あなたとあたしは夫婦なのに!)


 今日も足早に逃げようとするレオナルドに、抱きついた。欲情している訳では無い。ただ、愛して欲しいだけだ。レオナルドには、自分を愛する義務がある。極めて正当な願いだ。

 よろめいた体は以前よりも痩せていたが、ユリアナは気付かない。どんどんと胸元を叩き、自らの服をちらりとめくって、アピールをする。

 トリスタンに傷付けられたプライドを、回復させて欲しかったのだ。

(抱いてよ、愛してよ……っ!どうして抱いてくれないのっ!夫婦でしょう!もうあたしにはレオ様しかいないのにっ!)


 レオナルドははぁ、と息を吐いた。そして、ユリアナの手を引き剥がし、衣服を直す。まるで、見たくもないもののように。


「やめてくれ……ユリアナ。もう、そんな気にはなれない……」

「……っ!?」

「君は、一度聖女だったのに剥奪されたんだ。そんなこと、歴史でも見たことがない……君の、金色のカナリアを肩に乗せて歌う姿が、何より神秘的で綺麗だったのに……」

「……っ、……っ!」

「聖女だから、神の使徒という特別な子だからこそ、愛したんだ……。少しばかり頭が悪くても、我慢した。でも、聖女でなければ、何者なんだろう?ただの頭の悪い平民じゃないか……。私は王子だったのに、平民の世話をしなくちゃならないなんて、これ以上ない屈辱なんだよ。それなのに……はぁ……君と来たら、呑気に貧相ひんそうな身体を押し付けて……」


 ユリアナは固まった。貧相、という言葉が上手く理解出来なかった。

 ユリアナが話せないことをいいことに、やはり遠い目をしたレオナルドが、つらつらと愚痴り出す。


「ダリアはとてもスタイルが良かった……それに化粧が濃かっただけで、落としたら、どうだ。君より、何倍も可愛かった。……それに金色のカナリアも得て、今や大聖女。奉仕活動は他人ユリアナに任せて、普段は領地で忙しくしているらしい。最高の妻だよな……。はぁ……どうして君なんかを優先して手に入れてしまったのだろう。先にダリアと結婚しておけば……………………」


 そこでレオナルドは突然ぶるりと震え、言葉を切った。何か恐ろしいものでも思い出したのか、不自然に話題を変える。


「私は、魔除けの人形作りの才能があるらしいから、神官として神に身を捧げるよ……。君の世話役さえなければ、案外教会も悪くない。君も暇なら、そうしたらいいさ……」


 そう言って、どこを見ているか分からない目のまま、去っていった。


 残されたユリアナは、ただ立ち尽くすしかなかった。


(あれ……おかしいな……ハッピーエンドを迎えたはずだったのに……なんで……?)







【攻略判定:レオナルドルート/ハッピーエンド⭐︎】


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