14 / 72
本編
14
しおりを挟む
「ん……」
あまりの寝心地の良さに微睡んでいた。
ポカポカと暖かな陽だまり。
ゆらり、ゆらら。
ゆりかごにいるような心地よい揺れ。
花の蜜のような香りや、瑞々しい果実のような香りが鼻をくすぐる。
サワサワと葉の擦れ合う音や、小鳥の鳴き声が聞こえ、時折、頬を撫でる柔らかな感触もする。
ずっと眠っていたい。
ころり。
寝返りを打って、またうとうととする。
慈しむような撫で方がくすぐったい。繊細で柔らかなふわふわの毛で触れられているよう。
とても優しい。
小さい頃、まだ、鍛錬が始まる前の、母代わりのシスターのような優しさだった。
………。
起きたくない。
起きたくないけれど、何度も寝たせいでもう眠れそうになかった。
恐らく長時間寝ているのに、不思議とお腹は満たされたまま。排泄の必要も感じない。
いよいよ観念して、僕は恐る恐る目を開けた。
少し見上げた頭上にいたのは、空を埋め尽くす程大きく葉を広げた巨樹。
その枝の中の一本が、まるで手の様に優しく頭を撫でていた。
葉には色々な種類があるらしく、僕を撫でていたのは中でも一番ふさふさした滑らかな毛皮のような葉だった。
がばっと身を起こすと、手伝うように何本も枝が伸びてくる。どうやら、僕の体より何倍も大きな一枚の葉の上で寝かされていたようだった。
葉には産毛のような毛が生えており、これが極上の寝心地の理由みたい。
その葉は器の様に窪んでいるため、下がどうなっているのか分からない。
相当高い所にいる気がして、登って見るのは諦めた。
『起きたのね』
「!!」
『安心して、かわいい子。もう身体は平気かしら?』
頭の中に届くような、優しい声がする。
見渡しても何も見えないが、ピンッ!と姿勢を正しくした。
何となくそうしなければならないと、本能が告げている。
すべての教会は、国内外関わらず、リュミクス神、女神を信仰している。
そのすべての教会に建造された、女神像を彷彿とさせる穏やかな声だった。
「シュリエルと申します。何だかとても……満ち足りていて、ありがとうございます……その、」
『わたしのことは、あなたなら好きに呼んでいいわ、シュリエル』
「えっ……と、であれば。そのお優しいお声から、リュミクス神様とお呼びして宜しいでしょうか……?」
『ええ、結構よ。それより、わたし、とても驚いたの。かわいい子が、こんなに傷付いてしまっていて……』
「傷付く……?怪我は、しておりません」
『違うわ。心が、傷だらけで欠けてしまっている。栄養不足の体は癒せたけれど、心はどうにも出来ないの……なにがあったの?』
女神の様に優しい声は、包み込むようだった。いつの間にか、僕の周りにはスイちゃんたちやハク、ウォルが寄り添って、精霊たちも徐々に徐々に増えていた。
光の海の中で揺蕩うようで、心地よくて。
自然と心を開いていく。
ぽつり、ぽつりと、僕のことを話す。
目の前に誰かいる訳ではないそれは、拙い、独白に近かった。
聖女のこと。
聖属性の力のこと。
婚約者を、とられてしまったこと。
それは、塞がってもない傷を再度抉るような痛みを伴った。心が、彼女の言う通り疲弊し摩耗していることを自覚した。
静かに話を聞き終わったリュミクス神様は、ほう、と息を吐き出す。
『ごめんなさいね。本当は、寝ている貴方の記憶を読ませてもらって、知っているの……人間は、あれを聖属性と名付けているのね……』
「リュミクス神様は、他に何と呼んでいらっしゃるのですか?」
『わたしや精霊たちはこう呼ぶの。【夢見の力】と』
「ゆめみ……?」
『あれは、この世界でごく稀に現れる【バグ】なの。そうね……魂の浄化をミスした際に、偶然的に持ってしまった力、かしら』
「???」
よく分からなかった。
首を傾げる僕に、リュミクス神は御伽話を聞かせる様に教えてくれた。
人の魂というのは、死ぬたびに浄化し、またやり直す。同じ世界に何度も生まれ変わることもあれば、他の世界を点々とすることもある。
それは神様間でやりとりするのだという。
引き受けた魂を、自分の世界で誕生させるのだが……前の神の浄化が不十分な場合、このような【バグ】が起こる。
プリシラ嬢は、そのバグによって【夢見の力】を手に入れた。【夢見の力】は夢を見させる力であり、厳密に言えば癒しの力ではない。
事実、怪我を治せるのは痛みの代償の代わりに、寿命、すなわち生命力を消費しているから。
周囲にまで癒しを振りまけるのは、『幻覚』である。
「寿命を消費……!?そんな恐ろしい魔術があるのですか!?」
『彼女が夢見の力を使う時は、魔力を消費するけれど、それだけでは夢から覚めてしまうでしょう?だからその夢を現実にさせるために、生命力を使わせるの。それも夢見の力独特の対価ね。ただし、その生命力と関係しない、身体以外の願望はどうにも出来ないわ。』
「それでは、呪いの解呪は……」
『呪いは生命力を使って常時打ち消しているだけで、生命力を使い切ればまた呪いが復活するでしょう。もっとも、その時には生きていないのだけど』
「そんな……むしろ、悪化させているような……」
『そうね。でも、夢見の力を使うには、魔力をもっていることと、夢を見ていさえすればいい。魔物だって、魔法を使うものがいるでしょう?言い方は悪いけれど、原理は同じ。だから、彼女は学ぶこともなく、本能的に使えてしまう。彼女自身夢見がちなのも作用して、常に微量、香水が漏れているようなものかしら』
つまりは、プリシラ嬢の魔力では幻影だけ。しかしその幻影にあわせて身体を作り替えるのは、当人の寿命を使う、ということ。
だからか。
モノは夢を見ないし生命力もないから、彼女の力が及ばなかった。
「無自覚、なのですね。聖女様は」
『そうとも言い切れないわね。自分は周りに癒しを与えている、と強く信じていること。それが原因。そして貴方を敵視し、癒しは与えたくないと思っているから、貴方には感じ取れなかったのではないかしら』
「それで……!納得です」
『本来なら少しいい気分になれたり、夢で会いたい人に会えるという、なんて事のない力なの。前にその力が現れた子は、もともと水の巫子に憧れていた子だった。そして人をたくさん癒せる力だと思い込み……その結果、多くの人の寿命を縮めてしまった』
「あ……」
聖女の治療を受けた人と、受けていない人の寿命なんて、誰が調べるだろう。それも遠い昔、他国のこと。それは……分からなかったと思う。
「このことは、広めても良い情報なのでしょうか?」
『…………そうね。でも、貴方はあの世界に、また戻るの?そんなに傷つけられて、ぼろぼろになってまで、あの世界に戻る必要はあるのかしら?』
心から心配する声。なのに、ぐさりと突き刺さるような言葉。
今まで見たくなかった現実を突きつけられた瞬間だった。
あまりの寝心地の良さに微睡んでいた。
ポカポカと暖かな陽だまり。
ゆらり、ゆらら。
ゆりかごにいるような心地よい揺れ。
花の蜜のような香りや、瑞々しい果実のような香りが鼻をくすぐる。
サワサワと葉の擦れ合う音や、小鳥の鳴き声が聞こえ、時折、頬を撫でる柔らかな感触もする。
ずっと眠っていたい。
ころり。
寝返りを打って、またうとうととする。
慈しむような撫で方がくすぐったい。繊細で柔らかなふわふわの毛で触れられているよう。
とても優しい。
小さい頃、まだ、鍛錬が始まる前の、母代わりのシスターのような優しさだった。
………。
起きたくない。
起きたくないけれど、何度も寝たせいでもう眠れそうになかった。
恐らく長時間寝ているのに、不思議とお腹は満たされたまま。排泄の必要も感じない。
いよいよ観念して、僕は恐る恐る目を開けた。
少し見上げた頭上にいたのは、空を埋め尽くす程大きく葉を広げた巨樹。
その枝の中の一本が、まるで手の様に優しく頭を撫でていた。
葉には色々な種類があるらしく、僕を撫でていたのは中でも一番ふさふさした滑らかな毛皮のような葉だった。
がばっと身を起こすと、手伝うように何本も枝が伸びてくる。どうやら、僕の体より何倍も大きな一枚の葉の上で寝かされていたようだった。
葉には産毛のような毛が生えており、これが極上の寝心地の理由みたい。
その葉は器の様に窪んでいるため、下がどうなっているのか分からない。
相当高い所にいる気がして、登って見るのは諦めた。
『起きたのね』
「!!」
『安心して、かわいい子。もう身体は平気かしら?』
頭の中に届くような、優しい声がする。
見渡しても何も見えないが、ピンッ!と姿勢を正しくした。
何となくそうしなければならないと、本能が告げている。
すべての教会は、国内外関わらず、リュミクス神、女神を信仰している。
そのすべての教会に建造された、女神像を彷彿とさせる穏やかな声だった。
「シュリエルと申します。何だかとても……満ち足りていて、ありがとうございます……その、」
『わたしのことは、あなたなら好きに呼んでいいわ、シュリエル』
「えっ……と、であれば。そのお優しいお声から、リュミクス神様とお呼びして宜しいでしょうか……?」
『ええ、結構よ。それより、わたし、とても驚いたの。かわいい子が、こんなに傷付いてしまっていて……』
「傷付く……?怪我は、しておりません」
『違うわ。心が、傷だらけで欠けてしまっている。栄養不足の体は癒せたけれど、心はどうにも出来ないの……なにがあったの?』
女神の様に優しい声は、包み込むようだった。いつの間にか、僕の周りにはスイちゃんたちやハク、ウォルが寄り添って、精霊たちも徐々に徐々に増えていた。
光の海の中で揺蕩うようで、心地よくて。
自然と心を開いていく。
ぽつり、ぽつりと、僕のことを話す。
目の前に誰かいる訳ではないそれは、拙い、独白に近かった。
聖女のこと。
聖属性の力のこと。
婚約者を、とられてしまったこと。
それは、塞がってもない傷を再度抉るような痛みを伴った。心が、彼女の言う通り疲弊し摩耗していることを自覚した。
静かに話を聞き終わったリュミクス神様は、ほう、と息を吐き出す。
『ごめんなさいね。本当は、寝ている貴方の記憶を読ませてもらって、知っているの……人間は、あれを聖属性と名付けているのね……』
「リュミクス神様は、他に何と呼んでいらっしゃるのですか?」
『わたしや精霊たちはこう呼ぶの。【夢見の力】と』
「ゆめみ……?」
『あれは、この世界でごく稀に現れる【バグ】なの。そうね……魂の浄化をミスした際に、偶然的に持ってしまった力、かしら』
「???」
よく分からなかった。
首を傾げる僕に、リュミクス神は御伽話を聞かせる様に教えてくれた。
人の魂というのは、死ぬたびに浄化し、またやり直す。同じ世界に何度も生まれ変わることもあれば、他の世界を点々とすることもある。
それは神様間でやりとりするのだという。
引き受けた魂を、自分の世界で誕生させるのだが……前の神の浄化が不十分な場合、このような【バグ】が起こる。
プリシラ嬢は、そのバグによって【夢見の力】を手に入れた。【夢見の力】は夢を見させる力であり、厳密に言えば癒しの力ではない。
事実、怪我を治せるのは痛みの代償の代わりに、寿命、すなわち生命力を消費しているから。
周囲にまで癒しを振りまけるのは、『幻覚』である。
「寿命を消費……!?そんな恐ろしい魔術があるのですか!?」
『彼女が夢見の力を使う時は、魔力を消費するけれど、それだけでは夢から覚めてしまうでしょう?だからその夢を現実にさせるために、生命力を使わせるの。それも夢見の力独特の対価ね。ただし、その生命力と関係しない、身体以外の願望はどうにも出来ないわ。』
「それでは、呪いの解呪は……」
『呪いは生命力を使って常時打ち消しているだけで、生命力を使い切ればまた呪いが復活するでしょう。もっとも、その時には生きていないのだけど』
「そんな……むしろ、悪化させているような……」
『そうね。でも、夢見の力を使うには、魔力をもっていることと、夢を見ていさえすればいい。魔物だって、魔法を使うものがいるでしょう?言い方は悪いけれど、原理は同じ。だから、彼女は学ぶこともなく、本能的に使えてしまう。彼女自身夢見がちなのも作用して、常に微量、香水が漏れているようなものかしら』
つまりは、プリシラ嬢の魔力では幻影だけ。しかしその幻影にあわせて身体を作り替えるのは、当人の寿命を使う、ということ。
だからか。
モノは夢を見ないし生命力もないから、彼女の力が及ばなかった。
「無自覚、なのですね。聖女様は」
『そうとも言い切れないわね。自分は周りに癒しを与えている、と強く信じていること。それが原因。そして貴方を敵視し、癒しは与えたくないと思っているから、貴方には感じ取れなかったのではないかしら』
「それで……!納得です」
『本来なら少しいい気分になれたり、夢で会いたい人に会えるという、なんて事のない力なの。前にその力が現れた子は、もともと水の巫子に憧れていた子だった。そして人をたくさん癒せる力だと思い込み……その結果、多くの人の寿命を縮めてしまった』
「あ……」
聖女の治療を受けた人と、受けていない人の寿命なんて、誰が調べるだろう。それも遠い昔、他国のこと。それは……分からなかったと思う。
「このことは、広めても良い情報なのでしょうか?」
『…………そうね。でも、貴方はあの世界に、また戻るの?そんなに傷つけられて、ぼろぼろになってまで、あの世界に戻る必要はあるのかしら?』
心から心配する声。なのに、ぐさりと突き刺さるような言葉。
今まで見たくなかった現実を突きつけられた瞬間だった。
478
お気に入りに追加
5,280
あなたにおすすめの小説
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?
人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途なαが婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。
・五話完結予定です。
※オメガバースでαが受けっぽいです。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる