婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

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番外編

2 アルフレッド

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 アルフレッドは思い出しながら、ぽつぽつと話した。



 ブロディとの婚約が成立した。ケリーには諦めてもらうため、『アルフレッドがブロディに惚れ込み、三日三晩土下座して頼んでようやく了承してくれた』ということになっている。

 王城のとある一室を借りて、慎重に伝えたのだが……、それを知ったケリーは、表情を削ぎ落とし、次の瞬間、自分の首へ太い刺繍針を突き刺そうとしたのだ。
 持ち前の反射神経でギリギリ止めたが、ケリーは泣きじゃくって止まらない。

『ッ!?何をしている、ケリー!』
『だって……だって!アルフ、あなたが私を捨てようとするから!』

『私がいつ君を拾った!?』
『ずっとよ!ずっと一緒にいてくれたじゃない……!ハッ!そうよ!無責任な男!今日、もう私は30なの!婚約はしちゃったけど婚姻はまだよね!?ほら、責任をとって!』

『な……、何を言っているんだ。優秀な侍女だった君が、道理のないことを……』
『結婚に道理もクソもないわよ!ほら!婚姻届はここにあるから!結婚!けっこん!!ケッコン!!!』

 ケリーが血走った目でどこからか出してきたのは、分厚い婚姻契約書だった。ちらりと見ただけでも全てが『アルフレッドは×××すること』とあり、ケリー優位のもので、当然のように、すでにケリーのサインがしてあった。優秀な能力の無駄遣いである。
 アルフレッドは完全に怯え、未知の魔物の巣窟にいるような心地になっていた。

(どうしよう。一番のカードを切ったというのに全く効かない……!どうすれば諦めてくれるんだ!?分からない!!)

 その時。

 空中からふわりと現れたのが、グロリアスだった。少し透けていることから、本物ではなく幻影だということが分かる。

『はい、お嬢さん、そこまで。うちの大事な騎士を恐喝、詐欺しようとした罪で王都から出てもらうよ』
『なっ……先王陛下!?』
『アルフレッド、君は少し優しすぎるね。すぐに応援が行くから、安心して』

 そうグロリアスの言うが早いか、アルフレッドの部下となった後輩騎士たちが流れ込んでくる。

「先輩大丈夫ですか!?」
「ボクたちに任せて下さい!」

 そしてテキパキとケリーを拘束し、どうやらそのまま強制退去となった、らしい。

 ぽかんとしたままのアルフレッドに、グロリアスが言った。

『すごいのに目をつけられたねぇ。彼女は強制退去になるだけで、別に鞭打ちなどはしないから、反省するかは分からない。王都の外に出る時は用心した方が良いかもしれないよ』
『はっ……はい!ありがとうございます!ありがとうございます!!本当に、助かりました……!でも、また自殺なんてしたら……』

 そう不安がるアルフレッドに、グロリアスはちくりと釘を刺す。

『死なせたくないなら、一生側にいる覚悟はある?無いのであれば、死ぬも生きるも彼女の判断。君の幼馴染だろうが、口を出す権利はないと思うけど』

『そ……そうですね!すみません、血迷いました。私にはケリーの人生を背負う覚悟はありません。この御恩は必ず返します……!』

『ふふ。普通に職務を続けてくれたら、それでいい。頼むよ』

 アルフレッドは深く頭を下げた。この人ほど、顔を見てホッと出来る人はいない。そう心から痛感した。






「……と、こういうことがあって」
「グロリアス様、クソかっこいいですね」

「そうなんだよ。シオン様が惚れるのも納得の格好良さ」
「分かります。シオン様の横にグロリアス様がいるから、安心して見れると言うか」

「それ。本当にそれ」


 カチ、とグラスをぶつけ合う。ウンウンと頷きながら酒を酌み交わす二人は、今この瞬間、誰よりも分かち合っている自信があった。

 シオンにはシオンに相応しい絶対的な守護者が必要で、もし居なかったとして、自分がそれになれるかと言えば、否。一時的な雨除けにはなれても、生涯守り切れるかは自信がない。むしろ、シオンに守られてしまい、恐縮する自分が見えてしまっていた。


 そういう心の弱さを、この男二人は自覚している。とは言え、自分が弱いとは思っていない。グロリアスが異常に強く、頼り甲斐がありすぎるだけだから。


「……そう言う意味では、私は、君と婚約関係になれたのは僥倖だ。一緒にいるのに、まるで自分といるかのように気を使わない」
「確かに、俺たちは似ていますからねぇ……」

 アルフレッドはベルを鳴らし、シーサーペントのほろほろ煮込みを頼んだ。その注文を聞いたブロディは『ジジイか』と揶揄う。



 笑い合う二人が、酔ったはずみで一夜を共に過ごす際、どちらが上になるかでまたも喧嘩をする日が来るなんて、今はまだ誰も知らない。








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