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本編

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「シオン……、こんなに、痕を付けられて。気付いてた?」

 自宅の寝室へ入るなり、魔王のような色気を垂れ流したグロリアスにすっ……と首筋を指でなぞられる。

 痕……、あ、あの、チクッとしたやつ!
 おろおろと視線を彷徨わせると、ふに、ふに、と何ヶ所も指で押される。

「ここにも、ここにも。胸元まで、弟の所有痕が残っている」
「えっ」
「許せない……」

 グロリアスは目をギラギラさせ、その”痕"に上書きするように唇を寄せ、強く吸った。

「……っつ……」

 いつもの数倍強い痛みは、グロリアスの嫉妬や執着を感じさせる。
 そう考えるとうっかり嬉しくて、赤黒く変色した、鬱血痕に手を当てた。

「ごめんね、グロリアス……、僕、油断していたみたいで」
「…………ぽやぽやして可愛いけど、シオン。これからは、あの弟にも油断しないと、約束出来る?」

 ガッチリと腰を抱かれ、胸のあちこちにグロリアスの痕が付く。普段あまり強引にことを進めない彼なのに、今日は薬を盛られているからか、僕が慌てる程に早急だ。

「う、うん……、でも、ディオンは薬で、」
「そうだとしても、二人きりはだめだよ。……まだ、分からない?」


 分からない。
 だってディオンは……しっかりと血の繋がった、弟だ。
 もう魘されることはなくなったけれど、あの地獄のような疎ましい記憶は、無かったことには出来ない。
 そこに登場する、僕を蹂躙してきた男たちと、可愛い弟は、違うのだ。


「ディオンくんは、チャンスさえあればシオンを抱くよ。俺には分かる。仕方ない、と言える状況なら、彼は躊躇しない」

「……どういうこと?」

「弟という立場でも、抜け目なく狙っている。被っている猫を剥がせば、なかなか強かな性格をしている」

「そんな……ディオンは、そんな」

「シオンの前でない時は、だいぶ違うよ。俺の前だと、嫉妬に塗れた顔をしているから」


 いくらグロリアスの言葉でも、そればっかりは、理解しかねる。
 う、と声を詰まらせた僕を裸に剥き、自身も裸になって肌を合わせてくる。額をくっつけて、グロリアスは妖艶に笑った。


「……シオンは、人を狂わせるような清廉さと高潔さを持っているから。それを自分の手で乱れさせたい、と思う男は多いんだ。不幸なことに」

「グロリアス、も?」

「……ある意味、そうかな。でも、俺はシオンが、とろとろになって俺にしがみ付くのが好きなんだ。間違っても、抵抗しているのを無理やり押さえつけるなんてしない」

「う……、グロリアス、もう、キスして」


 恥ずかしくて、誤魔化すように強請る。けれどグロリアスは笑っているだけ。なに?と思えば、ちゅっ、ちゅっ、と頬へ眦へキスはくれるが、唇には触れてくれなかった。

「はぁ……シオン。約束して?弟くんとも、二人きりにならないと」
「……でも……」


 家族なのに。そう、婉曲に躊躇う僕を抱きしめたグロリアスは、そのまま蕾へと手を伸ばす。感じている証拠に、そこはもうビショビショに濡れていた。

 早く抱いて欲しくて、ムズムズして。尻尾が自然と、グロリアスを誘うように揺れている。

「出来ないの?」

 クチュクチュと弄られると、どうにも腰が抜けて立てなくなる。いつもなら寝台に運んでくれるのに、僕をその場で四つん這いにさせると、なんと、蕾に顔を近付け、舐めてきたのだ……!


「あっ!やっ、やぁ、だめっ!き、きたな……」

「いつも嫌がるけど、いつも綺麗だからね?今日は加減してあげない。というか、ここまで甘……」


 う、わ……!

 僕の後孔に、グロリアスの長くぬるい舌が入って、いる。え、待って、舌だけ竜化させてる?って疑いたくなるほど長く、それがじゅぶじゅぶと内壁を味わうが如くうごめく。

 羞恥に背徳感と罪悪感をトッピングし、抗いがたい快感をぶち込んで無遠慮にかき混ぜられているような、とんでもない状況に、僕の陰茎はパンパンに膨れている。腰は自然と揺れて、グロリアスの舌がもっと奥に届くように押し付けてさえいるのに、突如として、そのざらついた舌は引き抜かれてしまったのだ。

「あんっ……」
「はぁ、そんなに、欲しい?……そうだね、俺も限界だ。入れるよ」

「あ、あああああっ!」


 グロリアスは立ったまま僕を上へ抱え上げ、前触れもなく、ぐぐっと押し込んできたのだ。
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