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本編
55 グロリアスside
しおりを挟む休憩室へと案内されたグロリアスは、徐々に体の熱が上がってくることを自覚しながら、どのくらいの強さの媚薬なのか、冷静に考えていた。
竜化スキルで強化しているグロリアスの体でも、なかなか気分が高揚しているのだ。普通の人間が摂取すれば、ところ構わず発情してしまいそうな濃度。
これをシオンに?と考え、殺気が溢れそうになる。いけない、高揚した今、殺気を溜めてしまえば猟奇的殺人者になってしまう。
案内された部屋の寝台。暗くても構わないか、とぽすんと座ると、背後から声をかけられ反射的に立ち上がった。
「あっ……グロリアスさまぁ……」
既に潜んでいたらしい。大方そんなことだろうとは思ったが、最近特にやかましい女が、ネグリジェ姿で寝台へと潜りこんでいた。
「ここには誰もいないと、聞いて来たのだが」
「ふふっ、侍従に少し給金を弾ませれば、簡単なことですわぁ。それよりも……グロリアス様、さぁ、こちらにいらしてぇ……」
「皇女も媚薬を飲んだのか?」
「ええ、少しだけ……、ああん、でも安心なさって。わたくしの持っている一級品ですから、後に長引いたり、頭が痛くなったりなどはありませんのよ」
ジョイの妹の、ジョスリンという女は、透けた服を身に纏い、牛のような乳を堂々と曝け出し、自信満々に、いけしゃあしゃあと言い放った。
「わたくしの初めてを、差し上げましょう。貴方様に、貰って欲しいの!」
「断る」
グロリアスは思い出していた。
シオンの事を調べた時。媚薬を盛られて男と同衾し、その後婚約破棄をされた事。
その後、幼馴染の男で『初めて』を経験しておくことで、どれだけ苛烈な扱いをされても、ギリギリの所で心を守れたと、言っていた。
この女は、そんなシオンに鞭打つようなことを、やってのけたのだ。『意思に反する』『媚薬』『初めて』、全てがグロリアスの神経を逆撫でする。例え知らなかったとしても、グロリアスを激怒させるのに十分だった。
体を繋げる、初めての相手。それはとても、特別だということ。それはこの女にも、当てはまるのだろう。
だから『とっておきの栄誉をあげましょう』みたいな顔をして、グロリアスを誘っているのだ。
「貴様がジョイの妹でなければ、この蛇で処女を失わせている所だったが」
「えっ……きゃああっ!!」
しゅるりと召喚したのは、グロリアスの腕と同じ太さの蛇。シューッと息を吐くそれに、女は叫び声を上げた。
「兄に感謝をするといい。ちなみに、俺と結婚をするということはこういうことだ」
次から次へと蛇を召喚し、皇女へと向かわせる。尚、シオンに蛇をけしかけたことはないが、『目が大きくてかわいいね』と言ってくれる出来た伴侶である。
過呼吸になった薄着の皇女は、あまりにたくさんの蛇に囲まれて気を失った。ちょうど、寝台へ横になる形で。
蛇を収納し、皇女をたった一人放置した。その後どうなろうが、もうグロリアスには、微塵も興味が無かった。
急いでシオンを探す。こうも様々な匂いの強い夜は探しにくくて手間取うものの、シオンに付けたリンを使い、ようやく見つけて――――激怒した。
シオンは胸を露わにして、慌てている。どうも本人は襲われたという意識が低くてもどかしい。実の弟に襲われたと思いたくないからか?――散々これまで性の対象として見られてきたシオンだ。血の繋がった弟にさえそういう目で見られたなんて、思いたくないだろう。
義弟ーーーーディオンくんは何となく、怪しいとは思っていた。
時折シオンを見る目が、兄へのものではないような気がした。しかし今は、とにかくシオンを確保するのが最優先だ。
『シオンは俺のものだ。姑息な真似をするなよ。まだ弟でいたいのなら』
そう囁くと、ディオンの体はぴくりと動いたように見えた。
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