婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

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本編

18 アレアリア/レギアスside

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 ――――――――――――アレアリアside




 レギアスに許可を貰い、アレアリアは喜び勇んで改革に乗り出した。『改革』と体裁良く言いながら、その内容は使用人の性奴隷化。だが、賛同者は多く、実現へと向けて動き出す。

 ただし、この話は近衛騎士から瞬く間に広がっていた。何故ならこの近衛騎士には幼馴染がおり、王宮侍女として働いていたからだ。名をケリーと言う。アレアリアが『サリー』という名前を押し付けたため気付かなかったが、彼は結果として、彼女を救う。

 侍女の中で後ろ盾の弱い者、また、男でも武術に嗜みのない若い文官や猫耳を持つ下働きなどは、性奴隷とされることを恐れて王城を去った。婚約者や妻を愛する者も、今後行為を強要される予感を感じて辞職して、家族や友人を連れてウィンストン侯爵領へと旅立った。

「もうっ、なんでサリー辞めちゃったの!?辞職願いなんて、受け取らなきゃいいじゃない!」
「それが、そうも行きません……そんなことをすれば、ますます王城は人手不足になってしまいます」

「なんで?アレア分かんない……でも、もう性処理用の係ができるって、みんな期待してくれてるしぃ……そうだ!本物の娼婦をお城に連れてくるのは!?」
「娼婦と言っても、貰い受けるには予算が必要ですぞ」

「そんなの、最下層の平民なんだからちょこっとでしょ?税金上げれば?王城に入れるんだから、顔は綺麗なの選んできてよね」

 アレアリアは、ニヤリと笑った。
 アレアリアより美しい平民などいる訳もないが、念のために連れて来させるのだ。もし万一のことがあれば、ちょっと傷付けたらいい。そうすれば、アレアリアより美しいものなどいなくなる。

 街の娼館から、人気の高い娼婦を見繕って身請けが行われた。予算の足りない分、アレアリアは商会を持つ養父に強請って金を出させた。金を出すことで、アレアリアも養父も、城内で大きな顔が出来るから。

 王城には専用のプレイルームが設置され、いつでも利用することが出来るようになった。

 娼婦たちは『次の働き先は王城』だと聞かされ、色めきたった。もしかしたら、位の高い令息に身染められるかもしれない、と。

 そんなどこかの物語のような現実は、どこにもない。シオンに味を占めていた王城の男たちは、シオン程の美人でもない、体の緩んだ、わざとらしい嬌声を上げる娼婦たちを抱く度、シオンと比べてしまった。

「チッ、この程度か。もっと締めろ!」
「ぎゃっ……」

 娼婦に乱暴を働く者が増えた。娼婦たちはたちまち悲鳴を上げ、逃げ出そうとしたが、捕まえられた。そうなると余計に痛めつけられ、衰弱していった。その様子を見た使用人たちは、顔を見合わせ、逃げ出せるうちにと辞めていく。いつ、その狂気の矛先がこちらを向くのか気が気でない中で、働けるはずもない。

「もうっ、いっぱいお金出したのに入院しちゃったの?使えない!それにシオンにも嫌がらせしなくっちゃいけないのに。ああん、アレア、忙しいのにぃ」

 アレアリアはぶつくさ言いながら、またも養父の金と人脈を使い、ウィンストン侯爵領へ刺客をはなった。

 アレアリアの指示で、領へ続く一本橋を壊したり、特殊な薬剤を撒いて腐らせたり。門には『シオンはアバズレ』と悪質ないたずら書きをしたり。

 任務完了の報告を受けたアレアリアは、してやったりとほくそ笑んでいた。

(ふふっ。これであいつは普通に外を出歩けないし、今頃食べるものにも困っているはずよ!領民ごと、飢えて死ねばいいわ)








 ――――――――――レギアスside




「最近、料理は不味くて匂いがキツイし、城の清掃もアラが目立つ。父上、そう思いませんか?」
「そうだな。使用人の管理は王妃、お前だろう。どうなっている?」

「あら、あなた。私は茶会に夜会にと忙しいんですの。レギアス、あなたが調べて躾し直しなさい」
「はい、分かりました。では、使用人をもっと雇う必要があると思います」

「そなたに任せる」

 レギアスは、使用人の募集に着手した。しかし既に王城内で起こっている出来事については噂が広がっており、『死にに行くようなものだ』と、一人も応募してこない。

 仕方ない。レギアスは強制的に労役として人間を徴収し、働かせることにした。
 歳のころは10代から20代の男女問わず。容姿が整っており、五体満足であれば、問答無用で連行し、その者がいた村や街には、わずかな報奨金をばら撒いた。

 使用人として酷使しながらも、気に入る者がいればプレイルームへ連れこむことが出来る。娼婦と違い、嫌がる初心うぶな娘や息子を組み敷くのは、男たちの趣味に合致したらしい。

 貴族令息たちの王家賛美は高まった。それに反比例するように、人心は離れていく。異常を察した人々は、ウィンストン領を目指して移動を開始した。







 そんな国民の様子などいざ知らず、ふんふんと自分の手腕に自画自賛していたレギアスの元に、遠征していた騎士団員らが帰還した。

 葬列のような雰囲気に、ただごとではないと勘付く。シオンは、いない。

「シオンは?……クインはどうした?」
「捕虜に……取られました」

「お前、みすみす渡したとでも言うのか!?高価な砲台も持っていったというのに!何一つも成果がないなんてことが許されると思っているのか!?」
「し、シオン様のスキルが、強すぎるのです!身体強化や、上級の属性魔法士たちでも太刀打ち出来ません!」

 と、副団長は言った。それは事実ではあるが、実際は、戦ってすらいない。ただ長旅の疲れと蛇に監視されている精神的疲労で萎びているだけで、レギアスの目には闘い疲れて心が折れてしまったかのように映った。

「……っ、おのれ、シオン……!騎士をこんなにするとは!分かった、次は俺様が話をつけてやる!」
「殿下……っ!」

 ぱああ、と騎士団員たちは顔を輝かせた。
 まだ何も言っていないのに、まさか、自分から行くと言うなんて、と。



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