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本編
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しおりを挟むお父様も、この男だけは自分の拳で殴りたかったらしい。……そんなに、力は強くない父だが。目の前で息子を、見せつけるように犯した男は、やはり殴りたくなっても仕方ないと思う。今の僕なら、きっと消し炭にしているもの。
領城の奥の奥の、ひっそりとした薄暗い地下牢。
魔力無効化の上に、両手両足を拘束されたクインを、父が殴っていた。
「このっ!ケダモノめが!こいつが、こいつが……っ!」
「んだよ、シオン、あいつが誘ったんだ!俺は悪くない!」
「状況も分からん暗愚めが!騎士団長の令息というだけで、散々好き勝手をしていた、お前を恨んでいるやつらは山ほどいたぞ!」
「はぁ?んなわけ無い……!俺は皆んなから慕われるんだ!」
殴られて顔はぼこぼこに腫れているのに、無駄に頑丈だ。口は元気に回るし、もう、お父様の拳の方が限界だった。血が出てしまっている。
「お父様、次は、僕が」
「はぁ、はぁ……、すまん、頭を冷やしてくる。こいつと話すと頭がおかしくなりそうだ」
「同感です」
父の手に軽く治癒を施せば、一瞬で治った。そのまま立ち去る父を、令息は呆然と見ていた。
「な、なんなんだよ、お前のスキル……!治癒もできるのか!?」
「さぁ」
話す気は無い。本来、治癒者は六年間は専門の勉強をしなければなれないものだが、僕の場合、その知識以上のものをスキル発現の際に授かった。例え欠損したとしても再生できる自信があるけど、クインには不要な情報だ。
空間収納からカチャカチャと取り出して準備をしている間に、クインはニヤつきながら、勝手に話し出す。
「……お前だって、感じていただろ?素直になれよ。俺のモノ咥え込んでヒィヒィ鳴いていたじゃねぇか。アソコは喜んでいたぜ。俺もよ、お前のことは気に入っているんだ。顔もいいし、生意気に睨んでくる強気な所も。……なぁ、これを解けよ。今度は、お前の好きな体位でやってやるからさ」
「あなたは四六時中、そのことばかり考えているのですか?呆れます」
「シオンのことは考えているさ。白い肌は吸い付いてきもちいーし、汗も涙も甘い匂いがすんだよな。平民の汗なんて舐めたくなかったからこれまでしなかったけど、まぁ、これからは舐めてやってもいい」
僕ははぁ、とため息をついた。だめだこいつ、イカれてしまっている。
下半身に脳が直結しているのか?もはや下半身が本体なのか。上半身は飾りで、きっと本能で生きている。
うーん、僕自ら尋問しようと思ったけど、辞めた。こいつの歯を全部ネチネチ抜いてやったらスッキリするかな、と思ったんだけど、やっぱり触りたくないよね。
「あなたといると頭が痛くなりますので、他の人に任せることにします。もう二度と会うことはないでしょう。それでは」
「はっ?えっ、」
扉の外にいた人間を呼ぶ。女性の方だが、囚人牢で働いていた看守兼、その道のプロである。
王家からの命令で、ウィンストン侯爵家は騎士を持てない。だからお父様はこういった、武力ではない特殊な技能を持つ人間を前々から集め、教育してきたのだった。
「はい、わたくしめにお任せを。坊ちゃん」
「うん、よろしくね」
「はぁ!?シオン、お前が責任を持ってやれよ!おら!いくらでもハメてやる!」
「二時間後には、許しを乞うように調教しておきますね」
そう笑った頼もしい笑顔に送り出され、僕はしばしグロリアスとのお茶会を楽しむこととなった。
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