婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

文字の大きさ
上 下
11 / 67
本編

11

しおりを挟む

 連れ帰った彼らには、【魔力封じ】を付与して、弱体化させた。五人とも身体強化スキルだったから、それを無くしてしまえば、ちょっと体格の良いだけの青年だ。

 今、うちの領地では、『媚薬』についての研究施設がある。お父様の集めたマッドで優秀な研究者たちが熱望しているため、そこへ彼らを送った。被検体として。

 複数種類の媚薬。その反応。その媚薬に対抗するのに何をどれだけ必要とするのか、彼らの体を使って研究してもらう。
 まぁ、媚薬って極論満足すれば治るものなのだけど、薬を飲んでサラッと治るのならその方が良いでしょう?

 性欲ばかりが高められ、一向に達することの出来ない環境は、彼らにとっては苦行になるだろう。もしかすると狂ってしまう可能性もある。最も、身悶える男どもを観察しなくちゃならない研究者もなかなかの苦行だと思うけど。研究熱心すぎる彼らは、自分の目的に関してはどんな困難も厭わないので、ぜひやり切って欲しいと思う。

 領地では、その研究施設以外、媚薬の所持・製造・使用は禁止だ。この決まりもお父様によって施行された。僕が陥れられた原因でもあるし、嗜好品というより他人に害を及ぼす可能性の高い薬は、いっそ禁止してしまえばいい、と。






 騎士団長は、利き腕を失っていた。彼も同じく研究施設へ渡そうと思ったけれど、猿轡を外した途端、無駄に物凄い忠誠心で、僕を睨み付けると『王国に仇をなして無事でいられると思うな!』と叫び、自ら舌を噛み切って死んでしまった。

 僕のこと、本当に王家を裏切って不貞をしたアバズレだと思っているのかな?

 王家の言うことだけを一心に信じ、捕虜になるくらいなら自ら死を選ぶ。それは王家にとっては非常に都合の良い駒だっただろう。

 騎士団長になるには、そんな浅慮さが求められるのか?

 それを聞くほどの興味も、沸かなかった。











「シオン、がんばったねぇ、えらいね」

 よしよし、と撫でてくれる小さな手。
 グロリアスの手には癒しの効果があるのかもしれない。
 彼がまだ10歳ほどに見えるのをいいことに、僕は一緒に寝ることを懇願し、許してもらっていた。

「んー……、グロリアス、もっとなでて……」
「はい、はい」

 これではどちらが年上か分からない。けれど彼の包容力は異常で、弟より小さな少年に、僕はすっかり骨抜きにされていた。

 夜毎悪夢に魘される。いくつもの男の手が伸びて僕を捕まえ、ねとねとと糸を引いては地獄の底へ引き摺り込もうとする。

 汗をびっしょりかいて何度も起こされる度、グロリアスが撫で撫でに来てくれて、いつしか、グロリアスを抱えて寝ることがいちばんの解決策だと気付いたのだ。

「はぁー、グロリアス。あー、好き。好き」
「もう、シオンったら。『好き』は簡単に言っちゃだめだって、おばあちゃんが言ってたよ?」

「うん、おばあちゃまが正しい。けどね、体が『好き』で満杯になったらね、こうして少しずつ出さないとダメになっちゃうんだよ」
「なにそれ。シオンは、好きでいっぱいなの?」

「うん。好き。大好き」
「もー、……おれも、好きだよ。つらいのに、強くて、真っ直ぐなところ、好き」

 へにゃ、と笑った幼い笑顔にキュンと鷲掴みにされ、感極まってまた強く抱きしめた。

 幼い高い体温を腕の中に。
 さらさらの淡い金髪は、肩口で切り揃えられているから、時折僕の肌をくすぐってくるのを撫で付けてあげて。

 グロリアスの腕には自然と、僕の銀の尻尾が巻き付いていた。禿げた箇所も、産毛が生え、少しずつ回復してきている。

「すき……」

 ぽつりと呟き、幸せな気持ちで眠りに落ちる。














 僕が寝た後。グロリアスがそうっと僕を撫でてキスをしてくれていることなど、気付きもせず。












しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。

白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。 僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。 けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。 どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。 「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」 神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。 これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。 本編は三人称です。 R−18に該当するページには※を付けます。 毎日20時更新 登場人物 ラファエル・ローデン 金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。 ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。 首筋で脈を取るのがクセ。 アルフレッド 茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。 剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。 神様 ガラが悪い大男。  

処理中です...