婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

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 連れ帰った彼らには、【魔力封じ】を付与して、弱体化させた。五人とも身体強化スキルだったから、それを無くしてしまえば、ちょっと体格の良いだけの青年だ。

 今、うちの領地では、『媚薬』についての研究施設がある。お父様の集めたマッドで優秀な研究者たちが熱望しているため、そこへ彼らを送った。被検体として。

 複数種類の媚薬。その反応。その媚薬に対抗するのに何をどれだけ必要とするのか、彼らの体を使って研究してもらう。
 まぁ、媚薬って極論満足すれば治るものなのだけど、薬を飲んでサラッと治るのならその方が良いでしょう?

 性欲ばかりが高められ、一向に達することの出来ない環境は、彼らにとっては苦行になるだろう。もしかすると狂ってしまう可能性もある。最も、身悶える男どもを観察しなくちゃならない研究者もなかなかの苦行だと思うけど。研究熱心すぎる彼らは、自分の目的に関してはどんな困難も厭わないので、ぜひやり切って欲しいと思う。

 領地では、その研究施設以外、媚薬の所持・製造・使用は禁止だ。この決まりもお父様によって施行された。僕が陥れられた原因でもあるし、嗜好品というより他人に害を及ぼす可能性の高い薬は、いっそ禁止してしまえばいい、と。






 騎士団長は、利き腕を失っていた。彼も同じく研究施設へ渡そうと思ったけれど、猿轡を外した途端、無駄に物凄い忠誠心で、僕を睨み付けると『王国に仇をなして無事でいられると思うな!』と叫び、自ら舌を噛み切って死んでしまった。

 僕のこと、本当に王家を裏切って不貞をしたアバズレだと思っているのかな?

 王家の言うことだけを一心に信じ、捕虜になるくらいなら自ら死を選ぶ。それは王家にとっては非常に都合の良い駒だっただろう。

 騎士団長になるには、そんな浅慮さが求められるのか?

 それを聞くほどの興味も、沸かなかった。











「シオン、がんばったねぇ、えらいね」

 よしよし、と撫でてくれる小さな手。
 グロリアスの手には癒しの効果があるのかもしれない。
 彼がまだ10歳ほどに見えるのをいいことに、僕は一緒に寝ることを懇願し、許してもらっていた。

「んー……、グロリアス、もっとなでて……」
「はい、はい」

 これではどちらが年上か分からない。けれど彼の包容力は異常で、弟より小さな少年に、僕はすっかり骨抜きにされていた。

 夜毎悪夢に魘される。いくつもの男の手が伸びて僕を捕まえ、ねとねとと糸を引いては地獄の底へ引き摺り込もうとする。

 汗をびっしょりかいて何度も起こされる度、グロリアスが撫で撫でに来てくれて、いつしか、グロリアスを抱えて寝ることがいちばんの解決策だと気付いたのだ。

「はぁー、グロリアス。あー、好き。好き」
「もう、シオンったら。『好き』は簡単に言っちゃだめだって、おばあちゃんが言ってたよ?」

「うん、おばあちゃまが正しい。けどね、体が『好き』で満杯になったらね、こうして少しずつ出さないとダメになっちゃうんだよ」
「なにそれ。シオンは、好きでいっぱいなの?」

「うん。好き。大好き」
「もー、……おれも、好きだよ。つらいのに、強くて、真っ直ぐなところ、好き」

 へにゃ、と笑った幼い笑顔にキュンと鷲掴みにされ、感極まってまた強く抱きしめた。

 幼い高い体温を腕の中に。
 さらさらの淡い金髪は、肩口で切り揃えられているから、時折僕の肌をくすぐってくるのを撫で付けてあげて。

 グロリアスの腕には自然と、僕の銀の尻尾が巻き付いていた。禿げた箇所も、産毛が生え、少しずつ回復してきている。

「すき……」

 ぽつりと呟き、幸せな気持ちで眠りに落ちる。














 僕が寝た後。グロリアスがそうっと僕を撫でてキスをしてくれていることなど、気付きもせず。












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