婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

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 男の中の一人が、僕を一閃した。

 けれど、腕を斬り飛ばされたのは、彼の方。

「アガッ!?……っ」

 僕は攻撃を鏡のように反射しただけ。つまり彼が斬ったのは、彼自身。

「団長っ!?」
「な、な、……何故だ!?」

 面に隠れた顔をよく見れば、騎士団長だった。

 流石の腕前!一撃で綺麗に刈り取られた腕は、谷底へ落ちていった。あれでは、治癒しようにも不可能だ。そこまで強くなければ、まだくっついていたかもしれないのにね。

 よくもまぁ、無手に見える僕を思い切りよく斬ろうとしたね。さすがはあの令息の父親。と、不快な顔を思い浮かべて眉を顰めた。

「ええと……なんだっけ。鎮圧、しに来たんだっけ?」
「ば、化け物……っ!」
「ヒィィィ!どうか、どうか平にご容赦を……!」

 彼らは尚も斬りかかろうとする団長を二人がかりで抑えている。ふむ、この二人なら、まだ話は出来そうだ。

 団長には静かになってもらうため、指先一つ動かして口に布を噛ませ、縄でぐるぐると巻いた。ふーっ、ふーっと鼻息荒く睨みつけてくるけれど、気にしない。

「そうだねぇ、どう料理しようかな。このまま門を開けずに橋を断ち切れば、君たちはじわじわ餓死する。それとも、橋を渡っている途中で千切ってあげれば、谷底へ落ちて即死出来るね。もちろん、この場で僕と戦う、でもいいよ。自分を切り刻むって貴重な体験が出来ると思う」

「すみません、すみません!」
「申し訳ありません……っ!」

 とまぁ、ここまで脅したところで、僕の本意ではないのだ。

「ふふ。いいよ。あなたたちは正直に、目的を話してくれたもの。選択肢は二つ。このままうちの領民として中に入るか、王城へ帰るか。そちらの場合、たまに情報をくれるか、もしくは指示した情報を流すだけでいいよ。どうする?」

「…………!」

 気付いたかな?どちらにしても僕に忠誠を誓ってもらう。副団長らしい二人は、息をのんで考えていたが、あまり悩むことはないと思う。
 血生臭い中で、彼らが出した結論は、後者の方ーーーースパイになる方だった。

「我々は、シオン様に忠誠を誓います!元々王家のありようには疑問を持っていました。しかし、騎士たるもの、ぬくぬくと保護される気はありません」

「よく言ったね。そっか……じゃあ、帰してあげる」

 グロリアスに合図をすると、小枝ほどの、小さな蛇が彼らの服の中へ入っていった。
 猛毒を示す綺麗なブルーの蛇に、ひぃぃい!と声をあげるも、僕の笑みを見て空気を読み、静かになる。

「おれの子たちを貸すね。うらぎったらガブッ!だから。この子を通して指示するからよろしくね」

「わ、わ、わかりましたぁ……!」
「じゃあ、早速。対岸にいる、レオン、イーサン、クリス、セルジオ、カストをこちら側に寄越して」

「えっ……、そ、それは、どのような人選で?」
「ふふ、あなた達が知る必要はないよ。ああ、この人も、置いてってもらおうかな」

 二人が騎士団長を置いていくのは早かった。

 逃げ出すように駆けていき、対岸へ。はやい。よほどここにいたくなかったのだろう。
 対岸に着いた二人の代わりに、僕の呼んだ、僕を犯した人たちが来るはずなのだけど、なんだか険悪な雰囲気だ。

「あ、もめてるね~」
「そうだよねぇ。団長捕まっているものね」
「蛇にこちょこちょさせてみるよ」

 グロリアスが指示をすると、副団長二人が血相を変えて命じている。噛まれると思ったのだろう。もちろん、あの蛇に噛まれたら即死するし、それを分かっているからこそ、彼らは必死に蹴り出した。自分の命が掛かっているものね。

 それでも中々橋を渡ろうとしない五人に発破をかけるため、遠隔で向こう側の縄を断ち切った。途端に駆け出し、あっという間にこちら側へ来てくれた。はやいはやい。えらいね。

「やぁ、久しぶりだね」

 僕が笑いかけると、五人は青ざめてへたり込んだ。まぁ、橋から落ちたら死んでしまうというスリルを味わった後だ、足がガクガクしていようと仕方ない。

 すると、いち早く状況を察した男爵令息が土下座をした。ははっ、面白い。土下座ってどこの国にもあるみたい。そして大抵の場合、価値のない謝罪。

「申し訳ありませんでしたッ!ぼ、ぼく、そんな、こんな、」
「黙ってね?」

 僕が聞きたいのはそれじゃない。謝罪一つ、頭一つ下げれば済むような話ではなかった。

 ただ、僕は彼らとは違う。彼らに自分のモノを舐めさせたり、突っ込みたい訳じゃないもの。……だからそんな彼らには、相応しい環境を。

「君たち程度を削ぎ落としたとして、王国の武力は削げないのだけど、けれど僕のために、君たちには捕虜になってもらうね」

「ほ、捕虜……?」

「そう、ほりょ」






 
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