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しおりを挟む迷宮の初回攻略特典の宝箱は、ウリエルから手渡された。ああ、落ちてしまうものね……。
中には鍵が入っていた。新品というよりも、年季の入った重厚な扉を想像させる鍵。
「これは『真実の鍵』っていうの。トントン、って扉を叩くだけで、どんな扉でも開けられるし、罠も無効化出来る。施錠をしたら、本来の鍵を使っても開かなくなる。あとはね、これを持った人が嘘を付けばベッタリと血が付くから、見極めるのもできるんだよ」
「最後だけホラーだね……でも、すごく便利だ。ありがとう」
ウリエルが解説してくれるのをちょっと引きつつ聞いて、僕たちは地上へと戻ることにしたのだった。
第九層の階層主と比べて、今回はなんというか、あの赤ちゃん天使たちを斬らないことが迷宮攻略の手段だったため、あっさりと終わってしまった。当然ながら、ランスさんはまだ中にいるし、一泊はするだろう。
ということで、オルと二人、近くの町に入って食堂でご飯を取ることにした。
「安心したらどっと疲れたなぁ。オレ、飛ぶのは好きだけど、地面がないのは落ち着かなかったぜ」
「そうだね。地面あってこそだよね」
「本当だぜ……そういえばこの情報も、ギルドに売るんだろ?」
「うん、後で言うつもり」
「オレも行こうかな。いい加減に冒険者登録しようかなって」
「え、そうなの?大丈夫?」
オルは冒険者になることを避けていた。それは祖先から代々気をつけるように語り継がれてきたからなんだって。
竜人という種族は強い。どの種族よりも強い力を持つ為に、『竜人』であると知られるだけで厄介ごとに巻き込まれたりするから、と。
「まぁ、もうオレも結構……腕も上がったし。早々人間に攫われたりはしないだろ?それなら、ロキと正式にパーティーを組んだら楽しそうだなって思って」
「楽しそう!そうだね。パーティーを組んだらね、ソロランク以外にもパーティーランクってのも付けられるし、宿屋でパーティー割引とかもあるし、いいね!」
「だろ?うし、じゃあやっぱり登録するぜ!んで、すべての『パーティー割引』を制覇するんだ!」
「そうしよう!初めてだよ、パーティー割」
そうして意気揚々と冒険者ギルドへと行き、オルは登録出来たのだけど、竜人と言っても例外なくGランクから始まるらしい。
しかも、僕は今回の迷宮攻略で星をまた一つ、もらえることになった。これで二つ目の星だ。オルは正式に入ってないから空気と見做されて。
オルは可哀想なくらいにしょんぼりしていたけれど、すぐに『最短期間でAになってやる』と燃えていた。うん、オルならすぐになれると思う。それまでパーティー割はお預けとなった。
ランスさんは第一層を攻略して帰ってきたが、肩をすくめていた。
「俺はこの迷宮攻略は無理そうだよ。幻影を見抜くのにめちゃくちゃ気力と魔力を使う……」
「お疲れ様でした。ランスさんは炎龍の迷宮の方が向いてそうですね」
「確かに?というか、普通はそうポンポンと迷宮に潜らないからね?」
「そうなのか?オレも結構入ってるけど……」
「普通はね、複数人で入って一週間かけて一層を攻略するんだよ……。オーランドやロキみたいに駆け抜けることはしないから」
「オルは凄いよ。だって全部勘でなんとかなっちゃうんだから。むしろ何も考えていない時の方が冴えてるかも」
「えへへ、そうだろ!オレもなかなかなんだよ」
「褒めてるのかい……?それ」
ランスさんはオルが冒険者登録したことを驚きながらも祝福してくれ、オルがAランクになったらランスさんも一緒にパーティーを組むことを約束してくれた。
いい。いいよね、仲間って。
あっ、そうしたらテントももう少し広くする必要があるかもしれない。湯船にも衝立を付けて、というか、湯船用のテントにしたら気兼ねなく、広々と使えるし。
でも、迷宮内で万が一ハグれるという可能性もあるから、それぞれひとつづつそれなりの道具を持ってないとダメだよね。うん、今度一緒に買い物へ行かなくっちゃ!
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