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94 幻惑の迷宮
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虹色の靄がかった入り口に進む。まずは第一層で肩慣らしをし、魔素の濃さと危機感を慣らす。
僕はこれを数時間行うから、週末だけの攻略は時間がなくなってしまうんだ。
そうしてようやく慣れたら、第九層へ転送陣で降り立つ。
この層は、どこを見ても砂漠。擬似太陽は肌を焼くように照りつけるため、移動式結界を張っておく。オルにもつけようと思ったら『オレの精霊、火の精霊王よ?』と笑っていた。どうやら火属性のシールドをすでに張っていたみたい。流石の速さだ。
足元は砂に取られて、全くと言っていいほど普段の動きが取れない。『炎獄の迷宮』攻略で手に入れた一対の羽を装着して、空中へと飛んだ。
結局使う羽目になってしまったけど、結構快適かもしれない。オルは自前の羽だから、僕よりずっとなめらかに飛んでいた。
地中から飛び出してきた巨大なサンドワームが、切なそうに空を掻く。僕の足にはギリギリかすることなく、奴は戻っていく。
「こらぁっ、待て!」
「おー……元気……」
その背中を、追いかけたオルが切り結ぶ。ドパアッ!と中身が飛散して、サンドワームの巨体が横倒しになった。
「よっしゃ」
「サンドワームって美味しいところ、あったかな……」
「んー、これはオレでも食べたくないな……。魔石だけ取ってくる!他はいらねぇよな?」
「うん」
オルがぶつぶつと呟くと、サンドワームの死骸が轟々と燃え上がり、ツヤツヤとした魔石だけが残った。それを、オルが回収する。
「ほら、やる。なんか使えそうだろ?」
「うん!ありがと、オル」
「オレが持っててもしょうもないから」
そう言って、バレーボール程もある魔石をプレゼントしてくれた。太っ腹だ。
オルは本当に物欲が無いし、友だちである僕に何かあげたりもらったり、という応酬そのものが好きらしい。僕もオルには色々あげちゃうから分かる。
そうだ、これほど大きいなら魔道人形の核にしてみようかな。
しかし上から見てもずっと砂漠だ。この迷宮の広さは知っている。幻影など無くとも、これほど広い砂漠の中では簡単に迷うだろう。
この迷宮の攻略記録はここ第九層で止まっている。つまり、ここより先に行った人はいないということだ。
こんな広大で、どこを見ても同じような景色で、次の階層へと向かう手がかりを探すのは困難だろう。僕はあっという間に努力を放棄した。
「ギン!ぷちギンに広範囲を偵察させて、何か異変や違うところがないか探して。ジジとピピは久しぶりの仕事だ、空からお願い。サンは……」
「妾の出番ね!」
皆んながぽんっと出てきた中、サンは鼻息荒く、下半身を巨大な蜘蛛状態で登場した。
ちなみに影が無いエリアなのでネロはお休み。出てこれないことはないけれど、ここはサンにお任せしよう。
そのサンはというと、気合が入りすぎて、目が爛々としている。
「サンは…………………………?」
「もうっ!マスター!妾をただのアラクネとお思い?!レディー・アラクネ・クイーンなの!全ての蜘蛛を従える女なの!」
「ごめんごめん。すっかり糸や衣料の知識とかに頼ってしまって、パッと出てこなくて……」
てへ、と誤魔化そうとするも、サンは頬を膨らまして怒っているようだ。
「妾は糸を出すだけの無能ではないの!諜報活動は、まぁ、ギン殿には負けますけど……砂地では負けないわ!ほら、マスター、見てくださいまし」
ふと地上を見ると、ぷちギンたちが砂地を移動しようとして一生懸命飛び跳ねている。中には硬化したり、回転の勢いで転がり上ろうとしている子もいるけれど、全然前に進めていない。
『ごめん、ろー。ギンはこの地面は苦手みたい……』
ギンはしょんぼりして、ぷちギンたちと亜空間小屋に帰ってしまった。仕方ない。スライムにとって砂漠は天敵なのだろう。踏ん張り効かないものね。
「妾なら砂蜘蛛を召喚出来ますから。ご褒美を頂けたら、それこそ無数に……」
「なる程……はい。こんなこともあろうかと、用意してきましたよ」
亜空間収納から取り出したのは、拳大ほどの魔力の飴玉。
今のように迷宮に入っていると、従魔へあげる用の魔力を捻出するのは慎重にならなければならない。魔力は極力、魔物との闘いに取っておきたいから。
しかし、魔力を飴玉のように塊にしても、亜空間収納に入れると少しずつ溶けてしまう。砂糖が砂糖水に溶け出すように。
だから、学園にいてあまり魔力を使わなかった日に、かなり大きめに作っておいた。もともとはスイカくらいあったけど、やはり小さくはなっている。
「はい、どーぞっ」
それをサンの口元に投げ込んだ。美女のガワが一瞬剥がれ、あり得ないほど口が開いてそれをパクリ、飲み込んだ。
「んん~~~~っっっ!!」
「うわぁ……」
それを見てしまったオルが、完全に引いていた。
僕はこれを数時間行うから、週末だけの攻略は時間がなくなってしまうんだ。
そうしてようやく慣れたら、第九層へ転送陣で降り立つ。
この層は、どこを見ても砂漠。擬似太陽は肌を焼くように照りつけるため、移動式結界を張っておく。オルにもつけようと思ったら『オレの精霊、火の精霊王よ?』と笑っていた。どうやら火属性のシールドをすでに張っていたみたい。流石の速さだ。
足元は砂に取られて、全くと言っていいほど普段の動きが取れない。『炎獄の迷宮』攻略で手に入れた一対の羽を装着して、空中へと飛んだ。
結局使う羽目になってしまったけど、結構快適かもしれない。オルは自前の羽だから、僕よりずっとなめらかに飛んでいた。
地中から飛び出してきた巨大なサンドワームが、切なそうに空を掻く。僕の足にはギリギリかすることなく、奴は戻っていく。
「こらぁっ、待て!」
「おー……元気……」
その背中を、追いかけたオルが切り結ぶ。ドパアッ!と中身が飛散して、サンドワームの巨体が横倒しになった。
「よっしゃ」
「サンドワームって美味しいところ、あったかな……」
「んー、これはオレでも食べたくないな……。魔石だけ取ってくる!他はいらねぇよな?」
「うん」
オルがぶつぶつと呟くと、サンドワームの死骸が轟々と燃え上がり、ツヤツヤとした魔石だけが残った。それを、オルが回収する。
「ほら、やる。なんか使えそうだろ?」
「うん!ありがと、オル」
「オレが持っててもしょうもないから」
そう言って、バレーボール程もある魔石をプレゼントしてくれた。太っ腹だ。
オルは本当に物欲が無いし、友だちである僕に何かあげたりもらったり、という応酬そのものが好きらしい。僕もオルには色々あげちゃうから分かる。
そうだ、これほど大きいなら魔道人形の核にしてみようかな。
しかし上から見てもずっと砂漠だ。この迷宮の広さは知っている。幻影など無くとも、これほど広い砂漠の中では簡単に迷うだろう。
この迷宮の攻略記録はここ第九層で止まっている。つまり、ここより先に行った人はいないということだ。
こんな広大で、どこを見ても同じような景色で、次の階層へと向かう手がかりを探すのは困難だろう。僕はあっという間に努力を放棄した。
「ギン!ぷちギンに広範囲を偵察させて、何か異変や違うところがないか探して。ジジとピピは久しぶりの仕事だ、空からお願い。サンは……」
「妾の出番ね!」
皆んながぽんっと出てきた中、サンは鼻息荒く、下半身を巨大な蜘蛛状態で登場した。
ちなみに影が無いエリアなのでネロはお休み。出てこれないことはないけれど、ここはサンにお任せしよう。
そのサンはというと、気合が入りすぎて、目が爛々としている。
「サンは…………………………?」
「もうっ!マスター!妾をただのアラクネとお思い?!レディー・アラクネ・クイーンなの!全ての蜘蛛を従える女なの!」
「ごめんごめん。すっかり糸や衣料の知識とかに頼ってしまって、パッと出てこなくて……」
てへ、と誤魔化そうとするも、サンは頬を膨らまして怒っているようだ。
「妾は糸を出すだけの無能ではないの!諜報活動は、まぁ、ギン殿には負けますけど……砂地では負けないわ!ほら、マスター、見てくださいまし」
ふと地上を見ると、ぷちギンたちが砂地を移動しようとして一生懸命飛び跳ねている。中には硬化したり、回転の勢いで転がり上ろうとしている子もいるけれど、全然前に進めていない。
『ごめん、ろー。ギンはこの地面は苦手みたい……』
ギンはしょんぼりして、ぷちギンたちと亜空間小屋に帰ってしまった。仕方ない。スライムにとって砂漠は天敵なのだろう。踏ん張り効かないものね。
「妾なら砂蜘蛛を召喚出来ますから。ご褒美を頂けたら、それこそ無数に……」
「なる程……はい。こんなこともあろうかと、用意してきましたよ」
亜空間収納から取り出したのは、拳大ほどの魔力の飴玉。
今のように迷宮に入っていると、従魔へあげる用の魔力を捻出するのは慎重にならなければならない。魔力は極力、魔物との闘いに取っておきたいから。
しかし、魔力を飴玉のように塊にしても、亜空間収納に入れると少しずつ溶けてしまう。砂糖が砂糖水に溶け出すように。
だから、学園にいてあまり魔力を使わなかった日に、かなり大きめに作っておいた。もともとはスイカくらいあったけど、やはり小さくはなっている。
「はい、どーぞっ」
それをサンの口元に投げ込んだ。美女のガワが一瞬剥がれ、あり得ないほど口が開いてそれをパクリ、飲み込んだ。
「んん~~~~っっっ!!」
「うわぁ……」
それを見てしまったオルが、完全に引いていた。
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