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番外編(と言いつつ番号順)
75 新婚(3)※
しおりを挟む「俺の大事な君の前で、君を不快にさせ、大事な式の思い出に一点の滲みを落としたんだ。許せない。そんなものは、友人でもなんでもない。これまで友人だと思っていたのは、俺だけだったようだしな」
「グレイ……」
「申し訳なかった。君を傷つけるもの全てから守ると約束したのに……」
「ううんっ!違う!今、傷付いているのはグレイでしょう!?ごめんね、僕、気付かなくて……っ、自分、ばっかりで……っ!」
ぐずぐずと涙が出てきてしまう。僕の涙腺は一体どうなっているんだ。塞いでしまいたいけれど、今、僕の両手はグレイを抱きしめるためにあった。
座っていたグレイの頭をぎゅっと、僕の胸へと押し当てた。今は薄い生地の婚礼衣装を着ているので、心臓の音で安心してくれることだろう。
「グレイ、僕たちは夫婦なんだから、僕を守るばっかりじゃなくて、僕にも守らせてよ。物理的には無理かもしれなくても、心なら寄り添えるから」
「ロローツィア……」
「おともだちがいなくなって、辛かったね」
「……裏切られたような気持ちには、なった。だが、惜しくはない。君がいる」
周りからヒューヒューと野次が飛んでくる。新婚だもの、いちゃついてなにが悪いのさ。とばかりに開き直って、抱きしめ続けた。
よくよく聞き出せば、グレイはユーリスさんを擁護したのではなかった。あくまでも過去のユーリスさんは、あの時絡んできたようなお人では無く、さっぱりとした気の良い人だったらしい。
グレイの結婚によって、今まで我慢して来たのが崩壊したのだとか。それを聞いた恩師さまから、後日謝罪されたみたい。
仲直りをした僕たちは、もう手を離すことも出来なかった。どんちゃん騒ぎの中、静かに指を繋いで、待っている。
今夜ようやく、二人きりになるのを。
王城に引けを取らない領城の奥。厳重に警備された主寝室に、僕とグレイは雪崩れ込む。
もう一秒だって待てなかった。寝台に辿り着く前に、衣を解かれてバサバサと落とし、僕もグレイの正装を脱がしにかかる。けれどボタンがとってもたくさん付いていて大変!
僕の衣装はゆるゆるのふわふわだから、もう全面的に引っかかっているだけ。一体これは、どこがどうなっているの……!?
「もう、なにこれ、難しすぎるよ……っ」
「仕方ない、諦める」
「へっ?」
グレイは軍服を着たまま僕へ口付けをし、柔らかい寝台に押し付けた。ゴツゴツとした印章が肌に当たるけど、それすらドキドキする。蕾はもううるうるととろけていて、こう言う時ばかりはオメガで良かったって思う。
「ロローツィア……やっと、夫婦になれたな」
「うん……っ!大好き、グレイ」
「ああ……愛している」
ぐぐぐ、とグレイのものが入ってくる。正装をしているものだから、ああ、仕事中に犯されているみたいな背徳感だ。
隘路を押し入ってくるグレイの肉棒はとても熱くて、かたくて、……こんなに、大きかったかな。
「あああ……っ、は、ぁぁ……、あ、あン、」
「痛いか?すまない……我慢してくれ」
「らい、じょぶっ……!」
気は遣ってくれているのに強引なグレイが、好き。僕へすっぽりと覆い被さり、抱き固め、絶え間なく肌を撫で、口付け、愛撫してくれる。
内側へ入っていくにつれて、快感に酔っ払ってしまう。幸せで気持ち良くて目が回る。切望していた圧迫感に、いとも簡単に絶頂していた。
「はぁ…………ッ、」
ぴゅ、びゅっ、と僕のペニスは吐き出して、脚はぐんにゃりと大きく広がった。あまりに我慢してきたからか、きっと脳がバグっている。こんなに早く、長く、達してしまうなんて。
「ァ…………っ、う……ッ」
「可愛い、ロローツィア。入れただけで……」
だ、だって!気持ち良すぎるんだもの!
待ち望んでいたグレイの陰茎に、僕の内部は歓喜に沸いていた。
***
「はぁ、はぁ……グレイ……もうだめ……」
ぱったりと倒れ込んだ。身体中グレイの痕だらけで、お腹がたぽたぽになるくらい出されて、満身創痍。本当に、僕が男で聖者で体力のある方で良かった。
体を隠さないとまた襲われてしまう。僕は最後の力を振り絞って、シーツにくるまった。ここにロローツィアはいません。
「一回休憩を挟もうか。トマム」
「へい」
「その件、もう何回やったの……トマムさん、助けて」
「あっしは無力なもんで。すんません」
あっさり裏切られているけど、想定内だ。
実はまだ初夜が続いているんだ。もう一週間は篭っていると思う。再現なく求められるのは嬉しくもあるけれど、やはり体力を使う。18歳になったグレイは、ますます体力が増えてアルファらしい屈強な体つきになったし、僕は小さいままだし……理不尽だ!
「ロローツィア、不満か?俺のせいだな……君を良くしてあげたいのに……」
「十分だからねっ!?すごく気持ち良くって満足だからね!?ただ、とっても疲れちゃうだけ!」
「また君は、煽るようなことを」
「ひぃ」
「そういえば坊ちゃん。奥様が呼んでおられましたよ」
「……今、か?」
「はい、今」
とても嫌そうに顔を顰めたグレイだったが、渋々サンドイッチを掴むと『行ってくる』と部屋を後にした。ふぅぅぅう、助かった。
「いたたた……」
「お疲れ様でござい。こちら、気休めですが安眠のサシェを……」
「!ありがとう!グレイの枕の下に入れちゃおう」
もう、内側の筋肉が疲労でピクピクしている。この筋肉痛は【治癒】でも治らない。しんどい。腰も打ち付けられ続けて痛いし、喉もカスッカス。
トマムさんには同情されつつ、寝台はまた綺麗になり、僕もまた綺麗にしてくれた。脱ぎ着しやすい着流しを身につけて、今度こそ横になる。眠たい。眠らせてぇ……。
随分ぐっすりと眠れたなぁ、と思いながら起きると、なぜかお義母さまがいらした。びっくりして飛び起きようとすると、『いいから寝てて!』と制される。
「グレイリヒトは叱っておいたわね。全く、すっかり野蛮な子になっちゃって。今頃パパに絞られていると思うわ。さぁ、ロロちゃんに特製スープ持ってきたから、おなかに入れて、また休んでちょうだいね」
「ありがとうございます……お義母さま」
「ふふふ……わたしにも身に覚えがあるからね……ほら、これならすうっと食べられるでしょう?」
華奢なお義母さまの手で、スープをお口に入れてくれる。身に覚え、あるんだ……とドキドキしちゃうけど。
“特製”と言うだけあって、甘いカボチャやじゃがいもの、香りの良いスープだ。熱すぎずぬるくもないちょうど良い温度で、喉をするりと通って消えていく。
「ごめんなさいね。あの子の肩を持つわけじゃないけれど、ようやく結婚出来て嬉しくてたまらないんだと思うの。ほら、婚約期間が長かったし、我慢していた何かが爆発してしまったのよ。きっと。愛されるのも大変ねぇ……」
「あ……でもそれは、僕も一緒です。夫婦になれて、とっても嬉しいです。そう聞いてしまうと、もっと受け止めてあげなくちゃいけませんね……」
「それはそれ!体格の違いを考えてヤれってことよ。あらやだ、ふふふ。仲睦まじいのはいいことよね。多分、しばらくしたらまた戻ってくるけれど、多少は手加減をしてくれるはずよ。そうでなかったらまた叱ってあげる」
「は、はい……、ありがとう、ございます」
お義母さまの予想通り、グレイはまた戻ってきて初夜の続きをした。お灸を据えられたのが堪えたのか、スローペースに落としてくれて、しんどさは軽減したけれど……。
「ありがとう、ロローツィア……、明日からは、さすがに執務を始めなければならなくなった」
「そ、そうなん、だ……あ、んんっ、ぅ……」
「君には、防御魔術やオアシスなど、俺から逃げられる術はいくらでもあるのに。ありがとう、こんな俺を、受け入れてくれて」
「あっ、あっ、ああぁぁぁ~ッ!」
もうグレイはほとんど動いていない。中に沈められて、時折とん、とん、と押し込まれているだけなのに、僕が勝手に達しているんだ。なんて省エネなんだ、僕。
絶頂する僕の耳に、ちゃんと言葉は届いていても、あんまり理解出来ていない。
「だって、好き、だから……っ、はぁ、ここに、いるの」
「本当に、君は……」
感動したらしいグレイに最終日まで抱かれ続け、合計すると約二週間弱の初夜ーーーーもはやブートキャンプであるーーーーを明けた、朝。
次期辺境伯としてスーツを着こなすグレイ。前髪を上げたグレイはぐっと大人っぽくて、僕の中のグレイ姿コレクションがまた増える。はぁ、好き。いつか全部のグレイを、絵師に描いてもらいたいと企んでいる。
「行ってらっしゃい。がんばってね」
「ありがとう。ロローツィアは、十分に休んでくれ。……また、夜に」
一方僕は、とりあえずのガウンで体を隠した怠惰な姿だ。お部屋で行ってらっしゃいのキスを交わして送り出すと、重たい体をずりずりと引き摺って窓辺に寄る。
馬車に乗り込む前に、僕に気付いて手を振ってくれる夫に手を振り返して、はぁ、と窓枠にもたれた。あ~、僕の夫が格好良すぎて辛い。
「ようやく行かれましたねぇ……ロローツィア様、どうぞおやすみください」
「ふぁ……そうする、ね。ありがとう」
しばらく休んでから、ようやく使用人さんたちの顔を見られた。次期辺境伯夫人(男)として頑張らなくちゃ、と気合を入れて顔合わせを終えると、なぜか皆にキラキラした目で見られていた。なんだろう……?
僕の専属従者となってくれた、ジェイスさんが教えてくれる。
「坊ちゃんの無愛想さが別人のようにお変わりになられて、使用人一同驚いていたところに、熱く甘く激しい初夜が二週間!あの体格差で!坊ちゃんの多大で過剰な愛を一身に受け止めたロローツィア様に、皆労りと尊敬の念を抱いております」
「そ、そんな……」
「すべてはロローツィア様のおかげです。坊ちゃんはさぞ幸せなことでしょう。このように慈愛に溢れた方を伴侶とされて」
「えへへ……そうかな……」
そうも褒められると照れるや。僕だって幸せだよ。素敵な旦那様と結婚できて。わぁ、旦那様だって!うう、なんていい響きなんだろ。
気を取り直して、僕は辺境の地を見て回った。領地には、結晶化したサクラルビーの小枝を多めに配置して、随所にワープ出来るようにする。便利でしょ?
それから、入院患者を診て治癒をして、病床を空けるようにしたり。治癒代は領民割引が効くよ!
王都へも度々ワープをして、アレキウス様やマリーベル姫のお手伝いをする。スザク王国にもワープ出来るようにしたら、いつの間にか日本の食べ物を宣伝する人みたいになっちゃったの。大事に食べてるだけなのにね?マリーベル姫からは親善大使、に似た大層なお役目をもらって。
グレイはそうやって僕が度々外出し、仕事をするのを、快く歓迎してくれた。
本来アルファは、自分のオメガを外に出したがらないと聞いたけれど、グレイは束縛はせずに自由にやらせてくれる。ヤキモチは妬いているみたいだけどね。その分は、夜にしっかり話し合えばいいもの。
チートな物語の主人公じゃなくったって、あとは幸せが続くことを、僕は知っている。
番外編・終
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