僕は人畜無害の男爵子息なので、放っておいてもらっていいですか

カシナシ

文字の大きさ
上 下
76 / 76
番外編(と言いつつ番号順)

75 新婚(3)※

しおりを挟む


「俺の大事な君の前で、君を不快にさせ、大事な式の思い出に一点のみを落としたんだ。許せない。そんなものは、友人でもなんでもない。これまで友人だと思っていたのは、俺だけだったようだしな」

「グレイ……」

「申し訳なかった。君を傷つけるもの全てから守ると約束したのに……」

「ううんっ!違う!今、傷付いているのはグレイでしょう!?ごめんね、僕、気付かなくて……っ、自分、ばっかりで……っ!」


 ぐずぐずと涙が出てきてしまう。僕の涙腺は一体どうなっているんだ。塞いでしまいたいけれど、今、僕の両手はグレイを抱きしめるためにあった。

 座っていたグレイの頭をぎゅっと、僕の胸へと押し当てた。今は薄い生地の婚礼衣装を着ているので、心臓の音で安心してくれることだろう。


「グレイ、僕たちは夫婦なんだから、僕を守るばっかりじゃなくて、僕にも守らせてよ。物理的には無理かもしれなくても、心なら寄り添えるから」

「ロローツィア……」

「おともだちがいなくなって、辛かったね」

「……裏切られたような気持ちには、なった。だが、惜しくはない。君がいる」


 周りからヒューヒューと野次が飛んでくる。新婚だもの、いちゃついてなにが悪いのさ。とばかりに開き直って、抱きしめ続けた。





 よくよく聞き出せば、グレイはユーリスさんを擁護したのではなかった。あくまでも過去のユーリスさんは、あの時絡んできたようなお人では無く、さっぱりとした気の良い人だったらしい。

 グレイの結婚によって、今まで我慢して来たのが崩壊したのだとか。それを聞いた恩師さまから、後日謝罪されたみたい。

 仲直りをした僕たちは、もう手を離すことも出来なかった。どんちゃん騒ぎの中、静かに指を繋いで、待っている。

 今夜ようやく、二人きりになるのを。






 王城に引けを取らない領城の奥。厳重に警備された主寝室に、僕とグレイは雪崩れ込む。

 もう一秒だって待てなかった。寝台に辿り着く前に、衣を解かれてバサバサと落とし、僕もグレイの正装を脱がしにかかる。けれどボタンがとってもたくさん付いていて大変!

 僕の衣装はゆるゆるのふわふわだから、もう全面的に引っかかっているだけ。一体これは、どこがどうなっているの……!?


「もう、なにこれ、難しすぎるよ……っ」

「仕方ない、諦める」

「へっ?」


 グレイは軍服を着たまま僕へ口付けをし、柔らかい寝台に押し付けた。ゴツゴツとした印章が肌に当たるけど、それすらドキドキする。蕾はもううるうるととろけていて、こう言う時ばかりはオメガで良かったって思う。


「ロローツィア……やっと、夫婦になれたな」

「うん……っ!大好き、グレイ」

「ああ……愛している」


 ぐぐぐ、とグレイのものが入ってくる。正装をしているものだから、ああ、仕事中に犯されているみたいな背徳感だ。

 隘路を押し入ってくるグレイの肉棒はとても熱くて、かたくて、……こんなに、大きかったかな。


「あああ……っ、は、ぁぁ……、あ、あン、」

「痛いか?すまない……我慢してくれ」

「らい、じょぶっ……!」


 気は遣ってくれているのに強引なグレイが、好き。僕へすっぽりと覆い被さり、抱き固め、絶え間なく肌を撫で、口付け、愛撫してくれる。
 内側へ入っていくにつれて、快感に酔っ払ってしまう。幸せで気持ち良くて目が回る。切望していた圧迫感に、いとも簡単に絶頂していた。


「はぁ…………ッ、」


 ぴゅ、びゅっ、と僕のペニスは吐き出して、脚はぐんにゃりと大きく広がった。あまりに我慢してきたからか、きっと脳がバグっている。こんなに早く、長く、達してしまうなんて。


「ァ…………っ、う……ッ」

「可愛い、ロローツィア。入れただけで……」


 だ、だって!気持ち良すぎるんだもの!

 待ち望んでいたグレイの陰茎に、僕の内部は歓喜に沸いていた。














***










「はぁ、はぁ……グレイ……もうだめ……」


 ぱったりと倒れ込んだ。身体中グレイの痕だらけで、お腹がたぽたぽになるくらい出されて、満身創痍。本当に、僕が男で聖者で体力のある方で良かった。

 体を隠さないとまた襲われてしまう。僕は最後の力を振り絞って、シーツにくるまった。ここにロローツィアはいません。


「一回休憩を挟もうか。トマム」

「へい」

「そのくだり、もう何回やったの……トマムさん、助けて」

「あっしは無力なもんで。すんません」


 あっさり裏切られているけど、想定内だ。

 実はまだ初夜が続いているんだ。もう一週間は篭っていると思う。再現なく求められるのは嬉しくもあるけれど、やはり体力を使う。18歳になったグレイは、ますます体力が増えてアルファらしい屈強な体つきになったし、僕は小さいままだし……理不尽だ!


「ロローツィア、不満か?俺のせいだな……君を良くしてあげたいのに……」

「十分だからねっ!?すごく気持ち良くって満足だからね!?ただ、とっても疲れちゃうだけ!」

「また君は、煽るようなことを」

「ひぃ」

「そういえば坊ちゃん。奥様が呼んでおられましたよ」

「……今、か?」

「はい、今」


 とても嫌そうに顔を顰めたグレイだったが、渋々サンドイッチを掴むと『行ってくる』と部屋を後にした。ふぅぅぅう、助かった。


「いたたた……」

「お疲れ様でござい。こちら、気休めですが安眠のサシェを……」

「!ありがとう!グレイの枕の下に入れちゃおう」


 もう、内側の筋肉が疲労でピクピクしている。この筋肉痛は【治癒】でも治らない。しんどい。腰も打ち付けられ続けて痛いし、喉もカスッカス。

 トマムさんには同情されつつ、寝台はまた綺麗になり、僕もまた綺麗にしてくれた。脱ぎ着しやすい着流しを身につけて、今度こそ横になる。眠たい。眠らせてぇ……。











 随分ぐっすりと眠れたなぁ、と思いながら起きると、なぜかお義母さまがいらした。びっくりして飛び起きようとすると、『いいから寝てて!』と制される。


「グレイリヒトは叱っておいたわね。全く、すっかり野蛮な子になっちゃって。今頃パパに絞られていると思うわ。さぁ、ロロちゃんに特製スープ持ってきたから、おなかに入れて、また休んでちょうだいね」

「ありがとうございます……お義母さま」

「ふふふ……わたしにも身に覚えがあるからね……ほら、これならすうっと食べられるでしょう?」


 華奢なお義母さまの手で、スープをお口に入れてくれる。身に覚え、あるんだ……とドキドキしちゃうけど。

 “特製”と言うだけあって、甘いカボチャやじゃがいもの、香りの良いスープだ。熱すぎずぬるくもないちょうど良い温度で、喉をするりと通って消えていく。


「ごめんなさいね。あの子の肩を持つわけじゃないけれど、ようやく結婚出来て嬉しくてたまらないんだと思うの。ほら、婚約期間が長かったし、我慢していた何かが爆発してしまったのよ。きっと。愛されるのも大変ねぇ……」

「あ……でもそれは、僕も一緒です。夫婦になれて、とっても嬉しいです。そう聞いてしまうと、もっと受け止めてあげなくちゃいけませんね……」

「それはそれ!体格の違いを考えてれってことよ。あらやだ、ふふふ。仲睦まじいのはいいことよね。多分、しばらくしたらまた戻ってくるけれど、多少は手加減をしてくれるはずよ。そうでなかったらまた叱ってあげる」

「は、はい……、ありがとう、ございます」


 お義母さまの予想通り、グレイはまた戻ってきて初夜の続きをした。お灸を据えられたのがこたえたのか、スローペースに落としてくれて、しんどさは軽減したけれど……。


「ありがとう、ロローツィア……、明日からは、さすがに執務を始めなければならなくなった」

「そ、そうなん、だ……あ、んんっ、ぅ……」

「君には、防御魔術やオアシスなど、俺から逃げられるすべはいくらでもあるのに。ありがとう、こんな俺を、受け入れてくれて」

「あっ、あっ、ああぁぁぁ~ッ!」


 もうグレイはほとんど動いていない。中に沈められて、時折とん、とん、と押し込まれているだけなのに、僕が勝手に達しているんだ。なんて省エネなんだ、僕。

 絶頂する僕の耳に、ちゃんと言葉は届いていても、あんまり理解出来ていない。


って、しゅき、から……っ、はぁ、ここに、いりゅの」

「本当に、君は……」


 感動したらしいグレイに最終日まで抱かれ続け、合計すると約二週間弱の初夜ーーーーもはやブートキャンプであるーーーーを明けた、朝。






 次期辺境伯としてスーツを着こなすグレイ。前髪を上げたグレイはぐっと大人っぽくて、僕の中のグレイ姿コレクションがまた増える。はぁ、好き。いつか全部のグレイを、絵師に描いてもらいたいと企んでいる。


「行ってらっしゃい。がんばってね」

「ありがとう。ロローツィアは、十分に休んでくれ。……また、夜に」


 一方僕は、とりあえずのガウンで体を隠した怠惰な姿だ。お部屋で行ってらっしゃいのキスを交わして送り出すと、重たい体をずりずりと引き摺って窓辺に寄る。

 馬車に乗り込む前に、僕に気付いて手を振ってくれる夫に手を振り返して、はぁ、と窓枠にもたれた。あ~、僕の夫が格好良すぎて辛い。


「ようやく行かれましたねぇ……ロローツィア様、どうぞおやすみください」

「ふぁ……そうする、ね。ありがとう」


 しばらく休んでから、ようやく使用人さんたちの顔を見られた。次期辺境伯夫人(男)として頑張らなくちゃ、と気合を入れて顔合わせを終えると、なぜか皆にキラキラした目で見られていた。なんだろう……?


 僕の専属従者となってくれた、ジェイスさんが教えてくれる。


「坊ちゃんの無愛想さが別人のようにお変わりになられて、使用人一同驚いていたところに、熱く甘く激しい初夜が二週間!あの体格差で!坊ちゃんの多大で過剰な愛を一身に受け止めたロローツィア様に、皆いたわりと尊敬の念を抱いております」

「そ、そんな……」

「すべてはロローツィア様のおかげです。坊ちゃんはさぞ幸せなことでしょう。このように慈愛に溢れた方を伴侶とされて」

「えへへ……そうかな……」


 そうも褒められると照れるや。僕だって幸せだよ。素敵な旦那様と結婚できて。わぁ、旦那様だって!うう、なんていい響きなんだろ。

 





 気を取り直して、僕は辺境の地を見て回った。領地には、結晶化したサクラルビーの小枝を多めに配置して、随所にワープ出来るようにする。便利でしょ?

 それから、入院患者を診て治癒をして、病床を空けるようにしたり。治癒代は領民割引が効くよ!

 王都へも度々ワープをして、アレキウス様やマリーベル姫のお手伝いをする。スザク王国にもワープ出来るようにしたら、いつの間にか日本の食べ物を宣伝する人みたいになっちゃったの。大事に食べてるだけなのにね?マリーベル姫からは親善大使、に似た大層なお役目をもらって。


 グレイはそうやって僕が度々外出し、仕事をするのを、快く歓迎してくれた。


 本来アルファは、自分のオメガを外に出したがらないと聞いたけれど、グレイは束縛はせずに自由にやらせてくれる。ヤキモチは妬いているみたいだけどね。その分は、夜にしっかりいいもの。


 チートな物語の主人公じゃなくったって、あとは幸せが続くことを、僕は知っている。







 番外編・終
しおりを挟む
感想 143

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(143件)

るりまま
2025.01.24 るりまま
ネタバレ含む
2025.01.24 カシナシ

るりまま様、感想ありがとうございます!
嬉しいお言葉をいただけて光栄です……!作者も寂しい!。゚(゚´Д`゚)゚。ロロロス……

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました(●′ω`人′ω`●)

解除
四葩(よひら)
ネタバレ含む
2025.01.24 カシナシ

四葩様、感想ありがとうございます!
可愛い嫁が来たので、お義母様も喜んで世話をしております´∀`*)b
経験者は語る、ですね((((;´・ω・`)))笑

こちらこそ、最後までお付き合いいただきありがとうございました!(●′ω`人′ω`●)

解除
Madame gray-01
2025.01.24 Madame gray-01
ネタバレ含む
2025.01.24 カシナシ

Madame gray-01様、感想ありがとうございます!
作者も寂しいです〜!そう言って頂けると浮かばれます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


ロローツィアはこれからも体力を保持し続けないといけませんね!´∀`*)b

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました(●′ω`人′ω`●)

解除

あなたにおすすめの小説

僕はただの平民なのに、やたら敵視されています

カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。 平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。 真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?

MEIKO
BL
【完結】そのうち番外編更新予定。伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷うだけだ┉。僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げた。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなの何で!? ※R対象話には『*』マーク付けますが、後半付近まで出て来ない予定です。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

お飾り王婿ライフを満喫しようとしたら、溺愛ルートに入りました?

深凪雪花
BL
 前世の記憶を取り戻した侯爵令息エディ・テルフォードは、それをきっかけにベータからオメガに変異してしまう。  そしてデヴォニア国王アーノルドの正婿として後宮入りするが、お飾り王婿でいればそれでいいと言われる。  というわけで、お飾り王婿ライフを満喫していたら……あれ? なんか溺愛ルートに入ってしまいました? ※★は性描写ありです ※2023.08.17.加筆修正しました

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。