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23 秘密の契約③
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「先に言っておくが、他意はないから」
言うが早いか、両脇に手を入れられる。
ソファの上で膝立ちするように持ち上げられたかと思うと、引き寄せられ、気づいたときには大神の腰をまたぐような形で座らされていた。
「少しだけこのままでいてくれ。他には何もしないと約束する」
恋人同士でしかしないような対面座位に、羊子は首まで熱くなった。
何もしないと言いながら、この態勢は明らかにおかしい。
「私の常識では、これはナシなんですがー」
「わかってる。少しだけでいいんだ」
「……いつまでですか?」
大神は何も言ってくれない。
自分勝手が過ぎる。
しびれを切らして、腰を浮かせようとした。
しかし、大神によって、すぐに座り直させられてしまう。
「もう! 何がしたいんですか? エッチですか? それならお断りします」
面倒になって叫ぶ。
大神は観念したように、息を吐いた。
「君は気づかないか?」
謎かけのような言葉。
この態勢を続けるために煙に巻かれているのだろうか。
「何にですかー?」
「男女がこんな態勢になったら、必ずあるべきものを感じなくないか?」
あるべきものとは?
よくわからず、回りくどい言い方をする大神がひたすらに面倒くさい。
男ならはっきり言えと思うものの、ひとまずは大神の意図を考えてみる。
「うーん。この態勢って恋人っぽい気がするんですけど、ラブラブしてるとこって意味ですよね。そんなときにあるべきもの? 感じない? よくわからないですねー」
匙を投げる。ぶん投げる。
(言いたいことがあるなら、言えばいいし、言わないつもりなら、もういいや。わけわからんし)
それに眠い。
お酒なんて飲んだから、まぶたが重力に負けそうだった。
考えるのをやめて、ぼうっとすることにした。
少しまぶたも閉じていると、うつらうつらとしてしまう。
「おい、寝るんじゃない。話は終わってないぞ」
「でもー、話が進まないんでー、遅いですしー、寝てもいいですよねー」
「ダメに決まっているだろう。わかった、話す。ちゃんと話すよ」
どうせ真っ暗なので、まぶたは閉じたまま、大神の話を聞く。
大神は、とても小さい声で何事かをつぶやいた。
なんて言ったのかわからず、聞き返すと、もう一度繰り返される。
「……機能しないんだ」
言った後、「クソっ」と毒づく。
悪態までしっかり聞こえたが、意味するところはわからなかった。
仕方なく、もう一度聞き返す。
「何が機能しないんです?」
「思ったより鈍いな、君は。いや、酔って、思考力が落ちてるのか?」
「社長の説明が圧倒的に足りなすぎるんですよ。ひとのせいにしないでくださいー」
確かに酔ってはいるが、頭が悪いみたいに言われるのは心外だ。
ちゃんと説明しろとせっつくと、大神が意を決したように口を開く。
「実は、君は俺の好みの真ん中なんだ」
「はあ、そうですかー」
急に口説いてくるつもりかと警戒する。
でも、大神は羊子の反応を気にする素振りもなく、話し続けた。
「でも、君を見ても、触っても、何も感じないんだ」
「……急に振られてません? わたし」
「そう言うことじゃない。感じないと言うのは、男としての機能が役に立たないってことなんだ。こんな態勢でも、俺のはピクリともしてないの、わかるよな?」
「ああ、言われてみれば、確かにそうですねー。ということは?」
「たたないんだ、誰にも」
思ったより深刻な話だった。
そんな個人情報を知ってしまって、大丈夫だろうか。
身バレしたら、絶対、権力でクビにされる未来しか想像できないのだけれど。
「私にそんなことを打ち明けられても困るんですがー」
医者に行けばいいと思う。
そして、キレイな女医にでも解決してもらえばいい。
少なくとも、羊子には関係ない話だった。
だから、もう解放してもらおうと、腰に置かれた手をやんわり外そうとする。
「話も済んだようなので、そろそろお暇したいんですがー」
「君はいつもせっかちだな。まだ話は終わってないから、ダメだ」
キッパリ言いながら、羊子を決して離そうとしない。
「秘密を知ってもらった上で、君にはお願いがあるんだ」
聞きたくないなぁ、とぼんやり思った。
しかし、逃げられないのだから、聞くしかなかった。
言うが早いか、両脇に手を入れられる。
ソファの上で膝立ちするように持ち上げられたかと思うと、引き寄せられ、気づいたときには大神の腰をまたぐような形で座らされていた。
「少しだけこのままでいてくれ。他には何もしないと約束する」
恋人同士でしかしないような対面座位に、羊子は首まで熱くなった。
何もしないと言いながら、この態勢は明らかにおかしい。
「私の常識では、これはナシなんですがー」
「わかってる。少しだけでいいんだ」
「……いつまでですか?」
大神は何も言ってくれない。
自分勝手が過ぎる。
しびれを切らして、腰を浮かせようとした。
しかし、大神によって、すぐに座り直させられてしまう。
「もう! 何がしたいんですか? エッチですか? それならお断りします」
面倒になって叫ぶ。
大神は観念したように、息を吐いた。
「君は気づかないか?」
謎かけのような言葉。
この態勢を続けるために煙に巻かれているのだろうか。
「何にですかー?」
「男女がこんな態勢になったら、必ずあるべきものを感じなくないか?」
あるべきものとは?
よくわからず、回りくどい言い方をする大神がひたすらに面倒くさい。
男ならはっきり言えと思うものの、ひとまずは大神の意図を考えてみる。
「うーん。この態勢って恋人っぽい気がするんですけど、ラブラブしてるとこって意味ですよね。そんなときにあるべきもの? 感じない? よくわからないですねー」
匙を投げる。ぶん投げる。
(言いたいことがあるなら、言えばいいし、言わないつもりなら、もういいや。わけわからんし)
それに眠い。
お酒なんて飲んだから、まぶたが重力に負けそうだった。
考えるのをやめて、ぼうっとすることにした。
少しまぶたも閉じていると、うつらうつらとしてしまう。
「おい、寝るんじゃない。話は終わってないぞ」
「でもー、話が進まないんでー、遅いですしー、寝てもいいですよねー」
「ダメに決まっているだろう。わかった、話す。ちゃんと話すよ」
どうせ真っ暗なので、まぶたは閉じたまま、大神の話を聞く。
大神は、とても小さい声で何事かをつぶやいた。
なんて言ったのかわからず、聞き返すと、もう一度繰り返される。
「……機能しないんだ」
言った後、「クソっ」と毒づく。
悪態までしっかり聞こえたが、意味するところはわからなかった。
仕方なく、もう一度聞き返す。
「何が機能しないんです?」
「思ったより鈍いな、君は。いや、酔って、思考力が落ちてるのか?」
「社長の説明が圧倒的に足りなすぎるんですよ。ひとのせいにしないでくださいー」
確かに酔ってはいるが、頭が悪いみたいに言われるのは心外だ。
ちゃんと説明しろとせっつくと、大神が意を決したように口を開く。
「実は、君は俺の好みの真ん中なんだ」
「はあ、そうですかー」
急に口説いてくるつもりかと警戒する。
でも、大神は羊子の反応を気にする素振りもなく、話し続けた。
「でも、君を見ても、触っても、何も感じないんだ」
「……急に振られてません? わたし」
「そう言うことじゃない。感じないと言うのは、男としての機能が役に立たないってことなんだ。こんな態勢でも、俺のはピクリともしてないの、わかるよな?」
「ああ、言われてみれば、確かにそうですねー。ということは?」
「たたないんだ、誰にも」
思ったより深刻な話だった。
そんな個人情報を知ってしまって、大丈夫だろうか。
身バレしたら、絶対、権力でクビにされる未来しか想像できないのだけれど。
「私にそんなことを打ち明けられても困るんですがー」
医者に行けばいいと思う。
そして、キレイな女医にでも解決してもらえばいい。
少なくとも、羊子には関係ない話だった。
だから、もう解放してもらおうと、腰に置かれた手をやんわり外そうとする。
「話も済んだようなので、そろそろお暇したいんですがー」
「君はいつもせっかちだな。まだ話は終わってないから、ダメだ」
キッパリ言いながら、羊子を決して離そうとしない。
「秘密を知ってもらった上で、君にはお願いがあるんだ」
聞きたくないなぁ、とぼんやり思った。
しかし、逃げられないのだから、聞くしかなかった。
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